Honda CB650R CBR650R

 
フレームは専用設計に、そしてボンネビルT120譲りの水冷SOHC4バルブのパラレルツインエンジンも専用のチューニングが施されている。足周りではSHOWA製フロントフォーク、オーリンズの2本ショックを使ったリアサスペンションもそうだ。ワイヤースポークのホイールはフロントに21インチと大径サイズを履いたことが大きなトピック。以前のストリートスクランブラーは19インチだった。そんな新しいスクランブラー1200にはこの「XC」と「XE」という2機種がある。

■文:濱矢文夫 ■撮影:富樫秀明
■協力:Triumph Motorcycles Japan

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ライダーの身長は170cm。上左の写真をクリックすると、片足つきの状態が見られます。

 
スクランブラー1200には2種類のモデルがある。

 XCは前後のサスペンションストロークが200mmで、XEのそれより50mmも増やした250mm。フロントフォークのインナーチューブ径はXCが45mm、XEが47mm。スイングアームも見るからに長さの違いがわかる。XEの方が32mm延長。これからもXEがダートをよりハードに走れる仕様だということがわかる。これにABSとトラクションコントロールに姿勢角センサーも使っており、より走りの状況に合わせた制御が加わる。

 オフロード走行性能を上げたXEよりXCはメーカー希望小売価格が14万2200円安い203万1900円。XEに比べXCはオンロードとオフロードの両方をこなすバランスを考えたデュアルパーパスという位置づけだろう。しかし、前後サスペンションストローク200mmというのはかなり立派な数値で、単純に「XCは基本オンロード向け」と言い切れない。クラシックなスタイルとディテールをした車体単体を写真で見るかぎりは、ボンネビルT120と一緒くらいのサイズなのかと思うかもしれないが、実際はシート、タンクの位置が高くてひと回り大きく見える。ボンネビルを乗用車とするならバスのような感覚。それでもXCはXEより確実に低い。ストリートスクランブラーとは車格も別物。

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トルクフルながらコントロールをイージーに感じさせる仕上がり。

 16L容量の丸い燃料タンクはアドベンチャーモデルのような横への張り出しはなく車体もスリムだから、乗ってしまえば大きさはほとんど気にならない。840mmのシート高は身長170cmで足がそれほど長くないライダー(私)には決して低くはないけれど、足がまっすぐ下に伸びる感覚で、つま先ながら両足がとどいて、片足ステップなら力が込められる母子球部分まで届く。ノスタルジックなリブが後に入った一体型シートにお尻を乗せると、前後サスペンションの沈み込みソフトな当たり。外から眺めた印象より乗ったほうが小さく感じる。じっくり乗って確かめるほど試乗時間がなく、JAIA試乗会場の大磯ロングビーチ駐車場に設けられた試乗コース中心の走行と前置きして、まず印象的だったのは力強いトルクである。

 クラッチを繋いだ動き出しからグイグイと押し出してくれる。そこからスロットルを開けていってもその力強さは続き、トルクはあるところが急激に出てくるものではなくよどみなく連続する感じ。4千500回転から5千回転くらいまで盛り上がり、そこを過ぎてリミットに向けて緩やかに弱くなっているけれど、印象としては全域でのフラット感がある。右手の動きに対してのレスポンスが良く回転上昇はスムーズ。ゆっくり進む場合でも神経質なところがほとんどなく、どんな速度、回転域からも鋭く、力強く、そしてイージーというパワーデリバリー。常に違和感を感じさせない滑らかさを維持しているのは好ましい。ROAD、RAIN、SPORT、OFFROAD、任意のセットができるRIDERという5つの走行モードがあり、スロットルレスポンス、ABS、トラクションコントロールの介入などが変わる。短い時間内で集中して走るために試せたのはROADとSPORTのみ。低回転域からレスポンシブルになるSPORTにしても飛ばして走るのを躊躇するような怖さはない。

 
これは名ばかりのスクランブラーではない。

 フロントに21インチホイールを採用したハンドリングは、倒し込みが軽く、そうしようと意識しなくてもスーッと車体がリーン。そこで自然にフロントからリアに荷重が移り、ぐっとリアサスペンションが入って、270°クランクの2気筒エンジンの高いトラクション性もあって、リアタイヤのグリップが横に逃げにくく前に前にと気持ちよくダッシュする。やや大きめの穏やかな旋回で、速度を出しての切り返しは素早いとは言えないけれど、曲がっているときの安定感もあり、路面状況の変化や、先が見えないストリートでのコーナーでは多くの人が乗りやすいという印象を持てるだろう。とはいえ、前後サスペンションはオフロード車的な柔らかさ(沈む速さ)とは違い初期から適度な腰があり225kgの車重で“よっこいしょ”という所作はない。Metzeler Tourance(チューブレス)タイヤはデュアルパーパスパターンながら程よくグリップして剛性感も問題なし。320mmローターに4ピストンのブレンボM50キャリパーの組み合わせを2つ設けたフロントブレーキは握っただけ効き、でも減速をコントロールしやすく高水準と言える。

