第3回SSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)参戦記「太平洋の朝日を拝み、日本海で夕陽を迎えるのだ。」

午前 午後
■文:二木啓孝(ジャーナリスト)
●写真:湯浅基弘(ライダー)

ジャーナリストの二木啓孝さん(ふたつぎひろたか)は、バイクフリークでもある。事件現場へはバイクで駆けつけ、そして日本中の温泉へ行くのもバイクだった。また、日本BS放送(BS11)の取締役という顔も持っていて、BS11でオンエア中の『大人のバイク時間 モトライズ』の後ろ盾でもあるのだ。
そんな二木さんと、彼の仲間達がサンライズ・サンセット・ツーリング・ラリーにエントリーした。
東京・芝浦埠頭で日の出を拝み、そして石川県千里浜のゴールを目指したのだった。

 バイクほど厄介な乗り物はない。夏は暑いし、冬は寒い。雨が降れば濡れるし、雪が降れば乗れない。何よりもコケると痛い。しかし、エンジンに火を入れアクセルを回すと、たちまち“人馬一体”。風になる一瞬は何ものにも代えがたい。その快感を味わうために、私は17歳から、バイクとオンナは切らしたことがない(ウソ)。

 そんなバイクフリークたちが、2015年5月30日の日没、石川県の能登半島・千里浜に集まった。その数920台! SSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)だ。
 ルールはいたって簡単。太平洋岸のどこからでも日の出とともにスタート。コースは自由で、日没までに能登半島のゴール地点に到達すればいい。この面白くもバカげたバイクラリーの言い出しっぺは、あの風間深志さん。風間さんは、オートバイによる史上初の北極点・南極点到達、チョモランマ登山に挑戦し、世界最高高度記録(6,005m)という3つの世界記録を持ち、パリ・ダカールラリーに日本人として初参戦したバイク界の伝説のライダー、ミスター・レジェンドだ。

 SSTRは今年で3回目、2回目の参加の私は、いつものツーリング仲間「R3」とともに参戦である。R3とは「六本木ローリングライダーズ 」の略で大した意味はないが、このところみんな年を取ってきたので、近々、「六本木老人ライダーズ」に変えようと思っている。15名あまりの仲間のうち「仕事の都合が……」とか「カミさんが……」とグズる連中を「この軟弱者めが」と罵倒しつつ昨年同様の5人の隊員の参加である。

 さて、今年のラリーは昨年に比べてラクだった。ルール変更があったからだ。
 昨年までは「ポイント制」で、ゴールまでに道の駅のスタンプを多く集めた数で順位が決まるため、ほとんどの参加者は必死こいてのツーリング。しかも同じ県の道の駅は最初が10ポイントで次からは4ポイントになるため 、早く隣の県に移動しないとポイントが稼げない。事前に隊員たちと入念に(ワイワイ酒を飲みながらだけどね)コース選定、「目指せ2ケタでゴール」の固い決意を確認したものだ。

 昨年のラリーをふり返ってみる。東京・芝浦の埠頭で日の出を待ち、愛車と日の出を写メして事務局にメール。これでフェアなスタートとなる。首都高⇒中央高速を快調に飛ばして松本で下道に。安曇野の風景がグングン後ろに消える中、奥飛騨。順調にスタンプを稼ぎながら「おお、イケるじゃん」とニンマリ。ここからはU浅隊員のアドバイス通り、一気に飛騨高山に抜ける秘密の峠越え。何しろU浅隊員は、シルバーメタの「カワサキZZR」の逆輸入車にバイクナビを搭載、バイクの前後には小型カメラ「ゴープロ」を装着して道中を撮影。どこから見てもフル装備の立派なツアラーで、「このコースでポイント大量獲得だ!」と微笑む彼を信じなくて何を信じる。

 ワインディングの坂道を快調に進み、いよいよ峠に差しかかって、ウン? ナント「冬期封鎖」のゲートが現われたではないか!
 この地方、5月31日までが「冬期」だったのだ。強烈な脱力感――。これで2時間はロスして、100番以内のゴールは露と消え、草むらにヘタリ込む無口な5人。すっかりテンションが下がって「ま、時間内に到着すればいいか」のツーリングに切り替わった。

