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■文:中村浩史 ■撮影:島村栄二
■協力:YAMAHA 

このままじゃどうなっちゃうんだろう、と思っていた250ccクラスを
カワサキ・ニンジャ250Rが救ったのが2008年。
それから250ccクラスは、スポーツバイクに
オフロードにアドンベンチャーとカテゴリーも様々
もう、完全に復調したと言っていい。
けれど「昔はよかった」って言うおじさんたちは多い。
果たしてその辺はどうよ――とおじさんが乗ってみる。

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ライダーの身長は178cm。(写真の上でクリックすると、片足→両足、両足→片足着きの状態が見られます)

 僕がこの業界入りしたのは1988年。そう、ちょうど「あの」ハチハチNSRが発売された、あの年。
 あの頃、世の中は確かにレーサーレプリカブームだった。僕が中学生の頃、ヤマハがRZ250を発売――これはリアルタイムじゃ知らないんだけれど、打倒RZを目指して、ホンダが発売した4ストロークスポーツバイクVT250Fのことはよく覚えている。それから250ccクラスには、スズキがRG250Γというバクダンを投下したことで一気に激戦区になって、ニューモデルが次々とライバルを呼び、どんどんバイクの完成度が上がっていった。

 僕の初めての250ccは、中古で買ったスズキGS250FWだった。これは、アッという間に盗まれてきちんと付き合うまでには至らなかったんだけれど、250cc初の水冷4気筒エンジン搭載車、ってずいぶん注目を浴びたバイクだった。たしかバイク雑誌の見開き広告に原寸大のピストンとかコンロッドの写真が出ていて「こんなちっこいピストンが動いてるのか!」って感心したのを覚えている。ボア×ストロークが44×41mmだからね、ピストン直径は4cm、オトナが指でOKサイン作る、その丸くらいのサイズなのだ。
 GS250FWは、世界初の水冷4気筒の250ccエンジンってことが理由ではないだろうけれど、まぁ遅かったなぁ(笑)。RZ125に抜かれるのはまぁわかるとして、そんなにトバしていないCB250RSにどんどん離された日には、あれ…おかしいぞ…って思ったもの。4気筒ならではのフォーンってサウンドと、滑らかなエンジンフィーリングは、きっと250ccで唯一FWだけで味わえる気持ちよさだったけれど、世界でいちばん穏やかな4気筒エンジンだったんじゃないかな。

 とにかく250ccの4気筒が実用化すると、一気にスポーツバイクの完成度が上がってくる。FWの次に発売された4気筒はヤマハFZ250フェーザー。「4スト版RZ」なんて言われたフェーザーは15000rpmも回るという、ジェット機みたいなサウンドを発する高回転エンジンが人気だった。その後はホンダCBR250Fourかな、メインチューブの太いアルミフレームやカムギアトレーンエンジンが話題になったモデルで、このあたりから250ccのスポーツバイクの完成度がぐんぐん上がっていった。
 その後は、ホンダがCBR250シリーズを250R→250RRと発展させ、ヤマハはFZR250を250Rまで、そしてスズキはGSX-R250→250R、カワサキまで参入してZXR250/250Rを発売した。この頃は250/400とも「水冷並列4気筒DOHC4バルブ」が当然の装備で、そうじゃなきゃ人気モデルにはなれない――そんな時代だったのだ。この頃は、僕はもうこの仕事を始めていて、みんな乗ったなぁ。うん、みんな乗った。

 その中で、うわこりゃスゴい、と思ったのが88年型のCBR250Rだった。ハリケーンのペットネームが消えて、デュアルヘッドライトになった「MC19」って呼ばれるタイプだ。キュルキュル回るカムギアトレーンの4気筒で、低回転のトルクだってあって、高回転もよく回った! 小さくて軽くて、重心がギュッと低いところに集まってる、傑作スポーツバイクだった。その後250RRも出たけれど、もう歴史に残る4気筒250ccスーパースポーツだよね。

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 ニンジャ250Rに乗ったのは、あのCBR250Rからちょうど30年後だったのか。ツインチューブ式のアルミフレームはスチールのパイプフレームに、水冷4気筒DOHC4バルブエンジンは、水冷DOHCとはいえ、2気筒エンジンになった。そりゃそうだ、ニンジャ250RはGPZ250RとZZ-R250のエンジン&フレームを流用したバイクだったから、「あの頃」でいえば、ヒットなんかしようもないスペックだったはず。
 けれど、ニンジャ250Rは、とてもよくできたバイクだった。もちろん、サーキットを走るような動力性能では、あの頃の4気筒モデルに敵いっこない。けれど、たとえば街乗りをしていての力強さ、俗にいう常用回転域でのトルクは、決して負けてはいなかった。もちろん、30年という、記憶が風化しそうな期間を経てのものだから、あくまでも体感なんだけれど。

