METEZLER HEROES──Part3 年間100万キロ以上の“実走”テスト “人が走り、人が味付けする”──その現場へ。シシリー。最高のテストベッドを行く

ピレリジャパン

そしてペルグーサへ。

 タルガ・フローリオのコースを体験し、シシリーにテストコースがある重要性のキーが自分なりにつかめてきた。タルガ・フローリオのスタート地点に戻り、ストリートファイター達に別れを告げる。今度はスポーツツーリングセグメントのバイクで今晩のホテルを目指す。ラゴ・ディ・ペルグーサ。そこには湖を周回するように造られたサーキットが待ち構えている。かつてスーパーバイクのレースも行われたという伝統のあるトラックだ。

 1時間と少々、ワインディングと高速道路を使い、移動をする。VFR1200F、K1600GT、R1200RTなどに履くメッツラーは、Z8M。昨年ミラノ郊外のテストコース、ヴィッツォーラ・ティツィーノの驚きのウエットパフォーマンス(詳しくはで)を体験したタイヤだ。このZ8M、2011年デビューのZ8の中でも、ビッグマシン用サイズをアップグレードしたバリエーションモデルなのだが、快適性やハンドリング、グリップ性能、ウエット性能、低温時の安心感など、字面からは想像も出来ないほど、魅力が豊かなフィーリングを持っているのだ。

 初日の盛りだくさんのスケジュールと走りの中で感じとったテストコースのことを移動中考えていた。150キロ、160キロで冷静に走れて、考える余裕があるバイクもスゴイのだが、高速コーナーや、一般道のワインディングでも余裕をもってバイクを操れる特性を与えてくれるZ8Mのポテンシャルもすごい。少々疲れた体と頭でも違和感なく走れる。こうした部分まで踏み込んだ快適性は、ヒューマンエラーを最小限にしてくれるのではないだろうか。

 かつて取材で走ったタイヤメーカーのテストコース。そこには世界の道を模した舗装が造られていた。距離にして直線で数百メートル。もちろん、そのメーカーがそのテスト路を何往復もするだけでタイヤの仕様を決めているとは思わない。実走テストを重んじているはずだ。しかし、シシリーの道で1日、シーンを代えて400キロを走り、夕方、ホテルのプールサイドで冷えたビールでまた話が盛り上がるだけの元気が残っていること。この気持ちの余裕の作り方がシシリー島の道に潜むひみつなのだろう(と夢想しつつ時差ぼけの波に沈んだ)。

スポーツツーリングモデルが履くのはウエット性能とライフを最大限伸ばしたZ8M。ドイツのモトラッドマガジンが行ったテストでも高い評価を得たタイヤだ。
BMW R1200RT。定番ツアラーといえるこのモデル、重量級車用に内部構造を最適化した仕様も用意されている。 トライアンフ・タイガースポーツとZ8Mの相性も良かった。

Eat my dust !
ペルグーサの路面はそう叫んだ。

 宿泊したホテルの目の前にあるのがアウトドローモ・ディ・ペルグーサ。ペルグーササーキットだ。卵形の湖、ペルグーサ湖を取り囲むように配置されたサーキットの全長は4.950キロ。そのオーバルの途中に4箇所のシケインを設けたコースレイアウトで、初めて体験するにはビビるほど、高速トラックにして、エスケープゾーンの少ないガチンコのトラックだ。

 ここで用意されたバイクは、GSX-R750、ZX-10R、YZF-R1、YZF-R6、S1000RRなどスーパースポーツの代表格ばかり。S1000RRでコースに出る。装着されるのは、レーステック インタラクト ストリートK3だ。サーキットメインに設計されたロードゴーイングバージョンのタイヤで、そのグリップ力、ハンドリング性能は推して知るべし。走行は新品のタイヤと不馴れなトラックに気を遣って、ゆったりとしたペースの先導走行から始まった。

 ペルグーサのサーキットは、ピット前を過ぎると、左、右と切り返し、短いストレートを挟んで見た目90度の左、その先に右、左と切り返すシケインが続く。そこからアクセルを開けて大きな右コーナーを曲がり、バスストップ状のシケインへ。そこを抜けると長いストレート、その先にコンパクトに左、右と寝かし込むシケイン。その先は道幅の広いFISCOの100Rのようなフルバンクで長い時間を過ごす右コーナーを過ぎ、木漏れ日の中、最終シケインまで全開区間が続く。シンプルかつシケイン以外は道幅も広いため、追い詰められるような不安感はない。その分、攻め出すと難しい。

パドックにはレーステック インタラクト ストリートK3を履く珠玉のスーパースポーツバイク達が。エッジグリップを最大限生かすようなトレッドデザインは精悍さを漂わせる。シシリーのテスト部門の責任者、サルヴォ・ペニーズィさんもペルグーサのトラックを愛する一人。