 オフロード走行ができなかったのは何よりも残念だった。XCとXEは明らかな違いがあり、値段が高いXEの方が上位機種的という解釈ではなく、どんなところでもバランス良く走れるスタンダードのXCに、オフロード性能を大盛りにしたのがXEというのが正解だ。2台の棲み分けが難しいのではと思っていたけれど、それは杞憂だった。スクランブラーという名からイメージしがちな、ロードモデルに大きく軸足を置いて、スタイルを中心にしたデュアルパーパステイストを味わうものではない。もっとしっかり走りを作り込んで走る場所の守備範囲を広げた本格的な万能モデルとして楽しく遊べそうだ。

6段変速の270°クランクの水冷SOHC並列2気筒4バルブエンジンは、ボア×ストローク:97.6×80㎜のショートストローク。ボンネビルT120をベースに手が入り、90PS/7400rpmと、110N・m/3950rpmの高トルクを生み出す。ECUも専用のチューニングがされたもの。クレードルフレームも新設計された専用のものでボンネビルとは違う。ヘッドライトはDRL(デイタイムランニングライト)付のLED。ハンドルはテーパーバーを採用。 イグニッションはキーレス。ハンドルスイッチにはLEDバックライトがあり暗くなっても確認しやすくなっている。メーターはトライアンフの第2世代になった多機能TFTディスプレイに集約。 デジタルスピードメーター、デジタルタコメーター、トリップコンピュータ、ギアポジションインジケーター、燃料計、メンテナンスインジケーター、温度計、ライディングモードを表示。表示のパターンは12種類と豊富で、GoProと繋がりハンドルスイッチで制御できる機能も付いているそうだ。クルーズコントロールも標準。シート下にはUSB電源ソケットもある。Bluetoothで繋がったスマホなどのアプリで目的地やルートを選択すると、ディスプレイ上部に進む方向が出る ターンバイターンのナビシステムも備わる。XEはグリップヒーターが標準装備だがXCではオプション。燃料タンクのフィラーキャップはアルミ素材。
前後のホイールはワイヤースポークながらチューブレス。フロントは21インチ外径で、90/90-21というタイヤサイズ。それならもっとオフロードよりのタイヤも選べる。ダブルのディスクブレーキは、ラジアルマウントしたモノブロックのブレンボ M50 4ピストンキャリパー+320mm径のディスクローター。XCはインナーチューブ径がXEより2mm小さい45mmのSHOWA製カートリッジ式アジャスタブルアップサイドダウンフォーク。ホイールトラベルは前後ともに200mm。小ぶりでクラシカルなデザインのフェンダーはアルミ製。ABSは標準で、リアだけオフができる。アルミスイングアームの長さは547mm(XEは579mm)。モノショックではなく2本ショックで、オーリンズのフルアジャスタブルピギーバックタイプのユニット。これはツインスプリング。レイダウンがしっかり入っておりショックユニット自体の性能も含めプログレッシブ効果を得られやすいレイアウトだろう。リアタイヤは150/50 R17。タイヤはMETZELER のデュアルパーパスタイヤ、TOURANCE。リアブレーキは2ピストンのブレンボキャリパーに255mm径ディスクローター。
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●SCRAMBLER 1200XC 主要諸元

■エンジン:水冷SOHC並列2気筒 8バルブ270°クランク ■排気量:1200cc ■ボア×ストローク:97.6×80mm ■圧縮比:11.0:1 ■最高出力:66.2kW(90ps) /7,400rpm ■最大トルク:110Nm/3,950rpm ■ミッション:6速 ■車両重量:225kg ■シート高:840mm(■ホイールベース:1,594mm ■キャスター角:25.8° ■トレール:121mm ■タイヤ:前90/90-21、後150/70 R17 ■ブレーキ:前Brembo製 320mm径ツインディスク、Brembo製 M50 4ピストンラジアルモノブロックキャリパー、ABS、後255mm径シングルディスク、Brembo製 2ピストンフローティングキャリパー、ABS ■燃料タンク容量:16リットル ■メーカー希望小売価格:2,031,900円。



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