右に出るものなし! 「極上ツアラーV-Strom650 ABSはこんなに凄い!」と言いたいぞツーリング

SUZUKI

フリーライター、いや、「二輪ジャーナリスト」(言い過ぎ!)として毎年様々な最新モデルに乗る機会を得ているけれど、ここ数年でスズキのVストロームほど「こりゃいいぞ、僕の使い方にピッタリだ!」と思ったバイクはなかった。だから、買った。そしてことあるごとに編集部で「これが最高なんですよ~!」と熱弁していたら、わかったわかった、じゃその素晴らしさを書かせてあげるよ、とこの機会をいただきました。書くぜーっ!

 

 僕はとても欲張りかつワガママ、さらにバイクに関しては舌が肥えちゃってるからタチが悪い。最新モデルは、もちろん性能面で十分に納得できなきゃいけないと思っているし、それに加えて日々の移動も快適にこなし、長距離走行でも根を上げず、タンデム時にも後席から不満が聞こえてこず、かつ燃費がいいだけでなくてワンタンクの走行距離も長いのがいい。これらの項目を高い次元でバランスさせているバイク……Vストロームじゃないか! そんなわけで購入したマイニューマシン、普段は神奈川県の自宅から都内へのアクセスや、時たま北関東方面や浜松方面へのツーリングに使ってきたが、改めてその良さを感じ取るべく最も得意な長距離ツーリングのシチュエーションを満喫することにした。

 当初は東北に行くことにしていた。北海道はもちろん行ったことがあるし、東北も仙台ぐらいまでは守備範囲。しかし仙台から北のゾーンは未知でありいつかは足を延ばしたいと思っていたエリア。そのためには仙台まで高速道路を疲労少なくビュンとこなし、かつ東北の狭い道や濡れ落ち葉が散乱する舗装林道も怖くないようなバイクがいい。Vストロームにはうってつけのツーリングだろう。
「あまちゃん」の北三陸にも行きたいし、いつもは通販で贔屓にしている青森のラーメン屋さん「のすけ」も行きたい。十和田湖、白神山地、恐山。夢が膨らむ、と思ったら。紅葉どころかすでに雪が降っているっていうじゃないか! さすがのVストロームでもナシ、ナシ! また来年にしよう。

 予定変更。今年の一つの目標として、ツーリングマップルの「関東・甲信越」から出たいというのがあった。年間おおよそ2万キロ近く走っているのに、関東甲信越から出ていないとは一体どういうことか。
なんともったいない。そこで選んだのが、「ツーリングマップル中部・北陸」にある石川県の能登半島。やはりツーリングといえば海産物は食したいところだし、よく二輪雑誌に出てくる「なぎさドライブウェイ」も走ってみたい。関東からのルートには飛騨高山や白川郷も組み込める。これなら文化的かつワインディングも楽しめ、さらに海の幸も楽しめるルートにできそうだ。2泊3日としよう。

 大人になる前のツーリングとは、朝5時出発で朝食前に200キロ! みたいな元気があった。そんな元気はどこへ行ったのか、のんびりと起きてのんびりと新聞を読み、1キロも進まずに朝食を食べてから出発したのは10時半。中央道に上野原で乗ったのが11時半。危うく東京を脱出する前に昼食となるところだった。高速道路でのVストロームはすこぶる良い。650㏄という排気量は、より大きな排気量に慣れている人からしてみれば辛そうだと感じるかもしれないが、楽なポジションを保ったままの高い防風性と静寂性、そして100キロ巡航では振動が極めて少ない4500rpmほどであり大変快適だ。僕のは輸出仕様で国内仕様よりもギア比が加速寄りとされているため、国内仕様だったらさらに低い回転数のはず。また6速固定のままの加速も優秀で、シフトダウンせずともアクセルを開ければVツインの鼓動と共に元気にスピードをのせる。

 単調な高速道路をストレスなくこなし(回転数5000rpm以下をキープすると燃費もとても良い)、中央道を降りたのは塩尻IC。20リッタータンクを満タンにしてから19号を北上、そこから松本で156号「野麦街道」へと左折する。これが失敗。野麦街道なんて言われるととっても良さそうなワインディング路を期待していたのだが、ツーリングマップルに書いてあった「観光シーズンは全線大渋滞 早朝に抜けてしまいたい」は本当だった。のんびりだけならともかく、フラフラと、そして紅葉がきれいだと突然停車する観光客の車が多くて走りづらいったらない。追い抜きも大変難しく、ここは我慢の道。
 しかも気温がどんどん下がり、Vストロームの防風性を持ってしてもさすがにイヤになってきた。こりゃオプションのグリップヒーターは必須だな、なんてぼやいている頃に、上高地へと分岐する交差点に。ここから先、上高地方面へは一般車両の侵入ができないのだが、学生時代に奥穂高・前穂高・北穂高と登ったことを思い出す。先日、丹沢の大山に登っただけでパンパンの筋肉痛になっている今は考えられない。快適なバイクの追及もいいが、もう少し運動もした方がいいだろう、と自分に言い聞かせる。