 そして現代の2気筒250ccも、初代のニンジャ250Rからずいぶんと進化した。サーキット性能を追いかけているのは現行モデルのCBR250RRだ。これはもう、中速から高回転へのつながりが素晴らしくて、ぎゅんぎゅん回るハイパワー250cc。モデルチェンジしたニューNinja250もそんなキャラクターで、この2台がサーキット性能的な高性能モデルになるんだろうと思う。その正反対にGSX250Rがいて、これは中国向けだったGSF250をベースにしていることもあって、おだやかで、スーパーすぎない性格。
 その点、デビューから3年が経とうとしているYZF-R25/MT-25は、CBR-RRやニューNinjaとはちょっと毛色が違っている。ヤマハが発売した初の(って言い方もおかしいけど)2気筒250ccスポーツだから、まだサーキット的高性能は狙わず、ストリートランからツーリング、それにワインディングを走るようなウェルバランスを狙ったバイクだからだ。

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 昨年だったか、CBR250RRとNinja250、それにGSX250RとYZF-R25を乗り比べたことがあったんだけれど、個性がハッキリしていて、すごく興味深かったのを覚えている。CBRとNinjaが先へ行って、GSXはこと長距離を走るツーリングには最適で、YZFはそのバランスがすごく取れている。だからGSXの値段は魅力だけれど、1台だけ買うならYZFだな、それもカウル付きじゃないMT-25がいいな、って思ったのだ。

 MT-25はYZF-R25のノンカウルバージョンだ。ライディングポジション以外はほぼ共通と言っていいバリエーションモデルで、カウルが無い分、街乗りの雰囲気が強い。普段使いなら、僕は断然ノンカウル派だ。
 エンジンは、前述のとおり低回転からのトルクがよく出ている。回転がシャープで、アクセルレスポンスがイイ。アクセル開度1/8といったエリアで、エンジンが2000rpmも回っていたら、もう実用のトルクが出ているエンジンだ。
 そこから、MT-25の強いところは、このクラスでは中回転といえる7000rpmくらいのトルクが厚いところ。CBRやNinjaは、ここから上の9000~10000回転といったあたりで伸びが強いんだけれど、MT-25の並列ツインは、この高回転域での伸びが鈍っては来る。けれど、これはあくまでも比較用にブン回した時の回転域で、普通に街乗りをしていて10000rpmなんてエリアを使うことなんてない、って断言したっていい。考えてみて? 自分のバイク、いたわるつもりがなくたって、こんな高回転域、めったに回さないでしょう?
 ハンドリングは、決してシャープじゃないけれど、ダルじゃない。安定性をきちんと確保したうえで軽快さを出している、ビギナーにだって怖さがない設定。けれど、いざワインディングに持ち込んで、ライダー側からコントロールしてやると、とたんにスポーティなハンドリングを味わうことができる。

 普通に走っていると、まったく普通に誰にでも扱えるハンドリングなんだけれど、速く走ろう、もっと攻めてやろうとすると、もう一歩奥深いところでキビキビ動き始める。このハンドリング、ヤマハっぽいなぁ。アクセルのオンオフをハッキリ、ブレーキングをきつめに、サスをきちんと沈めてコーナリングしようとすると、リラックスして走っている時よりもグングン曲がっていく、そんなバイクなのだ。

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 そして「あの頃」のスーパースポーツたちと比べて――というポイントだけれど、FZR250RとYZF-R25を比べてみようか? これはもう一緒に走らないとハッキリしないという前提で話すと、街乗りでは、文句なしにR25の方がキビキビ、ラクに走れると思う。あの頃の4気筒って、ひゃーひゃー言いながら、あんまり進まなかったもんね、街中では。
 けれど、高速道路でぐんと加速するような場面では、ゼロスタートでヨーイドンして、スタートではR25がリードして、回転が上がってきてスピードが上がってくると、これはFZRが後方から迫って、いつしか抜き去っていくと思う。最高速だって、やっぱり4気筒勢の方が上だもの。
 サーキットを走っても、これはコースレイアウトによるんだと思う。筑波のインフィールド、1コーナーから裏の2ヘアくらいまでは、きっとR25の方が怖くいないし、速い。それからは、裏ストレートで追いつかれて、最終コーナーで抜かれて、って展開になるかなぁ、と思う。1周のラップタイムは、筑波ではFZRの方が速いけれど、桶川やトミンではR25だって負けないと思う。

