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 伊豆スカイラインのほぼ全線を管轄する大仁警察署や道路管理者である静岡県道路公社が、ライダーに歩み寄る形でスタートした事故ゼロ作戦は、すぐさま目に見える効果を上げた。過去3年連続で発生していた死亡事故は2009年にゼロ件となり、2008年は24件だった人身事故が、2009年では13件へと大幅減少。重傷率も2008年の46.2%から2009年は31.3%へと減少した。それでも県平均の18.8%に比べて高すぎる数値と言え、同作戦の継続実施が求められた。

 伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦をサポート参画する民の団体として、伊豆スカ事故ゼロ小隊(元の伊豆のワインディングロードを愛するライダー有志一同)がある。NPOでもなければ伊豆市および伊豆の国市からの支援も無く、企業の出資も無い、二輪車の事故防止の啓発活動をいわゆる「手弁当」で行なっている地元のボランティア団体である。伊豆スカ事故ゼロ小隊(以下、事故ゼロ小隊とする)が大仁警察署や静岡県警察本部、静岡県道路公社などから必要だとされているのは、予算や日程、人員確保等の都合上、同作戦を毎月のように開催することは不可能であり、作戦間をつなぐように事故防止の啓発活動を行なう民の協力が欠かせないと考えられているからである。
 
 また、主に地元ライダーによって構成されている事故ゼロ小隊は、他県から訪れるライダーに対し、同じくライダー目線で事故防止の啓発を呼びかけながら、天候や路面状況などの状況も含め危険箇所をアドバイスできる。この経験や知識においても関係団体からの評価が高く、二輪車の事故防止に関して意見を求められることが多い。

写真、イラストなどを使った啓発ビラを自主制作。大仁警察署の監修を受けて印刷、配布する。活動時はビラを配布するだけでなく、事故らないように走って! と声掛けも実施。手弁当で足代も各人が負担。個人の時間を割き、体力も要する。しかしどこからも補助金等は受けていない。参考までに、私(KAZU中西)自身は、この活動に400万円超の自己資金を投入した。地元の道を通行禁止にしてはならない! バイク乗りの事故を減らしたい! ただその思いだけで突き動かされていた。

 実のところ、作戦開始以前の伊豆スカイラインは、レースまがいの暴走が横行しており、地元ライダーの間では敬遠されていたワインディングロードである。しかしながら、大仁警察署より事故ゼロ小隊に提示された二輪車事故の実態を見れば、伊豆スカイラインのみならず西伊豆スカイラインも含まれており、このままの危機的状況が続けば、’80年代末期のいわゆる締め出しラッシュよろしく、伊豆のワインディングロード全てが二輪車通行禁止となることが懸念された。
 
 そんな中で立ち上がった事故ゼロ小隊は、関係団体や管理者等より正式な許可を得て、伊豆スカイライン・スカイポート亀石および達磨山レストハウスにて事故ゼロ活動を実施している。「とにかく事故らないで無事に帰ろう」との声掛けに多くのライダーが賛同、協力を申し出てくれた。もちろん、「何の権利があってそんな事を言ってくるんだ?」と食って掛かられる場面も少なくなかったが、そもそも公道において危険な運転をしている者、交通安全意識の低い者に対して、他を危めず思いやり運転を! 公道は皆で安全に利用しよう! と話すことは、運転免許保持者の責務であると交通の教則に明記されている。つまり運転する権利に伴う義務であるから、あえて言うならバイク乗り誰にも事故防止を呼び掛ける義務があると言えよう。
 
 事故ゼロ小隊の活動根拠は、大仁警察署や静岡県警本部より提示されるタイムリーな事故発生状況であり、道路公社より聞き取り調査した伊豆スカイライン交通状況なども考慮しながら、啓発ビラの作成や声掛けの内容に反映させている。本筋である伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦の開催時は、計画段階から会議に参加。内容についての意見を述べる、案を出すなどを行なっている。また、伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦以外にも、事故防止の啓発活動や交通安全の広報活動が実施される際にも参加出動要請がある。これらについては、可能な限り参加対応を取っている。

事故ゼロ作戦時に配布される啓発品。ビラに記載される事故件数は、後日に物損から人身へと切り替わるなどによって数字が変動することもある。事故ゼロ作戦のステッカーは大仁警察署/交通安全協会大仁地区支部の連名で製作されるオリジナル品。活動への理解を示してくれたライダーに配布された。

 現場レベルの連携としては、事故ゼロ小隊の活動日を大仁警察署および道路公社へ連絡しており、それに合わせて警察はパトロールカーや白バイの巡回を連動させるなど、万が一の事態(ローリング族などの暴走および暴動行為)も想定しての後方支援にあたり、道路公社は安全運転を呼び掛ける啓発品(ティッシュや配布ビラなど)の提供を行なっている。ちなみに、2012年の5月まで、啓発ビラは事故ゼロ小隊が自己負担で用意した物のみであった。
 
 社会実験による全線一律200円の通行が始まった2010年以降、伊豆スカイラインの全通行台数は2割を超える増加量と聞く。しかしながら、4輪車の通行台数に対し2輪車は1割程度という比率は、社会実験以前と変わらず、全事故数に対する二輪車の事故率にも大きな変化は無し。むしろ、1割程度の二輪車が、80%近くの事故率をマークしていたことから目立つ存在となっていた。
 
