Honda CB650R CBR650R

 
「ナナハン」という、排気量を指す言葉以上に「大型バイクの代名詞」のような言葉があるが、リッターマシンが国内で解禁になってからかなりの時間が経ったせいか、その排気量帯は忘れられかけていたといえるだろう。かつての「ナナハン」に代わるジャストなサイズ。ホンダが650cc帯で本気を出してきた。

■文:ノア セレン ■撮影:富樫秀明
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン 

 
やっと認知されてきたか……?

 ホンダCBと言えばナナハン。最初のフォアからF、CBX、CBRエアロ、そして最近まで教習車でも使われていたRC42型CB750とその血統は続いてきた。しかしより大きな排気量帯が一般化したため、実は現実的なジャストサイズとも言えたこの「ナナハンクラス」が(NCシリーズはあるが、4気筒では)しばらく途絶えていた。
 
 そんな中でホンダはCB650Fというバイクを、フルカウル付のCBR650Fと共に2014年に投入。かつて主に欧州で大変な人気を誇ったホーネットの後継機種という位置づけで彼の地では好意的に受け入れられたものの、国内においてはもう一つ650ccという排気量帯への認知が低かったのか、はたまた話題性の高いライバル車種が多く登場した時期と重なったためか、目立つ存在とはならなかったのが実状だった。
 しかしそのCB650Fは次世代のミドルクラスとして着実に進化を重ねた。2017年にはパワーアップを始めとした性能の底上げをすると共に、LEDヘッドライトを採用するなどしてモデルチェンジ。少しずつ、しかし確実に支持層を広げていった。そして今回の大幅なモデルチェンジである。上位機種CB1000Rがけん引役となり125、250と展開されてきた「ネオスポーツカフェ」イメージのニューCBシリーズの一環として、ネイキッドバージョンにも初めて「R」がついて大きく脱皮を果たしたのだ。
 フルカウルのCBR650Rも同時にモデルチェンジしたわけだが、この二台、「ちょっとマイナーな中間排気量車」というこれまでのイメージとはガラリと変わり、250と1000の間を埋める大切なミドルクラスという位置づけとしての存在感を放つもの。その作り込みや情熱に、かつての「ナナハン」が戻ってきたような熱気を感じる。ついに国内でも650ccクラスが認知されてきたのだろう。ネイキッド/フルカウル、共に「R」をつけると同時に本気で国内投入してきた、というイメージだ。

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新たなスタイルと、それをバックアップする高性能。

 トラディショナルさと新しさの融合を謳う「ネオスポーツカフェ」スタイルとなった新型CB650「R」と、CBRシリーズとしてスポーティなイメージを強めたCBR650Rの二台だが、今回は撮影会ということで実際に乗るのはまだこれからだ。しかし現車を見た印象と共に、各マシンのトピックを見てみよう。
 
 CB650Rの方は、エンジンやフレームなど旧型を踏襲する部分も多いにもかかわらず、完全なるニューモデルかのような進化だ。もちろん、最初に目につくのはCB1000Rと共通イメージとなった丸型のLEDヘッドライトと倒立フォークといったフロント周りの変更だろう。併せてブレーキキャリパーもかつてのピンスライド式からラジアルマウントの対向4ポッドになるなど、視覚的にアップグレードを実感させてくれる。
 エンジンについてはCB400FOURを連想させる特徴的な4in1エキパイのデザインはそのままに、動弁系やピストンの形状変更などにより5馬力のパワーアップを果たし95馬力に、さらに味付けも公道におけるスポーツバイクならではの興奮と充実感を満喫できるドラマチックな出力特性を追求。特に中回転域から高回転域の出力特性についてはレスポンスとフケ上がりを向上させ「官能的な直4フィール」を追求しているそうだ。事実、静止状態でもエンジンをかけてスロットルをあおればそのレスポンスがシャープになっていることが感じられる。シャープなだけではなく、どこか緻密さのようなものも向上しているような印象もあるため、ますます試乗が楽しみである。

 
「全てのお客様が、モーターサイクルと共に楽しめるように」と開発者

 撮影会場には開発者が同席し、新型に対するお話を伺えた。写真のお二方はプロジェクトリーダーの筒井則吉さんと吉田昌弘さん。実はCB650Fのファンであり、LEDヘッドライトを採用した先代モデルを1年間乗っていた筆者が新型について聞いた。