 寒くてつまらない道を延々走り、時間がないから温泉にも入れず、「あれ? ツーリングってもっと楽しくなかったっけ……」なんて思い始めた時、安房峠に差し掛かり、有料のトンネルではなく迷わず旧道の峠道へと入る。これが大正解。観光客はぐっと減り、ここまではまだ色づきが少なかった木々がばっちり紅葉していて見応え十分。ヘアピンカーブが続く峠道は狭く荒れていてスポーツバイクでは怖くなりそうな場面だけれど、Vストロームでは全く問題なくこなすことができる道。ところどころで景色が開けて遠くに山々が見え最高に気持ちがいい。気温そのものはもっと下がったかもしれないが、紅葉した木々の間から漏れてくる陽の光が暖かい気にさせてくれる。濡れた落ち葉の上を慎重に走っていたら、対向からBMWらしきアドベンチャー系バイクが2台現れた。高速道路も快適にこなせるある程度の排気量をもちつつ、こんな道も楽しめちゃうこのカテゴリーが人気なのがよくわかる。嬉しくて手を振った。

 峠道の西側は落ち葉も少なく路面もわりと良く、いわゆるワインディングを楽しむことができた。こういったアドベンチャー系バイクのスポーツ性は限られていると思う人もいるかもしれないが、公道のワインディング路を楽しむ能力はかなり高い。特にVストロームは基本骨格が大変しっかりしている上、前後のサスもストロークが大きくて、ロードバイクのビシッと感とオフ車の許容力が見事にブレンドされている。とても楽しいペースが可能なだけでなく、上体が起きていて先が見通せる安心感があり、かつ動物の飛び出しなど予期せぬ事態にも対応しやすい余裕がある。またフロントの19インチホイールが路面状況に関わらず安定した操舵感と接地感を提供してくれるのも嬉しい。

 峠道を満喫した後は158号線で飛騨高山を目指す。旧い街並みが保存されていて素敵だというので、一度は行ってみたいと思っていた。しかし着いてみると、その旧い街並みは2本ほどだけで、かつ観光客でごった返していた。平日なのに……と思いながら、それでもちょっとは散策しようと駐車場を探すと、お約束の「二輪は不可」。探せばあったのだろうけど、この時点ですっかり意気消沈。こういった旧い状態を保存する動きはとても好きなのだけど、あまりに観光地化すると魅力がブレてくるように感じてしまう。まぁいいや、すぐ近くの白川郷に行こう、と足早に立ち去る。

 飛騨高山のすぐ西から乗れる東海北陸自動車道がまた凄い! 何にもないような山の中を長いものでは11キロもあるようなトンネルでつなぎ合わせて、北は北陸道、そして南では名古屋までつなげている。よく作ったなぁ、と感激するほど日本の原風景の中に突然21世紀が存在するイメージだった。この東海北陸道をありがたく利用して、飛騨高山から合掌造りで知られる白川郷へとひとっ跳び。すでに夕方だったが世界遺産にもなった萩町集落へと降りて行った。高速道路とは不思議なもので、まさに「降りて行った」という感じ。あまりに短い時間で全く違う場所に移動できてしまう感じはまるで飛行機のよう。125㏄大好きピンキー大統領が「高速乗れるって、いいなー」とこぼしてたが(暴露)、高速道路はどこか不自然さを感じたりもするもの。下道で風景が移り変わるのを感じながら走る方が風情があるようにも感じてしまうが、それでは2泊3日でここまでこれないか。

 白川郷は大変素敵なところ。夕方で観光客も引き気味、そしてお店も閉まってきていることでリラックスして見ることができた。とても素敵な合掌造りは世界遺産にふさわしいと思わせるもので、山に囲まれたそのシチュエーションはまさに日本昔話。ヨーロッパなどでは旧い建物を取り壊すことはもちろん、改装すらしてはいけないなどの決まりごとが多く、積極的にこういったものの保存に取り組んでいるが、日本でも今後さらにそういった動きが進めばいいなと思う。
 もちろん、それは観光客目的や世界遺産獲得目的ではなく、ただ日本のヘリテイジを大切にするべきだという意味で。白川郷のステキさは、地元の人がそれらの建物に今も住んでいるということだと思う。メインの通りでは観光客がワイワイしている一方で、裏手の田んぼを見回っている農家のおじいさんがいる。そんな何百年も変わっていないであろう風景が素敵で、ある意味世界遺産なんてならなければ良かったのじゃないかとも思ったりする。秘境は観光地になってしまったらもう「秘境」ではなくなってしまうから。という自分も観光客なのだが。