 とは言え、官民一体となった伊豆スカイラインライダー事故ゼロ作戦および事故ゼロ小隊の活動があったからだろうか。結果的に2010年は死亡事故ゼロ件を達成。2011年は東日本大震災の影響もあってか、関東以北からのライダーが減り、2012年は二輪車の事故数が軽傷人身事故4件と大幅減にとどまった。

事故ゼロ活動で配布するビラは、可能な限り最新の内容をお知らせしたいため、その都度制作され、コピー機によって印刷していた。1回の活動で200枚~500枚を配るため、そのコピー代だけでも莫大な金額となる。活動開始当初から約3年間はコピー印刷のみで対応していたが、以降は道路公社や県警本部より提供されるビラも併用できるようになった。

 事故数の大幅減から、伊豆スカイラインにおけるライダー対象の事故ゼロ活動は役目を果たしたかに思えたが、2013年は状況が一変。2011年の数字を大幅に上回る事故件数となった。当時、その理由についてはまったく分からなかったが、事故ゼロ小隊の活動時に事故原因の一つであるローリング族=違法競争型暴走族の一団をよく知る人物だろうか、興味深いタレこみがあった。
 
 聞けば、誰彼構わず追い越す台数を競うことで遊んでいるバイクの集団が存在するとのこと。しかも、その人数は10人や20人ではなく、一団体のみではないとも。耳を疑う話とはまさにこのことで、それが事実であるなら、過去5年に及ぶ事故ゼロ活動において見てきた事故数の推移と、事故防止の啓発ビラ配布や声掛けを拒否するライダー、事故ゼロ作戦中も暴走行為をやめないライダーについて合点がいく。2013年、2014年と増加した二輪車事故についても然り。この仮称追い越し団については、関係者会議の中で語られたのは言うまでもないだろう。
 
 そして2015年、伊豆スカイラインの事故防止活動は最終局面を迎えたと言える。二輪車の重傷事故は5月の時点で4件、暴走二輪車に対する苦情は増える一方だ。ついには十国峠および西伊豆スカイラインにて死亡事故が発生。速度の取締りなどで対応する大仁警察署も、故意犯の暴走によって無秩序化していく様を黙って見過ごすわけにはいかない。

「事故防止の啓発活動は限界にきている。もう通行止めにするしかない。
残念なことです」

 そんな申告が県警本部に上げられたようだ。

伊豆スカイラインの二輪車事故は、地元ライダー以外が起こしており、その数字は99%以上。よって他地域の事故防止活動へ協力することは、やがて伊豆スカイラインの事故防止にも役立つかもしれない。そんな考えから県内はもちろん、他の都道府県で実施される二輪車の交通安全および事故防止に関するイベントへ積極的に応援参加している。

 ならば! と打ち出されたのがIZUセーフティードライブキャンペーン。伊豆スカイラインおよび接続する箱根十国峠に関連する静岡県東部地区の警察署、県警交通機動隊、静岡県道路公社などが合同で、事故防止の啓発および各路線でのペースメーク、取締りパトロールを実施するものである。7月12日に実施された。三島警察署がまとめ役となり、箱根十国峠レストハウスにて出発式を執り行い、その後は各署が担当エリアにて活動した。大仁警察署のチームは、伊豆スカイラインにてペースメークと取締りを担当。伊豆スカ事故ゼロ小隊も加わった。結果、活動時間中の事故は無かったが、あえて挑発してくるようなライダーが少なくなかったことも事実。このキャンペーンの実施により、即時通行止めは回避されたと言えるが、まさに背水の陣という印象が強かった。
 
 現在は、大仁地区二輪車安全運転推進クラブとしても機能している事故ゼロ小隊。今後も警察や道路管理者と連携しながら、伊豆スカイラインや西伊豆スカイラインをメインとする伊豆のワインディングロードを守るために、可能な限り活動していきたいと思う。また、ここ数年は他の都道府県において同様の問題路線(奥多摩周遊道路や道志みちなど)を抱えている警察署からイベントへの参加要請をいただいている。これについても可能な限り協力していこうと思う。振り返れば5年8か月にも及ぶ事故防止の啓発活動。そんな中から気づき、イベント等で講話している内容は次の通りだ。
 
「我々の年代、40代や50代のライダーは運転技術が高ければ事故を起こさないと教え込まれてきました。なので一生懸命、運転技術を高めてきました。しかし、現代の若者は恥をかかない程度に上手く乗れればいいや! という考えの人が多く、無理をしないから事故を起こさない。それは事故実態(年齢層や運転歴)を見れば明らか。数字に表れている。つまり旧体制の安全運転指導ではダメだということで、現代にマッチした指導方法、運転技量云々は二の次で、“ブジカエル”のココロを浸透させることが先決です! みなさんの周りにいる人からで結構、“ブジカエル”のココロを広めてください」
 
 言い換えれば過信と慢心が事故を呼び、道路を危険な状況にしている。そしてどこかが通行止めとなれば連鎖は避けられず、危険運転をやめない故意犯たちは走る場所が無くなればバイクを降りるだけだ。残されるのは増加した通行禁止路線と、バイクをこよなく愛する者たちだけである。
 
(KAZU中西)

伊豆スカイラインの通行料金は、区間片道分となっている。そもそも全線Uターン禁止となっているが、転回して何度も反復することは料金未払いの不正通行である。よって道路公社では、不定期に通行券検札を実施。この際の交通整理やビラの配布などに事故ゼロ小隊が協力している。ちなみに、二輪車の不正通行は2時間で200台以上(写真時)と、呆れ果てる数字だった。


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