 5周ほど先導に付いて把握に務め、全開走行に移る。誰かが前にいないととたんに難しさが増し、ぎこちない走りになる。同じようなペースで走るライダーについて走る。すると、先導ペースでは感じなかった路面舗装の縦筋、そして路面から立ち上がる埃と石はねがものすごいことがわかる。ヘルメットやシールドが絶え間なくパチパチパチと音たてる。時に大物が当たるのか、カン、と響く物もあった。

 1000㏄クラスで走ると直線と、一つ目のバスストップシケインに向かう大きなコーナー(攻め出すと道幅の広いFISCOの300R的な印象だ)で軽く200キロを越す旋回速度となる。シケインへのブレーキング時には240キロ弱ぐらいだろうか。正直速度計を見ている余裕がない。そつなく減速し、シケインを通過。次のシケインまで全開を続ける。6速までは入らない距離だから、バイクは常に加速状態だ。このシケインのブレーキングの見切りがまた難しく、入り口が狭いシケインに合わせてラインと速度を調整し、その先に続く右コーナーに入る。3速、4速と加速しながら曲がる。ストレートになって全開をくれると、まるでMotoGPの映像のように、ストレートなのに、バイクが一旦右に寄りながら直線を加速しゆく。
 最終シケインまでフロント荷重が抜け気味になるような延々ダイナミックな加速が続く。250キロ程度だろうか、300メートル、200メートルと視界の中でぶれる看板を過ぎたあたりでブレーキング開始。このストレートは速度も乗るが、木漏れ日に照らされて路面の状況を把握しにくい。アップダウンを感じることはないが、とにかく飛ばすと難しいペルグーサ。

 2時間弱のセッションでいろいろなバイクを乗り換えて走ってみた。どのモデルでも感じたのは、不慣れなコースながら、直線は躊躇無く開けられ攻略する事に集中できた。誰かに近づくと、埃がものすごい勢いでヘルメットを直撃するほどダスティーで、風に舞う落ち葉も少なくない。もてぎのようなクリーンさは望むべくもない。それでも、旋回中、フルパワーを掛けても後輪はしっかりとトラクションしながら最大でじわじわと外に動くだけ。荷重が乗っている感覚で、それ以上外に逃げるとか、いきなり滑りそう、といった不安な予感がすることはなかった。むしろ、寝かすほど安心感が高まる性能に驚く。

 グリップ性能とハンドリングの良さ。この二つが充実していると、走ることに没頭できるし、挑戦しようという気持ちになれる。 ポジティブになれる。この気分でいられること。これがスポーツするタイヤには大切な機能だと思う。

 余談だが、このペルグーサのコースでかつて行われたレースでサルヴォさんはRC30を駆り、コースレーコードを出し、ポールポジション、優勝という輝かしい経歴を持つそうだ。僕はペルグーサに潜む最速の赤いラインが見えてこないままパドックでツナギを脱ぐことになる。

 





レーステック インタラクト ストリートK3は直立からリーンさせる時の手応えが自然で軽快、深いバンク角でエッジに荷重をのせてゆくような場面では、しっかりとしたグリップ感を伝えてくるのが特徴。ブレーキングのスタビリティーや、ブレーキングを残した旋回でも挙動がスムーズ。ねっとり重くなるようなこともない。埃が舞うほどダスティーな路面が点在したペルグーサでも、不安に思うような場面は一切なかった。1周する間に4箇所のシケインを通る走行を1時間以上を繰り返したが、疲れることなく楽しみ続けられた。

欲張りを唸らせる方法。

 ペルグーサのパドックから今度はトラベルエンデューロに跨がってエトナ山を目指す。現在このセグメントのバイクは人気が高い。アップライトなポジション、街乗りから国境を越える旅までゆける行動力、そしてオプション、アフターマーケットのパーツの充実、アパレルもラインナップが豊富。
 なにより、このセグメントのバイクが持つ性能の多様性が受けているのだと思う。街中、ワインディング、悪路、ツーリング。どんな場面を走ってもその性能は高い。今や150馬力のエンジンを搭載するモデルもあり、ちょっと前ならスーパーバイク並の性能をもつのだ。一台で何役もこなし、どの場面でも我慢の必要がない。ウケるわけだ。

 それだけに俄然タイヤに対する要求度も高い。市街地での快適性と軽快性、高速道路でのスタビリティーと車線変更や長いカーブでの操縦性、グリップ力とハンドリングのバランス、耐久性、ウエット性能や低温時の安心感。それこそ、峠レベルからサーキットの走行会、マッドや砂地には目をつむるが、普通のダートなら走りを楽しめる総合性。まさに何でもこなすスター性が求められている。


