2017年5月5日

BMW C EVOLUTION

電動うんぬんを語る前に、 オートバイとして基本的なものが良く出来ている

■試乗&文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗
■協力:BMWジャパン 
    JAIA 日本自動車輸入組合 

 
電動うんぬんを語る前に、
オートバイとして基本的なものが良く出来ている
ガソリン車から乗り換えても
チグハグに思わないフィーリング、快適性、スタビリティ。
 

『未来のアーバンモビリティを、今すぐ体験できるのがBMW C evolutionです。もちろん一切の妥協がないばかりか、この電動マキシスクーターは人々の視線を惹きつけるデザインの中に、将来への持続性をはじめ、ダイナミックさや俊敏性を備えています。静かで排気ガスを出さないだけでなく、都市の往来の中で他の車両を置き去りにしてしまいます。パワフルな高性能モーターによる走りが、目的地への迅速な到着はもちろん、真のライディングプレジャーも実現するのです。そして航続距離は、一日を愉しむのに十分な距離である160 kmを確保。さらに4種類の走行モードを備え、ブレーキング時および加速時には、きわめてインテリジェントなエネルギー回生が行われます。厳しい要求に応える走行性能、環境への配慮と適合性、そして革新的な技術。C evolutionはまったく妥協なく、素晴らしいライディングプレジャーをもたらしてくれます。』(BMWジャパンのWEBサイトより)
 
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 BMWの電動スクーター、C Evolutionは、見た感じ同社が発売するビッグスクーターのC650シリーズと大きさ的には変わらない。国産を代表するモデルではヤマハTMAX530と同じくらい。車体の後ろについたナンバープレートは軽二輪登録。排気量なんてないので、出力によって区分されている。定格出力0.6kWまでを原付一種。0.6kWを超えて1kWまでを小型自動二輪、いわゆる原付二種クラス。1kWを超えると全部、普通自動二輪の125cc超え250cc以下の軽二輪。だから定格出力19kW(約26PS)のC Evolutionは軽二輪になるわけだ。なんともざっくりした区分で、今のところどんなに出力を上げても軽二輪登録で車検がないことになる。これまで電動二輪車といっても、日本での基本は原付サイズの小さいものが主流だったし、本格的な販売とは呼べないものだったのが理由だろうか。このBMW C Evolution以降に電動二輪市場が活発化すれば、そのざっくり区分も変わっていくかもしれない。

 シートに腰をおろしてハンドルバーを掴んでみると、いわゆる普通の大型スクーターのそれである。電動だから特別というのはない。電動の乗り物でいちばん大きなスペースを使う重いバッテリーがお尻の下から足元まであるので、センタートンネル部分が高めだけれど、ガソリンエンジンビッグスクーターもここは高いものが多い。見えないけれどこの中に詰まっているのは燃料タンクなどではないというのが不思議に思えるくらい。ストリップの写真を見たら、バッテリーが詰まった大きな箱がど?んと中央にあって、スチールパイプのフロント操舵セクションのフレーム、シート下トランクがあるリアシートフレーム、そしてアルミフレームを使った電気モーターと駆動とサスペンションを担当するスイングユニットが取り付けてある。

 ブレーキを握って右親指でセルスタートスイッチと同じ場所にある赤いスイッチを押せば、音もせずもう走れるスタンバイ状態。ガソリン車と同じスロットルを開けていくと、シュイーンという音でスルスルっと前に進んだ。その時の音は、当たり前かもしれないがプリウスがモーターだけで走っている時とそっくり。聞こえてくるのはインバーターの音、モーターの音、駆動の機械的な音、タイヤが路面を蹴る音くらいか、単純にものすごい静か。電気モーターだから、出だしから最大トルクでドカンと加速することが出来るけれど、いきなりスロットルを大きく開けてものけぞるようには出ていかない。静かなだけで動きは普通のスクーターとあまり変わらない。ホイールインモーターではなく、一般的なスクーターだとスイングアームピボット部分になる場所に水冷式電気モーターを装着し、そこからベルトでリアホイールを駆動する仕組みを選んだことで、モーターの制御だけでなく、減速比があり、ベルトが少なからずたわむバンドフィール、駆動がかかるとサスペンションも動く。これでダイレクトすぎないオートバイらしい、スクーターらしい走りにしていのだろう。古くから二輪車に乗っているライダーだが、右手の動きから前に進み出すまでの動作にまったく違和感はなかった。

 走るモードは「ロード」「エコプロ」「ダイナミック」「セイル」の4種類。これは出力だけでなく、回生充電の時の効率も変わってくる。
減速などでスロットルをオフした時を利用して発電する回生充電は、バッテリーの持ちを伸ばすためにある機能で、効率を高めるほどエンジンブレーキのような減速Gがかかる。たぶん一番使われるだろう平常運転モードの「ロード」にして街に出た。CVTよりさらにシームレスなフィーリングで、スルスルっと速度が伸びていく。加速は日常で使う分にはまったく不足はなく、わざと坂道で止まって発進をしてもトルクが足りないと思うことがない。スロットルをオフにすると回生によるブレーキがかかるが、「ロード」では最大の半分くらいの効きなので、体が前に出るようなことはなく、一概には言えないけれど、感覚的には4ストローク単気筒の小排気量ロードスポーツモデルで3速から2速に落とした時のエンジンブレーキ同じくらいか。ビッグスクーターのスロットルオフ時よりは若干強め。 
 

