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■試乗・文:松井 勉 
■協力:BMW Japan – Motorrad 

BMWが考える速さ。それは長い間、長距離を快適に信頼性をもって駆け抜ける。そんなタフさを指していた。だから80年代、世界がパワーウォーズに浮かれても、100馬力以上、バイクには不要だと公言し我が道を行く姿勢を貫いた。しかし、90年代を過ごし、21世紀になるや、自らの主張より拡大するユーザーの声に応えたストレートなプロダクトを送り出すよう変化する。その中の一つこそ、2009年に登場したS1000RRである。日本のメーカーを研究し、並々ならぬ走りを身につけたそれは、いわばいきなりデビューウインを飾るような完成度で驚きをもって市場に歓迎された。あれから10年。BMWはS1000RRの第二章を書き下ろし、我々に披露した。軽く、速く、乗りやすく。ありきたりの言葉の中に込められた技術、もたらされた性能、そして楽しさ。それがどんなものなのか。ポルトガルはエストリルで試したのである。

 
S1000RRとの思い出。

 BMWがS1000RRを販売開始した2010年シーズン、スーパースポーツを巡る覇権は、日本の手から明らかに離れつつあった。ドゥカティ、アプリリア、KTM、そしてBMW。それまでのホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキという4強は海外勢の勢いに押され陰りが見えていた。
 S1000RRに乗ったときそれを確信したものだ。その速さと乗りやすさ。その印象は、GSX-R1000をより洗練させたような乗り味で、乗り手に「今日は上手く乗れている!」という思いと、パワフルですごい。だけど、安心して走れる電子制御技術の双方を一度に見せてくれた。

 最初の一台にして、すでにすごい。その後もS1000RRは、すくすくと進化を重ね、そのパワフルさ、乗りやすさに磨きをかけていった。筆者も、BMWの専門誌の仕事をする関係で、乗る機会が多く、自分の中でもスーパーバイク系の基準となった。特に、新製品のタイヤテストなど、しっかりとした電子制御が頼もしいS1000RR以外、乗りたくないと思ったほどだ。そのテスト時期はきまって1月から2月。真冬で路温も低いサーキットだったりすると、ABSやトラクションコントールを装備しないバイクには正直乗りたくないと思ったほど。雨にでもたたられたらなおさらだ。
 なにより並列4気筒という普遍的なレイアウトが親しみやすく、懐深い乗り味も抜群だった。その出会いから10年近くが経過した。

 そのS1000RRが変わる。試乗会の会場はポルトガルのエストリルサーキット。そのピットガレージで行われたプレゼンテーションは興味深いものだった。
『EVEN LIGHTER, FASTER, AND EASIER TO CONTROL.』
軽く、速く、そして乗りやすく。目標値は先代より10㎏軽く、ライバルよりサーキットでラップ1秒速い、というもの。それを乗りやすい車体で実現する。開発が始まったのは2015年。まさに現行のヤマハYZF-R1で性能的にも価格的にも日本製の枠を飛び越え、衝撃を与えた頃だ。

 具体的に説明しよう。新型の車体は2018年モデルの208㎏から197㎏へ-11㎏軽量化されている。さらにカーボンホイールやカーボンパーツを装着するMパッケージを選べば、193.5㎏と、-14.5kgも減量されているのだ。
エンジンパワーは、199HPから207HPへ。しかし、それはただの高回転高出力のピーキーなエンジンではない。昨年発表された水平対向モデル同様、シフトカムという可変バルブタイミング機構を搭載してきたのだ。

 シャーシも大胆な変更を加えている。メインフレームの形状もライディングポジション優先で細身に絞り込んだだけではない。開発者によれば、剛性面という点からみれば先代のようなコンベンショナルなツインスパー形状が一つの理想だとしながらも、ABSの小型化や6軸センサーの小型化など、搭載するあらゆるものが軽量コンパクトになった結果、慣性マスの低減がこうしたデザインでのパッケージでベストを探求できたという。
 プロリンクタイプからフルフローターとしたリアサス周りも同様だ。リアサスユニットがメインフレームに近いほうが重心という点では理想だ。
 しかし、先代のスイングアームを見るまでもなく、ピボットに近い位置にスイングアームのブレースにあるアルミパネルで覆われたトンネンル形状の中にレイアウトした結果、リアサスはエンジン熱の影響を常に受け、限界走行では熱ダレの影響も無視できなかったという。