今、気になるアドベンチャーバイクが揃ったエトナ山への道。火山灰の壁は黒く、砂漠のような木々のない風景にこのあと出会う。

 メッツラー最新版アドベンチャーツアラー用タイヤは、ツアランス ネクスト。このタイヤは、ツアランスEXPの後継モデルで、進化するバイクの技術に呼応する性能を持たせるため、2輪メーカーとも共同で開発を進めたという。
 今やサスペンション、エンジンマネージメント、ABS、トラクションコントロールなどをボタン一つで一括変更できる時代になった。そうした時代に呼応する機能性、性能を持たせたタイヤだという

 実際、乗り心地はすこぶる良く、ハンドリングも自然かつ前後の旋回バランスが秀逸。ブレーキング時の安心感も高い。ロードバイクを追いかけ回すようなペースにあげても、オンオフタイヤだから、なんて遠慮する必要がない。
 それでいて、林道やちょっとした砂地ならなんでもなく走り抜けるし、実際それを楽しめるだけのポテンシャルをもっている。そして他のメッツラーのタイヤと同じく、走ることが楽しくなる魔法の成分がこのタイヤにも配合されている。

 エトナ山の裾野から標高2000メートルちょっとの所にあるレストハウスまで一気に駆け上るワインディングでは、相当に楽しめる。ロード性能がすこぶる楽しいのだ。
 この10年、このクラスはとても伸びた。そして次の10年もこうしてしっかりと成長するのだろう。ツアランス ネクストはその大切なパートナーなんだ、そう思わせるタイヤなのだ。最後に最新用に設計したタイヤは、例えば5年前のモデルとの相性が気になる、と質問したところ、最新の技術で造ったタイヤだけに、試したところ、従来モデルとのマッチングもあらゆるパートで向上していた、という。これは嬉しい。

 

2013年フルモデルチェンジしたR1200GSはツアランス ネクストとの相性は抜群。ロードでの快適性、軽快性、ハンドリング、グリップ力、冷温時の安心感など、どのパートを見ても総合的に高性能だといえる。正直、他のモデルに乗り換えたくなくなるほど頭抜けた存在、という部分にタイヤ効果が有ることは間違い無い。

スタート地点、古城ホテルへ。

 いよいよ初日のスタート地点、古城ホテルに戻る時がきた。今度はメガスクーターによるツーリングだ。ビッグエンデューロで駆け上がったワインディングを今度はスクーターで下る。用意されたのは、大径ホイールのホンダSH300、ヤマハのグランドマジェスティ、TMAX、スズキからはスカイウェイブ(現地名バーグマン)400と650等。
 麓に降りる少し前、道端に現れたカフェレストランの看板を右に折れる。この奥に店などあるのだろうか、というところで曲がると、その先になんとも香しい匂いをさせるテーブルがセットされていた。
「今日の昼はBBQさ」と引率するテストライダーの誰かがいったのを思い出す。
 そこで食べたBBQや野菜を煮込み、パスタなど美味しい物ばかりを堪能し、食後のコーヒーをすする頃には、「ああ、もうすぐ終わりか」と得難い体験がすでに懐かしくもあった。

 1時間以上、ゆったりと過ごし、再びバイクに跨がる。遠くに見える山の斜面に立ち並ぶ家並みなど、ここでもシシリーの風景は最高級だった。良いタイヤ造りに厳しい道と素晴らしい時間を過ごせる環境の二つに、季節や天候など、様々な条件が与える路面的、心理的な変化。これがタイヤ造りの最良のスパイスになっているにちがいない。そう思いながらホテルへの道を噛みしめた。

 

スクーターもタイヤ一つでその走りが変わる。街中の機動性を考えれば、乗り心地がよく、ハンドリングが楽しめて、しかも気温、天候を問わない安心のグリップ力があること。これは大切なキャラクターだ。

タイヤは換えるものではなく、変えるもの。

 こんなエピソードがある。NC700Xのプレス試乗会の時、ホンダが用意した試乗用車両、全車にメッツラーZ8が装着されていた。このタイヤをOEMとして選択したことは英断だと思う。そして乗り心地、ハンドリングなど、バイクの質感を上げるのに大きな役割を果たしていることは乗ってみて良く分かった。ホンダのテストライダーに話を聞くと「このタイヤ、好きなんです」と本音を述べた。
 今回、シシリーを走り、どんな人達がどんな場所で造っているのかが解った。同時に、この道でどのぐらい徹底して走り込めばアウトプットとして素晴らしいプロダクトができるのか、にも想像を巡らせることができた。
 職人技的センサーを持つ人達が、これだけ楽しめる風景、自然環境の中に現存する「道」で造っているからこそ、だれもが共感できる良いタイヤへと仕上げることができるのではないか。テストコースの中にある「世界の道」は、試験路であり、リアルな道でない。その辺の違いが色濃くでているのかな、と想像が動き出すイベントだった。
 そして、タイヤは交換するものではなく、履くだけで、バイクの動きや、安心感、性能や楽しさを“変える大切な機能部品”なのだ、ということをあらためて心に刻み、シシリーテストを終えたのである。(完)

 


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