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125、250、そして1000と展開されてきたネオスポーツカフェシリーズの一員としてモデルチェンジしたCB650R。これまでのオールラウンダー的なCB650Fから「R」になったことでロードスターイメージを追求。伝統を感じさせつつ、モダンで活発なイメージとなっている。

 発表を聞き、実車を見て感じた大きなことは、ネイキッドの方でもかなりスポーティな変化となった事。
「そうなんです。今回、車名の最後にRがつきました。かつてのFはよりオールラウンドな、といったコンセプトもあったのですが、今回のCB650Rは『都市のライフスタイルに興奮を』という狙いでやっています。かつてのモデルが一定の汎用性も追及していたのに対し、新型では日帰りのショートツーリングや、短い距離での濃密な時間を意識し、さらなる運動性能の向上や上質なライディングフィール、官能的な直4フィール、そして新世代CBシリーズとしての独自性を表現しています」
 なるほど、650ccという排気量帯であること、またネイキッドであるがゆえ、先代モデルまでの流れ同様、勝手にF的汎用性をもったツーリングバイクと認識してしまっていたが、そもそも車名が変わっていたのだ。これは「R」であり、「ロードスター」なのだという。
「日本国内でも同様ですが、大きな市場であるヨーロッパもまたライダーは高年齢化しています。そうするとかつてのようにたくさんの荷物を積んで長距離のツーリングに行くシチュエーションや、タンデムで距離を走るといったことが減ってくるようです。またバイクに乗るための時間を捻出するのも難しくなってくるでしょう。そうすると短い時間でいかに濃密なバイク体験ができるかというのが大切になってくると考えます」
 
 どこかで聞いたことのある言葉である。……CB1000R試乗記で筆者が書いたことそのままではないか! (http://psp-traumland.info/?p=154429
 そうなのである。大型バイクは趣味性がますます高まっている分野。ある程度のオールラウンドさも大切だが、乗ってすぐに充実感を得ることも大切になってきている。かつてのナナハンや、先代のCB650Fとは、狙っている客層が変化してきているのだ。
「特にエンジンはかなりエキサイティングになっています! スロットルレスポンスを高めたことでワインディングではキビキビと走らせるのが楽しいですよ! フケ上がり様や直4らしい回りっぷりを楽しんでほしいですね」
 実際の数値上の性能だけでなく、より前傾となったライディングポジションや、ライダーがよりエギゾーストノートを楽しめるよう排気口を上に向けるなど、官能的な経験も得られるように細部も見直された新型CB。コンセプトはかなり変わったともいえるが、ファンとして試乗が待ち遠しい。

先代から大きく印象を変えてくれるのはこのフロントマスクだろう。兄弟車種同様にLEDの丸ライトを採用。先代はかなりスラントしたミニマムなヘッドライトで高速道路が辛かったが、このライトを採用する1000がそうであるように、ネイキッドにしては防風性に期待できる。 倒立フォーク及びラジアルマウントキャリパーも注目の変更点。さらにブレーキパッド材質も変更し入力に対してリニアな減速フィールを追求している。φ310mmのフローティングディスクは新設計。当然ABSも装備する。
レスポンスやフケ上がりを追求しチューニングしたエンジンは、5馬力のパワー向上も果たしている。同排気量帯のライバル勢はツインが多いことからも、ピーク回転にかけて谷のない上昇フィールなど「直4らしさ」を追求している。より高回転仕様とするためにはカムプロフィールを変更し、それに伴いバルブスプリングやカムチェーンも最適化。ピストンも新形状とするほか、イリジウムプラグも新たに標準装備。より明確な走りのキャラクターを追求している。 オプションではクイックシフターも用意する。
リア周りは従来型を踏襲。アルミのスイングアームに5.5インチホイール/180サイズのタイヤを装着。ブレーキはコントロール性を重視したピンスライド式1ポッドタイプ。撮影車両はメッツラーを標準装備していた。 ハンドル位置が下がり、またステップ位置も若干上がったことでよりスポーティなライディングポジションとなっている。メインキーをタンク前方に移動したことでマスの集中も進めている。筆者が常々疑問視し問題提起してきた、ホーンスイッチとウインカースイッチの位置関係(ホーンが上、ウインカーが下)は残念ながらそのままだ。燃料タンク容量は17リットルから15リットルへと減らされた。
CB1000Rの経験からすると、見た目以上に快適であるはずの前後分割式シート。タンデムシート横の張り出しはグリップになっていて、取り回し時に重宝する。 テールライトはCB1000Rと同様のデザインになり関連性をアピール。リアフェンダーやナンバーホルダーは1000のようにスイングアーム付けではなく125や250同様にテールから伸びるもの。ヘルメットホルダーはタンデムシートを外してワイヤーでひっかけるタイプ。 マフラー形状は先代のイメージを引き継ぎつつもCBR1000RRのように車体に沿ったデザインにマイナーチェンジ。外から見ると分かりにくいが、排気口の出口が先代モデルのように水平方向ではなく、35.4°上方に向けられており、ライダーに積極的に直4の排気音を聞かせようというアプローチ。消音性能は維持しながら、中低音域の音圧を上昇させているとか。
リアサスは従来通りリンク機構を持たないタイプだが、スイングアームに接合する所には新たにピロボールを採用して作動性を向上。路面に対する車体追従性能を追求した。 CB1000Rと同様のメーターは近年のホンダ車で増加中のシンプルでカッコいいもの。ハンドルはファットバーとすることでロードスター感を演出。 カラー展開は黒・赤・銀の3種類。タンクとタンク前方のカバーのみの違いで、フレームやホイール等は全て共通である。
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これまでのオールラウンドスポーツ的なイメージから、CBR1000RRと共通イメージのカウルを新採用したことで一気に「スーパースポーツ感」が増したCBR650R。ハンドル位置が低くなり、また倒立フォークを採用したこともあり、フロントに力が凝縮している印象が強まったように思う。