 なにより、ハイパフォーマンスを意味したHPではなく、この世代からBMWの四輪同様、スペシャルモデルにMの名を冠してゆくという新たな方向も打ち出された。どうやら、BMWの関係筋の話を聞いていると、このSのようなスポーティーモデルばかりか、多くのバイクにM仕様のようなもの、あるいは、HP4RACEのように、カーボン一体型フレームやカーボンホイールを纏ったスペシャルモデル、とまではいかなくても、セダン、クーペ、SUVにまで用意されているMのようにエンジン、シャーシ、内外装に至るまで特別なカタログモデルが居並ぶ四輪のような特別感すら展開されそうな予感すらする。

ライダーの身長は183cm。左右の写真をクリックすると足下げ時の状態が見られます。

 
雨のエストリル。

 期待のS1000RRのテスト当日、予報は雨。実際に雨だったのである。207馬力のパワーを、濡れた初走行のコースでトライするのはあまりにも酷だ。

 最初のセッションは標準装備タイヤの一つ、ブリヂストンのS21を履いた車両で慣熟走行することになった。路面はセミウエット。雨はやんでいる。このまま乾けば、午後にはスリックタイヤにまで履き替え、搭載されたライディングモードと、国内には標準装備されるライディングモードPROに含まれる多彩なセッティングにトライできるハズだ。

 これはサーキット用モードといえるもので、トラクションコントロール、ABS、アンチウイリー、エンジン特性、エンジンブレーキなどの効き具合を細かく調整し、自分と路面状況に合わせて走る、というもの。新型で可能になったこうしたパーソナライズ、先代ではレーシングキットに含まれたソフトをインストールしたラップトップから行うようなものまで含まれるという。経験者の話では、新型でできることは、コンピューターのモニターで行っていたセッティングの70%をカバーするのではないか、とのこと。TFTモニターとハンドルスイッチからそれを構築できるという。

 ちなみに残り30%はと聞くと、各ギアで、どの回転数時点のパワーカーブなど、サーキットのどのカーブに合わせ込む相当細かなセッティングであり、先代でもその設定をするのが絶対条件では無かった部分だという。

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かつてMotoGPも行われていたエストリルサーキット。そのピットレーンにたたずむS1000RR。ミラー、テールランプ周りを外しただけでレーサーの如きオーラをまき散らす。

 
ライディングモードはレイン一択。

 とにかく、デフォルトで用意されたライディングモードは4つ。レイン、ロード、ダイナミック、レースだ。それにライディングモードPROで選択可能なRACE1、2、3の三つのパーソナライズエリアがあることだけを頭に入れ、レインモード一択で走り出す。

 ちなみに、ロードとダイナミックでは1速、2速で。レインでは1速、2速、3速でトルクを制御したエンジンマネージメントになる。また、サーキット用のレースモードでもABSの全キャンセルにはならず、前後ともミニマムに介入する。どうしてもオフにしたい、という場合、テールランプやナンバープレートをマウンとするステーごと取り外し、その上でDCTボタンを長押しすればABSはキャンセルされる。つまり、公道では事実上キャンセルできません、ということだ。また、ライディングモードPROに含まれるパーソナライズエリアに入るには、設定前にモニターにあるRace trackというダイアログにチェックを入れるなど、自己責任ですよ、確認から始まるのも、今風だ。

 話はそれたがとにかく走り出す。ピットレーンエンドから菅生のように、1コーナー内側をぐるりと180度回りメイントラックに合流する。マイルドなのだろうが、作為的なマイルドさはあまりない。ガス欠のような変なつまみ方ではない。
 2周目から先導のペースが上がる。しかし、アクセルを開けていけば速度は乗るし、何より、トルク感たっぷりで5000~6000rpm前後でも爽快な加速を見せる。999㏄というより1200ccぐらいありそうな力感だ。これがシフトカム効果だろう。

