2019年4月17日

いつかはこんな時代が来る……、その「いつか」が、思ったより早すぎる! ~もう走った! Honda CRエレクトリックPROTO~

そんな時代がきっと来る。それが、この10年、20年言われ続けてきた、
クルマやバイクの電動化への動きだ。
バイクの世界もコミューターは電動バイクが実用化した、
と言ってもいいけれど次は……え? モトクロッサー?
しかも3月の東京モーターサイクルショーでお披露目されたあれが、もう走った!

3月に行なわれた東京モーターサイクルショー。そこに、ホンダはふたつの「隠し玉」を用意していた。通常、こういったショーに出展するモデルは、解禁日を設けて事前にメディアにインフォメーションされるものなんだけれど、この「隠し玉」は当日までのお楽しみ。お、CBシリーズの新顔か、それとも新世代スーパーバイクか?
そしてショー初日、ホンダモーターサイクルジャパンの加藤千明社長によってアンベールされた「隠し玉」は、なんと電動バイク2種。それも、明日からでも朝の街に働きに出そうなBENLYエレクトリックと、まさかの電動モトクロッサーCRエレクトリック・プロト! ビジネスバイクとオフロードレーシングマシンという両極端! 底辺と頂点、両方に電動を普及させようとするホンダの意思表示にも感じられたのだ。
そのCRエレクトリック・プロト、マン島TTレースに「神電」シリーズで参戦する無限とのコラボレーションで開発されたモデル。車体は既存のモトクロッサー、CRF250Rを使用し、パワーユニットをモーター+バッテリーに換装。
実は、その現物を見た限りでは、あまりの仕上がりの自然なパッケージに「たしかに近い将来、こんな時代が来るんだろうな。10年後か、5年後か、3年後なんてこともあるのかもな」なんてのんきに考えていたのに!

あれからほんの1か月足らず。そのCRエレクトリック・プロトが、もう走り出した。ところは全日本モトクロスの開幕戦、HSR九州で、日曜の決勝レースインターバルに、まさかのデモランを敢行したのだ!
ライダーは元HRCワークスモトクロスライダーであり、現在はモトクロスレーシングアドバイザーを務めている増田一将さん。聞けば増田さん、このCRエレクトリック・プロトに乗るのは初めてなんだという。

「どういう動きをするのか、ぜんぜん想像もついてないのに、練習時間もないんですよ。ちゃんと普通に走るのはもちろんだろうけど、それをモトクロスコースでなんて、オレどうやって乗ったらいいんですかね……」と不安げ。

けれど、デモランの瞬間はやって来た。当初、天候によってはデモランを中止するかも、と言われていたのは、電動バイクゆえ、特に水分(つまり雨)に弱いからだ。かつて無限製マン島TTマシン神電も、ウェットコンディションで何度もテストを中止したことがあるほど。あの頃よりも開発が進んでいるとはいえ、やはり雨、それも水分を含むマッドを走るとなると……。
迎えたデモランの時刻は雨。それほどひどくないとはいえ、コース路面はぬかるみ始めている。

「これくらいの条件なら大丈夫です。みなさんが考えているほど雨に弱いわけではありませんし、今回の中止の可能性っていうのは、例えば台風並みの豪雨になったら走れませんよ、くらいのつもりだったんです」とは、CRエレクトリック・プロトを展示していたブースそばにいたスタッフの方の弁。どうやら、僕らが考えている以上に、電動モトクロッサー技術は進んでいるのだ。

そしてCRエレクトリック・プロトは走り出した。スタートラインにつき、周りのスタッフがスペースを空けたと思ったら、いきなり走り出す――というのも、CRエレクトリック・プロトはエンジン始動の儀式もなく、あえて言えばそれはメインスイッチONだけだから、今までの常識のように、キックアーム(やセル)でエンジンをかけて、ギアをローに入れてクラッチをつないで、という一連の操作が、まったくないのだ!

「キュイィィィィィンン」

まるでラジコンのモーター音のようなサウンドを伴なって、CRエレクトリック・プロトは走り出す。思ったより速い! スタートラインからゆっくりとスタートした増田さんだったが、あまりの自然なフィーリングに、慎重に走っていたのは1周目だけ。スタート-フィニッシュラインを通過した2周目からは、思い切ってアクセルを開け始めているのがよくわかる。
サウンドは相変わらずモーター音と、ふたつのタイヤがダートをグリップして、泥を後方に投げ捨てる音のみ。普段はエンジン音にかき消される、サスやリンクまわりがカチャカチャ鳴る音も聞こえてくる。
コーナリングでは進入にやや慎重になりつつも、脱出では思い切ってアクセルを開けているのか、リアタイヤはドリフトし、きれいに向きを変えてコーナリングしていく。コーナリングでタイヤが泥を掴んで後方に放り投げ、ジャンプもスムーズにクリア、まさに音もなく空を飛ぶモトクロッサーが出現したのだ。

デモランは、ほんの3周ほど。その走りを見た限りでは、デモランだから、当然のようにパワー制御を受けているはずなのに、加速はすでにエンジン車と同等。CRF250Rどころか、450Rクラスだと言っても決して大げさじゃない。もちろん、このCRエレクトリック・プロトに搭載されているパワーユニットは、エンジンでいう排気量が何ccに相当するのか、出力は何ps、いや何kwなのか公表されていないし、そもそもクラス分けの規格すらない。これまでの電動モトクロッサーといえば、KTM/ハスクバーナ連合が50ccクラス向けのKTM SX-E5/ハスクバーナEE5を発表、あれは5kw(=約6.5PS)と公表されていたけれど、そうするとCRエレクトリック・プロトはいくつなんだろう――。

「いや速かったですよ! 普通に走る分にはまったく違和感なく走れます。ただ速く走るとなると、減速域がかなりエンジンとは違います。これは慣れていくだけですね。いやぁ速かった! 速さの種類が違うんですよ、種類が。ギアチェンジもしないし、なんていうか……経験したことがないから説明しようがないです(笑)」と増田さん。

モトクロスでのエンジンの存在というのは、ただ走るだけじゃない、減速や、リアタイヤが泥を蹴飛ばして進むスライドトルク、さらにジャンプ中に空中で姿勢を作ることにだってクランク重量が関わってくる。ただのヨーイドンならばとっくに実用化していると言われる電動バイクは、これから急速に開発が進んでいくのだろう。ホンダが初公開ののち、わずか1か月でデモランを披露したということは、そこまで進んでいるのだと考えていいのだから。

CRエレクトリック・プロトは、いつまでもエンジン車でレースやってる時代じゃないよ、ってテーマに向かったホンダの答えのひとつなのだろう。F1だってMotoGPだって電気を視野に入れているし、トライアルでは、2017年から世界選手権で「トライアルE」カップをやって、日本からも2018年に黒山健一(ヤマハ)が参戦した。トライアルは、バイクで最も電動化が進んでいる分野のひとつだろう。

モータースポーツで、もっとも過酷な環境にさらされる競技であるモトクロスだってやって当たり前。CRエレクトリックvsYZエレクトリックvsRMエレクトリックvsKXエレクトリックの全日本モトクロス――。こんな時代、案外早くやってくるのかもしれない。

(レポート&撮影:中村浩史 写真:Honda)

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