 
「コンパクト&アグレッシブ」な新型CBR

 一方でフルカウルをまとったCBRだが、こちらもエンジンや足周りの変更はCB650Rと同様だ。しかしより積極的なライディングポジションの採用や、CBR1000RRなどで培ってきた技術を投入した新型フルカウルにより、性能向上を前面に押し出しワインディングでの更なる充実感をアピールする。
 特にフロントマスクはCBR1000RRと共通イメージのLEDデュアルヘッドライトを採用しCBRファミリーの一員であることを強烈にアピールすると同時に、専用のツインラムエアダクトの採用や軽快なハンドリングを実現するコンパクトな専用カウルとしている。
 スペック上はCB650Rと同様となるが、ラムエアの設定やECUのセッティングにより、より高回転な特性を持たせているという。撮影現場にはCBR1000RRやCBR250RRも用意されていたが、その間を埋めるCBR600RRが役目を終えて寂しくなっていたミドルクラスを、今回のモデルチェンジにより(Rの数が一つ減ったものの)活性化してくれる手応えを感じさせてくれる存在感だった。
「もちろん十分以上に速いですが、1000に比べれば使い切れるパッケージとも言えるでしょう。積極的に楽しんでほしいですね!」という言葉はCB650RにもCBR650Rにも当てはまるもの。これだけ力の入ったモデルチェンジなのだから市場の注目度も高く、先の東京モーターサイクルショーにおいてもホンダブースではひっきりなしに跨る人たちが見られたのだった。
 
(文:ノア セレン)
 

CBR1000RRの技術を投入し、スポーツ走行時の防風性と共に機動力も追及した新型カウル。左右の切れ上がったLEDデュアルヘッドライト、また幾層にも折り重なるようなカウル造形などが未来的である。このカウルはエンジンの熱をライダーに伝えないなど、快適性能も追及したもの。 エンジンはエアクリーナーボックスにいたるまでのラムエアシステム及びECUの設定以外はCB650Rと共通、よりスポーティな味付けになっているというが、スペックの数値上は同様だ。スポーツモデルでありながら、カウルですべてを覆ってしまうのではなくエンジンを見せている所が新しい。
タンク周りもCB650Rと同様。容量は15リットル。 倒立フォークやラジアルマウントキャリパーも、カウルに囲まれたスタイリングによりさらに凝縮感が高まっているがCB650Rと同じアップグレードだ。こちらにはダンロップタイヤが標準装備。 カウルと同じ面でサイレンサーカバーに繋がるため、CBR1000RRのような一体感が感じられる。
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新型CB/CBRシリーズの開発責任者、筒井則吉さん(左)と吉田昌弘さん。筒井さんは先代のCB1000Rや海外向けCBR500Rシリーズなどを担当してきた。現在の愛車は自身も開発に携わったCBF1000F(レア!)。吉田さんは初代CB650F開発にも携わっており「あのバイクは『ママチャリバイク』という裏コンセプトがあったんですよ。気軽に乗れる中間排気量という。今回スポーティに生まれ変わった新型とはずいぶん違いますね(笑)」と裏話も聞かせてくれた。

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