 セッション後半、コースになれてきた。長いストレートエンドに控える1コーナーは筑波の1コーナー的だし、3コーナーと4コーナーは岡山のダブルヘアピン風だ。気持ちよく速度が乗る裏ストレートにも、くの字のカーブがあって、全開ではいけない。その先にはもてぎの3、4コーナーのような左があって、上り下りのある短いストレートの先には減速しながら右に駆け下り、そのまま短い直線と出口は広いが、その先に菅生のモーターサイクルシケインのようなタイトなセクションが待ち構えるから、道幅一杯には左に脱出できない……。極めつけは最終コーナーで、これがまたクリップが解らない筑波の最終をもっと長くしたような感じなのだ。

 エストリルは日本のサーキットのややこしいセクションで構成されたかのようなコースだ。

 そこをS1000RRは抜群の乗りやすさを見せ駆け抜ける。スロットルワークにギクシャクすることもないし、タイヤの接地感が薄れることもない。しっかり減衰はきいているが、スプリングだけが強くて荷重を載せると滑りそうで恐い、ということが無いのだ。表現が変だが、ガチっとしたというよりも、モワっとした柔らかい印象で路面を掴む。

 旋回性はコーナーのアプローチからクリップを超え立ち上がるまで一環して想像通りに走れるし、アクセルを開けていってもフラットなトルク特性ゆえ開度初期がだるくて、あるところから突然カーンと盛り上がる、ということもない。

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次こそは、を打ち砕く雨脚。

 これでもう少し路面が乾けば、その印象はさらに良くなるかもしれない。しかし、別のグループが走行している時から冷たい風が吹き、雲が雨を運んできた。オーガナイズ側は、S21からレーシングレインに履き替える決断をする。

 次もレインモード一択。それが結局最後のスティントまで続くことになる。

 先を急ごう。最終スティントでの印象だ。この最終だけ新品未走行のレインタイヤを履いた車両が回ってきた。最初の数周、タイヤの様子を見るうちに一緒にスタートしたグループは見えなくなり、一人旅を楽しむ。時折、アスファルトの上が煙るほどの雨量になる。大きくはないが、コースの低い部分には水たまりが。毎週新鮮な気分でビビリミッターが作動する。レーシングレインのグリップの良さと、素直でわかりやすいハンドリング、そして扱いやすいエンジン特性に助けられ、エストリルを攻めてみる。

 カーブこそ荷重を載せてぐいぐい曲がる感じにまではなれないが、ストーレトでは207馬力を堪能。「とにかく滑るから最終コーナーは無理をするな」との忠告をまもり、ジワジワ立ち上がりながらも、1コーナーのブレーキングポイントに余裕を持ちながらも280km/h近くまで一直線に速度は伸びる。250m手前から全制動をかけるが、そのときのフロントフォークの受け止め方、リアの接地感の薄れなさは見事。毎週、あと30メートルは詰められた、と思うのだが、レザースーツ越しにも腕、肩に当たる雨粒が痛いほどの雨量。無理は禁物、と思いながらも、このコンディションでの扱いやすさに感謝した。

 実のところ、雨のエストリルで解ったのは抜群の扱いやすさと、電子制御の介入が自然でとても滑らかだったこと、立ち上がり加速でも、DTC作動を知らせるランプがTFTモニターの右側で素早く幾度も点滅することぐらい。それでいて加速感はしっかりある。

 同様に、シフトカムがどのタイミングでローからハイに切り替わったのか、という部分もを察知することはできなかった。R1250GSをテストしたとき同様だ。シームレスなエンジン特性で、想像どおりにパワーを引き出せる。