 道の駅でソバなんぞをすすって、通過するSSTRのナンバーステッカーを付けたバイクを眺めるヤケクソ余裕。しかし、到着したタンデムの中年夫婦、後部シートの奥さんが、全速力でスタンプを押し、脱兎のごとく走り去るのを見て、「いかん、いかん、行くぞ」と再びペースを上げる。
 糸魚川沿いに北上して富山に抜け、能登半島・千里浜には日没40分前にゴールゲートをくぐった。総走行距離は533kmで、順位は……聞いてくれるな。

 そんな去年とはルールが変わり、今年は順位はナシのノーサイド。「5県を通過した証明のスタンプがあれば完走」となった。去年と同じ東京・芝浦を日の出スタートした5人。急ぐ旅ではない。首都高⇒東北⇒上信越を抜け、更埴から下道へ。トンネルを抜けると雪をかぶった白馬の絶景がドーンと広がる。この景色替わりを体感できるのがツーリングのだいご味。糸魚川から日本海を右手に観ながら海岸線を行く。ピーカンの天気で、これまで鈍色の日本海しか体験してなかったので、これまた感動だ。

 サービスエリアや道の駅で、SSTRのナンバーステッカーを付けたバイクに会うと、自然に「どこからですか?」と声をかけ、そして「じゃ、気を付けて」と別れる。普段のツーリングではありえない光景だ。
 そして余裕の日没前ゴール。千里浜は日本で唯一、波打ち際を二輪、四輪が走れる固く締まった砂浜。ゴールまでの5km余りを、1日のツーリングの興奮をクールダウンするようにゆっくりと走る。暗くなり始めたゴールでは、地元のオネーさんやオバさんたちが並んで「お疲れさまぁ~」と手を振ってくれる。子供たちの勇壮な太鼓も鳴り響く。
 私が「SSTRは面白いぞ~」とそそのかしたため大阪から3人で参戦した友人のO津さんは「オバちゃんたちの出迎えに、涙で前が見えなかった」とウブなことを言っていた。そしてゴールの定番となった、「浅利汁とオニギリ」のサービス。疲れた身体においしさと親切がしみ渡る。そして920台のバイクは、お互いの完走をたたえながら、それぞれ近くの宿へともう一走りである。

日の出を待つ愛車。
イタリアンブルーのCB750を駆るT海隊員。
健在だった横川の「峠の釜飯」。
朝鮮半島まで見えた(ウソ)。
メチャうまの刺身。酒が欲しい……
千里浜に着いた愛車たち。
感動のゲート通過。

 翌朝、表彰式とイベントのために、ふたたび千里浜に集まったライダーたち。イベントのゲストはナント、ぐっさん(山口智光さん)。まったくのプライベートで愛車「トライアンフ・ボンネビル」での登場だ。ステージではモノマネのネタだけではなく、自作のライダー賛歌の曲を披露して大喝采だった。
 続いての表彰式。参加ノートに書かれた感想から風間さんが選考した授賞理由がふるっている。

▼後部シートで熟睡して寄りかかる妻の体重に耐えるラリーだった。
▼昨年、親子で登った御嶽山で九死に一生を得た息子と参加。今日という日に感謝。
▼鹿児島・佐多岬から参加、桜島の噴火にもあいながら、みんなの応援で頑張った。
▼50年前の非力なペダル付きバイクで完走した。
▼高校の校長を定年退職、千里浜と定年のゴールが重なった。
▼最高齢、75歳にして最高の気分。

 千里浜にバイクで集まる──。この一点だけで結ばれた1000人余りの笑顔。年に一度、ライダーたちの聖地となる千里浜に、私は来年も行くつもりだ。


Mr.レジェンド風間さんと。
嬉しいなァ、地元の人たちの出迎え。 この酒盛りのために走ったようなもの。
※SSTRの模様はBS11毎週火曜日23:00からの『大人のバイク時間 モトライズ』7月7日、7月14日で放送されます。ナビゲーションは、元ミスター・バイク編集王子の中野真矢さんと古澤恵さんだ。