 スポーツバイクとはいえ、あの頃だって大部分はストリートを走っていたし、低回転でひゃーひゃー言うのも、それが普通の250ccだと思っていた。今は、あの頃よりもずっと街乗りの比重が高いと思うし、ワインディングやサーキットを走る機会が多いなら、MT-03やYZF-R3にしたらいいんじゃないかな。総合性能って項目があるなら、これはFZRよりもR25の方が上だと思う。願わくば250ccのスポーツバイクは、このレベルをキープしてほしいと思う。これが4気筒化して、また超高回転型のパワーフィーリングのモデルばっかりになってしまったら、またいつしか、250ccってカテゴリーは存続しなくなっちゃうと思うのだ。
 それほど、現代のツインスポーツ250ccって高性能だと思う。それも、全方位で楽しく乗れる、スポーツバイクなのだ。
 
(文:中村浩史)
 

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動きがよく、ストローク感とコシがあるφ41mmの正立フォークと、シングルディスク+片押し2ピストンキャリパーの組み合わせ。ブレーキの絶対制動力はもちろん、コントロールしやすいのが印象的。 リアサスはリンクなしのモノサス。スイングアームは、R1シリーズ同様、ロングスイングアームとしてトラクション性能を上げている。スイングアームが長いと、乗り心地が柔らかく、リアサスがよく動くフィーリングがある。
エンジンはYZF-R25と共通の水冷並列ツイン。CBRやNinjaなどのライバルと比べても、低回転から高回転までトルクが厚く、ひとつのギア守備範囲が広い印象。バランサーつきで振動が少なく、扱いやすい、乗り心地がいい。 ヘッドライトは異形ヘッドライトのハロゲンバルブ。ヘッドライト上のまゆ状のポジションランプはLEDで、ウィンカーはクリアレンズ+オレンジバルブ。小さめのスクリーンは大きさの割に効果が大きかった。
タンクカバー形状とエアダクトシュラウドはR25とは違うMT-25専用デザイン。容量は14Lで、今回の取材は約400km走って、実測参考燃費は30km/Lほど。航続距離はフルタンク400kmも可能だ。 ライダー側/タンデム側がセパレートタイプのシート。シート高は780mmだが、ボディがスリムだから、足着き性は数字以上に良好だが、シート面はやや前下がりの傾斜がある。タンデムシート下はETC車載器が入る大きさで、オプションでシングルシートカウルやリアキャリアも用意されている。
積載性はお世辞にも良いとは言えず、ドローコード用のフックがタンデムシート裏に用意されるだけで、後方用のフックはなし。写真ではウィンカーステーを利用しました。 外部ヘルメットホルダーはなく、タンデムシート裏に2か所あるフックに取りつけて、シートを取り付ければヘルメットをホールドできる仕組みだが、やり易くはなかった。ヘルメットを取り付けた状態は写真の感じで安定性はよかった。
メーターはアナログ&液晶ディスプレイの組み合わせ。デジタル部はスピード、ギアポジションのほか、時計、燃料計、水温を表示。スピードメーター下の数字はオド&ツイントリップ、平均&瞬間燃費を表示する。 リア周りのデザインはYZF-R25と共通デザインでLEDを使用。タンデムシート左右にはタンデムグリップが装備されて、タンデムライダーのこともきちんと考えていることがわかる。ナンバーはロングステー別体の吊り下げ型。 ステップ部分のヒールプレートにある斜め方向のスリットに注目。このスリットが設けられているのがYZF-R25/MT-25で、スリットなしがYZF-R3/MT-03という識別点がある。ステップ位置はR25と共通だ。
●YAMAHA MT-25 主要諸元

■型式:2BK-RG43J■全長×全幅×全高:2,090×745×1,035mm■ホイールベース:1,380mm■最低地上高:160mm■シート高:780mm■車両重量:166kg■燃料消費率:41.3km/L(国土交通省届出値 60km/h定地燃費値 2名乗車時)27.6km/L(WMTCモード値 クラス3、サブクラス3-2 1名乗車時 )■最小回転半径:-■エンジン種類:水冷4ストローク直列2気筒DOHC4バルブ■総排気量:249cm3■ボア×ストローク:60.0×44.1mm■圧縮比:11.6■最高出力:26kW(35PS)/12,000rpm■最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/10,000rpm■燃料供給装置:フューエルインジェクション■始動方式:セルフ式■点火装置形式:T.C.I.(トランジスタ式)■燃料タンク容量:14L■変速機形式:常時噛合式6段リターン■タイヤ(前、後):110/70-17M/C 54S、140/70-17M/C 66S■ブレーキ(前、後):油圧式シングルディスク、油圧式シングルディスク■懸架方式(前、後):テレスコピック式/スイングアーム式■フレーム形式:ダイヤモンド■メーカー希望小売価格(消費税8%込み):534,600円



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