 再び高速道路に乗り北上すると、先ほどの集落以外にもたくさんの合掌造りの小さな集落が点在していることに気付く。もしかしたらこれらの観光地化されていない集落の方が地元の人とも話せたりして面白いかもしれない、などと想像しながら一気に福光ICへと北上。そこからはツーリングマップル推奨ルートとなっている304号線で金沢を目指す。推奨されているだけに快適な道だが、いかんせんもう暗いしとにかく寒い。早いところ宿を見つけたい。多少迷いながらも能登半島の西側を北上する159号線を見つけ、民宿・空室有の看板を見つけ飛び込む。


※以下写真をクリックすると大きくなったり、違う写真が見えたりするものもあります。

観光道路で早朝に抜けてしまいたい、とツーリングマップルにアドバイスがあった国道156号線は、その通りで昼間は難儀する道だった。空は晴れているのに、道はずっと日陰のようでやたら寒い。しかし松本から西に行く道は他に選択肢がない。オプションのグリップヒーターを夢見ながら進む。

ツーリングらしくなってきた安房峠旧道。木漏れ日が実際の気温以上に暖かく感じさせてくれ、また時折遠くに見える険しい山々が関東平野から抜け出てきたことを実感させてくれる。ブラインドコーナーが続き、路面状況も変化に富むような峠道はVストロームの得意とするところ。柔らかいサスペンションと19インチのフロントホイールで安心感は高い。

ツーリングに旧い日本家屋はよく合う、気がする。またツーリングしてますよ感の強いVストロームもよく合う、気がする。これは上高地方面から高山へと向かう158号線沿いにあった荒川家住宅という国指定重要文化財。1796年に造られた建物で、内部は当時の生活を知る博物館となっていた。裏手の蔵の横に無造作に置かれていた「縄作り機」(手動)をはじめとする当時の農機具が興味深かった(写真がなくてすみません)。

旧い街並みが保存されている通りが数本ある高山市内。ここを目的にのんびりとデートで来たら楽しめそうだが、今回は一人の上に駐車スペースがすんなり見つからなかったことで、簡単に見て後にした。昭和を懐かしむ博物館にはミゼットやメグロなど置いてあった。9歳で昭和が終わっている僕としては懐かしさを感じられないのが残念ではあるが。

合掌造りの珍しさとダイナミズムに目を奪われがちだが、白川郷の魅力は今もそこで生活がなされていることだろう。山に囲まれた小さな農村は豪雪地帯でもあり、高速道路がなければアクセスは難しい場所。そんなところに田んぼがあり、3輪自転車に乗って生活を営んでいる人たちがいる。

田んぼの中にぽつんと建っている納屋も合掌造り。近づくと屋根が縄で縛りつけてあるのが見え、手作りだと実感する。観光地と化して外国人観光客もバスできて大量に歩き回っている一方で、おじいさんが田んぼの見回りをしていたりする。

 明らかに海の幸を売りにしているこの宿の最後の空部屋に滑り込み、その後の風呂、刺身、カニ、ビールとお決まりのコースについては触れますまい。風呂で会ったおじさんがどこに行くのか聞くため「まだ決めてないですけど、輪島の漆器を見て、あと千枚田あたりまでは行きたいですね。お勧めはありますか?」と言うと、あらかじめ行く県の県庁観光課に電話すると、その県の観光名所のパンフレットなどをたくさん送ってくれるそう。さらに行こうと決めた市町村の観光課に電話すれば各市町村のパンフレットやクーポン券も送ってくれるという。「郵送料は向こうが持ってくれるんだよ! かかるのは電話代だけ!」と言っていて、なるほどそういうのも楽しそうだなと思った。

 1日目に走った距離は448.7キロ。1回目の給油までの燃費は高回転も積極的に使ってしまって25キロ。塩尻で満タンにしてからの燃費はのんびりツーリングペースが効いて29.8キロ。この距離を走っても肩の凝りも尻の痛みも感じないことから、改めてこのバイクのツーリング性能を見直す。
 部屋から見下ろせる駐車場に駐車し、バイクの姿とツーリングマップルをつまみに一人で夕べを過ごすなんて、ちょっと寅さんみたいでいいじゃないかと久しぶりに走りごたえのある一日を終えた。明日はなぎさドライブウェイからスタートし、いよいよ能登半島を駆けよう。乗るたびに好きになるVストロームと共に。(続く)

いかにも雨を降らせそうなどんよりした雲から逃げるように金沢方面へと東海北陸道を北上する。ツインヘッドライトは明るくてありがたい。初日の走行距離450キロほど。快適さと、ワインディングでのエキサイティングさと、燃費と、すべてが高い次元でバランスされているVストローム。編集部の皆さん(そしてもちろん読者のみなさん)、改めて「これ、最高なんですよ!」。

■よりバイクのインプレッションにフォーカスしたV-Strom650 ABSレポートが現在発売中のミスターバイクBG(2013年12月号 ドイツで特撮したZ1ポスターが付いて特別定価500円)に掲載されています。そちらも合わせて、ぜひどうぞ。

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[V-Stom650 ABSの詳細はを御参照ください]