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軽く、速く、乗りやすい。それは明らかだった。

 モードでの差異やパーソナライズしたらどうなる、という本来重要なテストテーマはまるでできなかったエストリルでの1日だった。しかし、軽く、速く、乗りやすいという開発テーマは間違いなく伝わった。キャスターがたち、トレール量が短くなり、それでライディングポジションがアップライトになった。そう聞いてフロント周りがキョロキョロする運動性方向になったのだろうか、と思った。しかしそれは杞憂だった。先代同様、不要な軽快さはなく、旋回中なら旋回Gで生まれた力をしっかりと路面に伝えるようなシャーシ、ドンツキが無いのに開けたら欲しいだけのトルクを右手通りに後輪に伝えてくれるエンジン。
 ラップタイム向上に、ライダーが気持ちよく走れるコト、という部分を知っている人が味付けをしたんだな、と解るプロダクトだった。
 だからこそまたいつかドライでしっかりと試したい。雨であれだけ楽しめたのだから。
 
(試乗・文:松井 勉)
 

メインフレームの形状、スイングアームの形状など、シャーシ周りのデザインも一新。先代モデルと比較して-11.5%にあたる1310gを軽量化されたフレームボディー。エルゴノミクスの改善のため、膝がタンクを挟む部分では幅を13~30mm絞り込みながら、応力が掛かる部分を深く絞るなどパッケージベストを目指している。形状的にメインフレームは、先代がステアリングヘッドからスイングアームピボットプレート付近までタンク下を直線的に通っていたのに対し、新型では「くの字」に折り曲げ、低い位置を通しているのが特徴。リアサブフレームはアルミチューブ製。4本のボルトでメインフレームに結合されている。スイングアームも、メインビーム上側だったブレースを下部に移動。全長では606.5mmと2.5mm伸ばしながら、重量は-300gを実現している。フロントフォークのサイズもφ46mm→φ45mmとするなどしてサスペンションでも-450g、ABSユニットは見た目で先代用よりも半分近くのサイズに小型化し-515gを達成。標準モデルのホイールも-1100gなど軽量化が施され、シャーシ全体で2018年モデル比-5100gを削り取っている。
φ220mmのディスクプレートとシングルピストンキャリパーを持つリアブレーキ周り。写真のMパッケージ車には前後カーボンホイールが装着される。2017年に登場して話題になったHP4 RACEで採用されたカーボンホイールと同様の性能を持つという。
LEDウインカーを内蔵するミラーとなった新型S1000RR。着脱するだけでストリートにもサーキットにも対応する。取り外したフロントマスクの印象は走行時の写真で。
リアシート下から生えるナンバープレートホルダーとテールランプ周り。ウインカーに内蔵されたテールランプ、ブレーキランプはコンパクトながら輝度が高く被視認性の高そうなものだった。着脱後の処理も完璧。テールエンドの造形に先代のテールランプを思わせるカタチが浮き出ている。
BMWモトラッドのデザインアイコンでもあった左右非対称ヘッドライトはシンメトリーになった。LED光源のコンパクトなイメージに。ライト内部、下側に光るチューブ状のデイライトが輪郭をキリっと見せる。中央はエアインテーク。カウルサイドから見ると、ライト下部から切れ込んだラインでアッパーとロウアーにカウルが分かれている手法はこれまで通り。
エンジンの排気量は999㏄、ボア×ストロークは80.0mm×49.7mmで不変。コンロッド全長は99mmと4mm短縮化された。その重量は先代比4%の軽量化。圧縮比は2018年モデルの13:1から新型では13.3:1に上昇。吸排気バルブはステム径5mmのチタン製を採用。吸気側のステムは中空パイプとなる。カムシャフトの回転方向に対し、低抵抗なフィンガーフォロアータイプのロッカーアームはmDLCコーティングが施され-3g軽量化され8gへ。クランクシャフトは全長を12mm短縮、1800gも軽量化が施された。プライマリーギアを介してスターターモーターが駆動するなどシャフト上からギアを省いたことも大きく貢献。冷却のため、ピストンスカートを冷却するオイルラインを設けている。最大のトピックは、BMW ShiftCamテクノロジーによる可変バルブタイミング機構の導入だ。水平対向エンジン+シフトカムでは重量が5キロほど増加したが、S1000RRの場合、エンジン単体で4㎏減量。インテークにはこれまで通り中速回転域まではロング、高回転ではショートファンネルになる可変インテークとダブルインジェクターを装備する。排気系は軽量化が命題の新型に合わせてあらたにデザインされ、1300gの軽量化を達成している。
