2018年2月28日

第61回 海外編第8章 Tourist Trophy Race

第61回 海外編第8章 Tourist Trophy Race

第61回 海外編第8章 Tourist Trophy Race

 
いよいよレースがスタートする。マン島TTでは一斉にスタートしたりはしない。
そもそも、70台近い出走台数に対して一斉にスタートできるような道の広さではない。
マーシャルが一台ずつ時間をずらしてライダーをコースに送り出す。
そしてタイムトライアル形式で勝者が決まる。スタートする順番は予選で速かった者からだ。これらはこの狭いコースでライダー同士がバッティングしないようにとの配慮である。
まぁ気休めにすぎないのだろうが。

オレの観戦場所からではスタートの様子はまったく見えない。だが・・・スタート目前のライダーがプリッピングさせるエキゾーストが緊迫した空気をそのまま伝えてくれる。それは対峙した獣同士が今まさに襲いかかろうとしているかのような咆哮にも似ている。そしてひときわ甲高いエキゾーストが響き渡り、遠ざかっていった。
一台目がスタートした。そこから10秒間隔で次々にマシンがコースに躍り出る。グランドスタンドで歓声が沸き上がる。10数分という時間をかけて全車両がスタートをきった。

レースは4周。距離にして240キロ。レース終了まで時間にして80分弱。数字だけ見る分には新幹線で岡山から京都に行くくらいの感じだ。しかし道は、200以上のコーナーが存在して段差だらけの路地裏のような道。そんな道で240キロもの距離を彼らは新幹線と同じペースで走るのだ。タイヤが二つのバイクで。やっぱ、だいぶイカレてますな。

とりあえずスタートしたライダーが再びここへ戻ってくるのは約20分後。つまりその時、初めてオレは走る彼らの姿を見る事になる。
まわりの観客たちが持っているラジオからレースの様子が聞こえてくる。
ヘリが先頭集団を中心に追いかけながら実況しているのだ。選手の名前は聞き取れるのだがあとはさっぱりわからない。最終コーナーの出口を見ながら待つ事、10数分。
ヘリの爆音に交じってマシンのエキゾーストが聞こえてきた。その数秒後、先頭のマシンが見えた。かなり短い間隔で3台。その先頭集団がオレの目の前を物凄い勢いで通り過ぎる。
カメラのシャッターが追い付かない。

レース

 
観客席で見るサーキットのレースと違ってとにかく近い。その臨場感は半端なものではない。これは観戦場所によっては見る方もある意味、命懸けと言えるかもしれない。
次から次へと目の前をマシンが走り過ぎていく。
ホームストレートを全開で駆け抜けるのは別にマン島TTに限った話ではない。
モトGPなどのサーキットレースでも当たり前の光景である。だがこれほど幅の狭いコースで走るマシンをこの距離感で見るのはまさに圧巻。なのにこれがなかなかに伝えづらい。
なんとか捉えた画像など確認してみると普通に民家などが背景にあるため街中を暴走車両が走っているようにしか見えない。
それにしても彼らは本当にこのコースをまわって戻ってきているのか。そしてこの先、あと3周も走るのか。余りにも現実離れした目の前の状況にオレは圧倒されていた。観客の熱狂ぶりも凄まじい。
目の前を通り過ぎるマシンのどれがどの選手なのか、どれが先頭で最後尾はどのマシンなのかまったくわからない。いや、今となってはどうでもいい。

映画で見たガイ・マーチンは凄まじく面白いやつだった。
だが彼だけではない。ここで走っている奴らは皆、同じだ。人として何かがぶっ壊れていて、そして何かが飛び抜けている。無邪気さと危うさが混同する彼らの姿は恐ろしいほどに魅力的だ。見ていてゾクゾクする。そんな奴らが走る様を時折、カメラのシャッターを切りながら目で追いかける。気が付けばレースは終了していた。
スーパースポーツクラスは本命であるマイケル・ダンロップの優勝で幕を閉じた。
ガイ・マーチンはどうやらこのクラスにエントリーしていなかったようだ。

この後、引き続きサイドカーレースの予選が始まる。さてどうするか。やはりできれば違う場所で見てみたい。それほど迷っている時間はない。オレは最終コーナーへ行くことにした。
最終コーナーへは坂になっている海側の道を下ってまた上って行くようになる。
この坂の勾配が結構キツイ。かなり大回りするため距離も1キロ以上ある。だが問題ない。
体力には定評のあるオレである。いかに勾配がキツくとも1キロ程度のウォークで息を切らせたりはしない。

最終コーナーに着いてみると意外なほど人の数は少なかった。丁度、コースを確認するマーシャルのマシンが目の前を通りすぎた。あのマシンがゴール地点に着きOKのサインを出したら即出走だ。それでもここにマシンが姿を現すのはもう少し後になる。
最終コーナーといってもゴール地点からはかなり離れている。なんせ一周60キロのコースですから。そのためここではスタートしたかどうかはまったくわからない。

実はオレはサイドカーのレースを生で観るのは初めてである。600ccの4気筒でスーパースポーツクラスのマシンとエンジンスペックは同じ。しかし二人乗車の上に車体が重いのでトップスピートは劣る。そのかわりコーナリングスピードが速いのでラップタイムは思っているほどは変わらないと聞く。果たして面白いのか。30分ほど待っただろうか。
マシンのエキゾーストが聞こえてきた。軽く登り勾配のあるコーナーをまず一台がとんでもない速さで曲がっていく。矢継ぎ早に2台目、3台目と。これは・・・結構、面白い。
確かにあのコーナリングスピードはバイクでは在り得ない。しかもパッセンジャーの動きが同じコーナーでありながらマシンごとに違っていたりもする。軽くドリフトみたいにもなってるし。

ニーラー

ニーラー

ニーラー

 
観戦場所を移動したのは正解だったようだ。サイドカーの予選は2ラップで一時間足らずで終了した。さて残るはライトウェイト(600cc2気筒)とTTゼロの予選なのだが・・・
ここへきて空模様が急激に怪しくなってきていた。


HERO‘S 大神 龍
年齢不詳・職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ750?。


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