西村 章「続・MotoGPはいらんかね?」 MotoGP第9戦・ドイツGP(ザクセンリンク・サーキット) ぶっちぎりで自身10年連続ポールトゥウイン 日本人による1、2グリッドはMoto3クラス初

第6戦・イタリアGP以来となるジャーナリスト西村 章さんの現地直送レポート「続・MotoGPはいらんかね?」。今回はシーズン折り返しとなる第9戦ドイツGPの模様です。かつて東ドイツGPも開催されていた今回の舞台・ザクセンリンクはホンダ、そして現在ランキングトップのマルク・マルケスが得意としているコースで、予選はマルケスが7年連続(125cc時代から含めると10年連続)のポールポジションを獲得。予選と言えばMoto3クラスでは佐々木歩夢が自身初、日本人ライダーとして久々のポールポジションを獲得しました。

●文:写真:西村 章
●写真:Honda/Suzuki/Yamaha/Ducati

 シーズン前半戦の締めくくりは、ドイツGPザクセンリンクサーキット。毎年ここはカレンダー全体の中でも屈指の観客数を誇る会場だが、今年は三日間合計で20万1162名を動員した。その大観衆の面前で土曜には10年連続のポールポジションを獲得し、日曜は10年連続の優勝、というウソのようなホントの大事業を達成したのが、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)。

「狙いどおりに走れた」と、決勝後に完璧なレース運びを振り返った。「プランは最初から最後までレースをリードすることで、最初の2周でタイヤを温めて、3周目からプッシュする、というチームと話していた計画どおりに運べた」


10年連続優勝の大偉業を達成したマルク・マルケス。※以下、写真をクリックすると大きく、または違う写真を見ることができます。

 今年は、同様に無敗を誇っていたオースティンでトップを走行中に転倒してリタイアとなってしまったものの、それ以外の8戦は、優勝が5回、2位が3回という超高水準の内容で推移している。獲得ポイントは185で、ランキング2番手につけるアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Ducati Team)とは58点差。
 ちなみに、マルケスが過去にチャンピオンを獲得した年それぞれの、シーズン折り返し地点での獲得ポイント数およびランキング2位選手との差(ということは、いつもこの段階でランキング首位という常軌を逸した離れ業を続けているわけでもあるのだが)を見てみると、以下のような状況になっている。

・2013年:163pt(16pt/ダニ・ペドロサ)
・2014年:225pt(77pt/ダニ・ペドロサ)
・2016年:170pt(48pt/ホルヘ・ロレンソ)
・2017年:129pt(5pt/マーヴェリック・ヴィニャーレス)
・2018年:165pt(46pt/バレンティーノ・ロッシ)

……と、このように比較してみると、9戦全勝でシーズンを折り返し無敵状態だった2014年を除けば、今年が最も安定していることがわかる。今回のレースでは18周目まで2番手を走行し、表彰台を射程に収めながら11コーナーで転倒リタイアを喫してしまったアレックス・リンス(Team SUZUKI ECSTAR)がレース後に奇しくも語っていたとおり、現在のポイント差は「自分もドビもペトルックスも、50ポイント以上離れてしまったので、総合優勝を目指して戦うのはかなり難しい」という状況だ。「2戦連続クラッシュで、ノーポイントになってしまったのが残念。ランキング首位は少し離れてしまったけど、2位を目指して争うことはできる」と話したリンスだが、11コーナーの転倒は、「ラインはそれまでと同じだったけれども、2~3km/hほど高いスピードで入ってしまった」ためにフロントが切れ込んだのだとか。



2戦連続転倒リタイアのアレックス・リンス。 スズキの社員ライダーとして世界GPで活躍、7月3日に逝去された伊藤光夫氏追悼の黒リボン。ルーキーのジョアン・ミルは7位フィニッシュ。

 このリンスの転倒により、2番手に繰り上がったのがマーヴェリック・ヴィニャーレス(Monster Energy Yamaha MotoGP)。前戦のオランダGPでは優勝し、今回は2位でチェッカー。今回は早々に転倒してしまったもののファビオ・クアルタラッロ(Petronas Yamaha SRT)もここ数戦バツグンの速さを発揮していることを考えると、ヤマハ陣営もここにきてようやく戦闘態勢が整いつつあるようだ。情報によると、ヴィニャーレスとクアルタラッロの車体は同じ(もしくは類似の)方向性らしく、その仕様のベースができあがってきた、ということなのだろう。一方で、バレンティーノ・ロッシはこの車体が好みではないらしく、別の仕様を使っている模様。どちらが最新型、というわけでも特にないようなのだが、ロッシはまだ気持ちよく走れる状態には至っていないのだろう。レース後にロッシは、「去年は、シーズン全体の中でもこの5戦は比較的うまく走れたけど、今年は苦労が続いているので理由を究明しないと……。特に今回は、去年の自分のレースタイムよりも、20秒遅かった」と困惑した様子で述べた。ただし、今年のドイツGPが去年より格段に遅かったのは、寄る年波のせいではない、とも言明している。

「確かに自分は歳を取っているけれども、去年も年寄りだったし、5年前もすでに年寄りだった。ギブアップしようと思ったことがないし、モチベーションがないと思ったことがない。だから、去年の自分より20秒遅い理由がわからない」

 病膏肓に入る、というヤツだろうか。一刻も早い究明を願いたいものである。



2位のマーヴェリック・ヴィニャーレス。 予選2位ながら決勝は転倒リタイアのファビオ・クアルタラッロ(♯20)。

 3位のカル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL)は、今回のウィーク前の水曜に自転車トレーニングで転倒し、右膝を痛めた状態だったのだが、その負傷を感じさせない力強い走りで開幕戦以来の表彰台を獲得した。チームメイトの中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)も左足首に負傷を抱えた状態でドイツGPに臨み、14位で完走。満身創痍のLCR陣営だったが、両選手とも腹の据わった走りで好内容のシーズン折り返しになった模様。

いまいちパッとせず8位で終わったバレンティーノ・ロッシ。


3位のカル・クラッチロー。 前戦の負傷が痛々しい14位の中上貴晶。

 ドゥカティファクトリーは、ダニロ・ペトルッチが4位、アンドレア・ドヴィツィオーゾが5位でゴール。直線がなくほぼ旋回しっぱなしのザクセンリンクは、やはりドゥカティのキャラクターとは相性がいまひとつ、といった様子だ。ドヴィツィオーゾは、ドゥカティの抱える旋回性の課題は「DNA」といつも表現するが、その解決に対しては「何事も不可能はないとはいえ、(旋回性に課題を抱えてしまう)原因がハッキリしていないので、一朝一夕の改善は非常に難しいと思う」と、やや悲観的な様子も見せた。やはり、デスモセディチが強さを発揮するのは、加速とトップスピードで勝負できるコースなのだろう。ということはやはり、後半戦最初のブルノとレッドブルリンクが、ドゥカティにとって重要なカギを握るレースになりそうである。



4位のダニロ・ペトルッチ(♯9)。 5位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(♯04)。

 というわけで、夏休み明けも面白いレースが繰り広げられることを期待しつつ、本日、ここまで(坂本九ふうに)。では、またどこかでお会いしましょう。


西村 章

web Sportivaやmotorsport.com日本版、さらにはMotosprintなど海外誌にもMotoGP関連記事を寄稿する他、書籍やDVD字幕などの訳も手掛けるジャーナリスト。「第17回 小学館ノンフィクション大賞優秀賞」「2011年ミズノスポーツライター賞」受賞。


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