カウルの奥に湾曲したラジエターが収まる。
ステップベグもよりブーツのソールで掴みやすい踏面となっている。シフト側は簡単に正チェン、逆チェンを入れ替えられるようリンクがシーソータイプになった。両ステップに採用されるヒールガードは、カーボンと樹脂を使ったマテリアルのもの。内部にファイバーを混入させた樹脂製で粘りがある素材だという。FIMなどのレースレギュレーションで装着が義務化されているケースやケースカバーのプロテクターと似た素材に見えた。
DDC(ダイナミックダンピングコントロール)仕様のリアサスペンション。手前に見えるストロークセンサーはECUに送る作動状況をモニターするためのもの。DDCは減衰圧バルブを適宜変更するが、イニシャルプリロードはマニュアルで変更する。新型ではボトムリンクからアッパーリンク方式へと変更になった。その呼び名もプロ・リンクからフル・フローター・プロという名称に。その最大のメリットは、スイングアームピボットプレート上側にショックユニットのアッパーマウントがあった先代よりも、エンジンから距離を離してリアサスユニットをマウントできること。熱の影響を受けにくい。また、ボトムリンクの場合、スイングアームのアクスルシャフト部分での動き(ストローク)が、リンクを介してショックユニットを縮めるのに対し、フル・フローター・プロではスイングアームに直接ショックユニットのボトムマウントがあり、アッパーマウントもリンクで押されるため、伸縮する動きが掛かることになる。クッションストロークは先代の72mmから85mmへとおよそ18%ストローク量を増やし、圧縮方法が異なることから、スプリングレートも85N/mmから60N/mmへとソフトなものへ。スイングアームを入れたレバー比は2018年モデルまでが1:1.9、新型は1:1.6とよりリニアになっている。狙ったのは、アクスルシャフト位置のストローク量が2018年モデルと同量ながら、ショックユニットのストローク量が増やせたこと。これで作動初期からより適切な減衰圧を生み出せるという。また、ショックユニットのメインピストン径をφ46mmとすることで作動時のフリクションの低減も実現。
DDCを採用したMパッケージ車のフロントフォークトップ。先代はザックス製だったが、今作はマルゾッキ製に。フォークのインナーチューブは2018年モデルまでのφ46mmからφ45mmへと細身へ。これはインナーチューブ内側の形状が1.5mm細身になったことで実現できたという。DDC仕様は左側にダンパー、右にスプリングというセパレートファンクションタイプ。プリロード調整は右側で行う。アウターチューブの色はDDC仕様がブロンズ。マニュアルフルアジャスタブルタイプはブラックとなる。 ハンドルバーも緩やかな絞り角で幅広となった。18年モデルとの比較では、ハンドルバーの後退角が36°→30°、オフセットは44°→36.5°、バーエンドのウエイトを含む全幅は707mm→737mmへとなっている。 Mパッケージ車、レースパッケージ車にはスイングアームピボットのジオメトリーを可変させることが可能なアジャスターが標準装備される。アジャストは2段階。標準位置を0mmとすると、-2mm、-4mmと偏心カム方式でアクスル位置を変更して旋回特性をトラックやコンディション、ライダーの好みに合わせることができる。