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 片側1車線のやや混雑した一般道を走ってみたが、戸惑うようなこともない。クルマの流れに追従でき、スロットルを大きく開けたら簡単に加速して流れをリードできた。「エコプロ」だと出力が半分近くになって、回生は最大効率でブレーキは強め。加速は穏やかでやや物足りないけれど、普通に町中を走る分には不満はない。ただスロットルを閉じるとなかなか強く減速がかかる。この感覚はガソリンエンジン車にはないもの。それでもエンジンブレーキとは違い、強くてもいきなりガツンとくるものではない。その名の通りバッテリーの持ちを伸ばすモード。メーター右下に%で表示されている、充電状態と、走行可能距離が短くなったらこの省エネモードを選ぶ。

 ちなみに乗り出した時は100%に近い充電で、与えられた試乗時間45分の多くを「ロード」モードで走って、右下に表示されている航続距離は100kmくらいからスタートし、降車する時は90kmくらいになっていた。もちろんモードによって、走る環境によってこれは変わってくるので、実際に走行した距離と、走行可能距離の減り方はイコールではなかった。「セイル」モードでは回生のブレーキがかからない。回生がゼロになっているのかどうかは知らないけれど、メーターの回生を表している左側バーグラフが踊らない(右側に登るバーグラフが出力)。スロットルオフで速度変化がないので、高速道路の巡航をスムーズに快適にやりたいならこのモードだろう。

 市販されている電動カーとして有名なテスラの製品は、同クラスのガソリンエンジン車より2割ほど重い。これは重いバッテリーを多く積まなければならないためである。このBMW C Evolutionも同じくバッテリーがスペースの多くを陣取っているので決して軽くはない。カタログでは走行可能状態で275kg。重さだけでなく、モーターの抵抗もあるので、押すとなかなか重く感じた。ところが、走り出すとこれがまったく気にならなくなる。とにかく、足廻りのしっかり感、サスペンションの動きが素晴らしくて、速度が上がって大きくなる運動エネルギーをブレーキが素早く小さくしてくれた。試乗していた道には、舗装の表面がはげて凸凹が続く区間があったが、速度を落とさずここを通り抜けても大きなショックは伝わってこず、すーっと何事もなかったように通過したのに感心した。

 電動うんぬんを語る前に、オートバイとして基本的なものが良く出来ているのである。これには、「さすがBMW」と唸った。オートバイという乗り物を知り尽くしているメーカーが作ったというのが重要なポイントだ。これは最大出力35kW(約48ps)が出せるモード、「ダイナミック」して試乗会場になった大磯ロングビーチの大きな駐車場に設けられた簡易クローズドコースを攻め込んで走って強く思った。静かだからフルブレーキではパッドがディスクを挟み込む音がはっきり聞こえてくる。そこからリーンさせて旋回に移るまでの動きはスムーズで、乱れること無く、リーンアングルもかなり深いので走りはスポーティー。立ち上がりでスロトルを開けていった時の、リアの踏ん張り、スタビリティが良くて、コーナーリングするのが純粋に楽しい。回生によるブレーキは強めに効くけれど、逆にそれを減速の助けに利用すればちょうどいい。驚いたのは20km/hから100km/hくらいまでの加速がハンパないことだ。面白いように速度の数字が増えていく。スクーターどころか、ちょっとしたロードスポーツモデルも置いていかれるスピードの伸び。快楽的という表現をしたくなるほど速い。最高速はそれほど伸びないけれど、「この加速は軽二輪クラスじゃないだろ」とニヤけながら突っ込みたくなるほど。

 ライダーがガソリンエンジン車から乗り換えてもチグハグに思わないフィーリング、快適性、スタビリティ、サスペンションの動き。これはオートバイメーカーでないと、ここまで完成した走りには出来ないだろう。まだ、どうしても航続距離に不満が残るけれど、コミューターとすれば充分すぎると判断できる人も多かろう。その他はまったく負けていないどころか魅力的ですらある。これを日本市場で発売するBMWに大きな拍手を贈りたい気持ちと共に、日本人として日本メーカーから最初に出てこなかったことに悔しさを感じた。先をこされてしまった。この先、電気モーターがオートバイの主流になるとしたらどう思うか? と質問されたなら、「それは大いに楽しみだね、早く乗ってみたい」と答える。このBMW C Evolutionを体験したから。
 
(試乗・文:濱矢文夫)
 

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●C EVOLUTION
■エンジン:液冷オルタネーター搭載ドライブトレインスイングアーム、永久磁石式同期電動機、内部ローター、最大出力:35kW(48ps)/4,650rpm、定格出力:19kW(26PS)、最大トルク:72Nm、電力回生方式:自動電力回生(下り坂走行時およびブレーキング時)、バッテリー:空冷リチウムイオン高電圧バッテリー、バッテリー電圧:133V(公称電圧)、充電能力:3Kwブースターファン付一体型チャージャー、充電時間220V/12A(標準):約4時間30分(100%)、約3時間50分(80%)、駆動方式:歯付ベルトおよびリングギアによるリアアクスル動力伝達ドライブトレインスイングアーム、フレーム:アルミダイキャスト耐荷重バッテリーケース付ハイブリッドシャーシ、チューブラースチールステアリングヘッドキャリアおよびリアフレームをボルトオン、フロントサスペンション:倒立式テレスコピックフォーク(40 mm径)、リアサスペンション:ダイレクトリンクスプリングストラット付シングルスイングアーム、7段階スプリングプリロード調整付、サスペンションストローク、フロント/リア:120mm/115mm、軸距(空車時):1,610mm、タイヤ、フロント:120/70R15、リア:160/60R15、ブレーキ、フロント:ダブルディスク、径270mm、2ピストンフローティングキャリパー、リア:シングルディスク、径270mm、2ピストンフローティングキャリパー、ABS。全長2,190mm×全幅(ミラーを除く)947mm×全高(ミラーを除く)1,255mm。シート高、空車時:765mm(コンフォートシート:785mm)、空車重量(走行可能状態、燃料満タン時):275kg
■メーカー希望小売価格(消費税8%) 1,487,500円


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