φ220mm径のディスクプレートとシングルピストンキャリパーを持つリアブレーキ周り。写真のMパッケージ車には前後カーボンホイールが装着される。2017年に登場して話題になったHP4 RACEで採用されたカーボンホイールと同様の性能を持つという。 フロントブレーキはヘイズ製対向4ピストンキャリパーとφ320mm径のブレンボ製ディスクプレートを装備。標準車が肉厚4.5mmなのに対し、Mパッケージ、レースパッケージは肉厚5mmのプレートを装備する。また、標準モデルがインナーローターレスのホイールスポークへの5点マウントなのに対し、レースパッケージ、Mパッケージでは写真のようなインナーローターに9箇所でマウントされる方式をとる。よりハードな走行に備えヒートマスに余裕をもたせた設定だ。レースパッケージではマルケジーニ製鍛造アルミホイールを使う。ちなみにタイヤが無い状態でホイール+プレートの重量を比較すると、標準車が先代よりも-1584gの5609g、レースパッケージの鍛造アルミ+インナーローター付き5mm厚プレートのコンビネーションで5894g、Mパッケージのカーボンホイールで5264gとなる。重量的には肉厚かつインナープレートの分、レースパッケージ車のホイールが重くなるが、ディスクプレートを固定する位置がハブに6本のボルトで締結するため、走行中の回転慣性マスは標準車のホイールスポークに装着するよりも軽減され運動性は高いそうだ。
インストルメントパネルは他のBMW同様6.5インチのTFTカラーモニターが採用された。メーター類の表現、ライディングモードの切り替え、各種セッティングなどはS1000RR専用に。インターフェイスはハンドル左側にあるスイッチ、マルチコントローラーから直感的に可能になっている。また、モードによって表示も変化。好みに合わせた他表示を選択することもできる。写真のパネルでレッドラインが低い回転になっているのはエンジン始動前で水温が低いから。適正な温度に暖機されると通常の位置までレッドゾーンは上がる。
S1000RR用にモディファイされたスイッチ周り。MENUボタンを下方向に押すとメーターパネル表示が変わり、各種モード設定などの画面に。画面の階層はMENUボタン、その画面での選択、決定はグリップ部に着くマルチコントローラーで回す、押し込む、でマウスのように選択、決定ができる。他のBMWではABSとASCのスイッチがある所にDTC、ダイナミック・トラクション・コントロールを操作する「+」「-」で効き具合を調整できるようになっている。先代同様、日本仕様にはクルーズコントロールも装備される。
エンジン下部にあるエキゾーストコレクターボックスが主要なサイレンサーとしての機能を果たすS1000RR。通常の位置にあるサイレンサーは、いわばサブサイレンサーとして機能する。ステンレス製の質実剛健な作り。 先代同様、フロントブレーキのマスターシリンダーにはニッシン製を採用。ABSが作動したときのタッチも含め上質。 新型エンジンのカットモデル。カム駆動はカムチェーンが回すアイドルギアでカムを回すタイプ。先代同様ヘッド周りの小型化というメリットを得ている。
インテーク側から見たカム。ヘッド上に並ぶ黒いカバー2つが可変バルブタイミングのローカムとハイカムを入れ替えるアクチュエター。 そしてこれはシリンダーヘッドを真上から見た状態。インテーク側のカムの上にあるのがアクチュエーター。右側だけ乗っている。インテークカムはカムギアで回るセレーションシャフトの上に、そのシャフト上をスラスト方向にスライドする別体カムを備える二重構造。スライドすることでロー、ハイのカムプロファイルの違うカムに入れ替わる。アクセル開度などライダーの操作に合わせて適宜その変換は行われる。9000回転以上ではハイカム側にシフト。また、エンジン始動時はハイカム側として吸気吸入量を確保しているという。
インテークカムアッセンブリーの写真。こう見ると普通のカムだが、右の写真を見ると、セレーションの切られたベースシャフトの上に途中で分かれた2本のカムが装着されているのがわかる。可変させるのは圧縮上死点の時。4気筒を一本ではまかなえないため、左右2気筒に分けて可変させている。
カムホルダー部のアップ写真。2枚でカムの位置が左右にスライドしているのが解る。スライド位置を固定するのは、カムのベースシャフトの右側に見える穴にロック用のボールを入れておく仕組み。ラチェットレンチにソケットを入れる時、抜け止めに使われる構造と似ている。カム山の右横に見えるグレーのプレートの裏にその仕組みがあるという。


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