EICMA 2018 Report 03

すっかり遅くなってしまいました。申し訳ありません。日本のバイクシーズン到来を前に、EICMAで発表されたニューモデルやニューアイテムをお復習いさせてください。3回目はアイテム編その1です。

●レポート・撮影:河野正士

■SHOWA

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各メーカーに純正採用されているさまざまなフロントフォークは、その構造が分かるようカットモデルとともに展示。
世界耐久選手権でタイトルを獲得したTSR HONDA FRANCEのCBR1000RRと、スーパーバイク世界選手権でタイトルを獲得したKAWASAKI RACING TEAMのZX-10Rを展示。両車ともにSHOWAのサスペンションを採用しています。

 いまやEICMAの常連ブランドとなりつつあるサスペンションブランドのSHOWA。スクーターからスーパースポーツモデルまで、さまざまな二輪車メーカーが採用するさまざまなサスペンションと、そこに採用されている技術の紹介をベースに、ここ数年は一般消費者向けのハイエンドサスペンションの発表と、自社開発の電子制御サスペンション/EERA(イーラ)の発表および技術解説を行ってきました。同時に、SHOWA製サスペンションを装着しスーパーバイク世界選手権や世界耐久選手権でタイトルを獲得した車両を展示し、開発の現場とそこでの実績もアピールしてきました。

 今年の目玉は、その電子制御サスペンション技術/EERAを応用した「HEIGHTFLEX(ハイトフレックス)」というシステムです。これは停車を感知し、停車直前に自動的に車高を下げ、足着き性を向上。再スタート後は前後サスペンションのダンパーをポンプとして利用して指定の車高に戻るというもの。このシステムを稼働させるためのモーターなど追加のシステムがほとんど不要なため低コストおよび低スペースで実現可能というものです。

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自動的に車高が下がり、再スタート後のサスペンションの動きを利用して元の車高まで戻るHEIGHTFLEXのシステムを簡易的に体験できるデモ機を展示。多くの来場者が、そのシステムを体験したようです。
取材時には、ドゥカティ・ホールディングスのCEO/クラウディオ・ドメニカーリが、開発陣を含むドゥカティの主要メンバーとともにSHOWAブースにやってきました。そしてHEIGHTFLEXの説明を受けていました。

 足着き性の改善は、いまや日本だけじゃなく、欧州市場でも重要なポイントとなっています。そもそも欧州には小柄な人も多く、またライダーの年齢層も高くなり、いままで以上に足着き性が重要になったと言うわけ。しかし人気のアドベンチャーモデルで足着き性を高めるためにはローダウンサスペンションやローシートの装備が必須。サスペンションメーカーのSHOWAとして、その選択は走破性と快適性を損なうとして、別の解決策を求めたのだそう。そのひとつの答えが、自動車高調整機構の「HEIGHTFLEX」と言うわけです。

 デモンストレーション用に用意したアフリカツインにはリアショックのみにこのシステムを組み込みましたが、本来ならフロントとリア両方にシステムを組み、前後サスが連動して車高を下げることで、安定感を損なうこと無く自然な車高上下動が可能になるそうです。これを実現する重要なポイントが、SHOWAが電子制御サスペンション用に自社開発したECUと、サスペンションに内蔵したストロークセンサー。バイク特有のサスの動きを理解し、その動きを正確にモニターするECUとストロークセンサーが、この技術を可能にしたのだそうです。

 技術的にはすぐにでも市販車搭載可能なのだそうですが、現在さまざまな二輪車メーカーとさまざまな可能性を模索中のため、市販車搭載の具体的なスケジュールは未定とのことでした。

オフロード用のスペシャルサスペンションキット/A-KITを、欧州のオフロードシーンで大きなシェアを持つKTMに装着し、展示。
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まだ研究開発段階の、EERAと連動する電子制御ステアリングダンパーも展示。一般的な電子制御のステアリングダンパーは速度センサーにのみ連動しているパターンがほとんど。その場合、速度に合わせてダンピングを効かせたり緩めたり、という制御になるそうです。しかしストロークセンサーを装着する、この電子制御ステアリングダンパーであれば、車体が振られた時のみ減衰を効かせることもできるそうです。

■エアバッグ

サムアップでポーズを決めるのはIn&motion社代表のピエール。アルゴリズムを駆使した独自のシステムで転倒を感知し、エアバッグを膨らませる。これまで、同じくフランスのIXONとともに二輪部門の開発を進め、このシステムはMotoGPでも使用されている。

 EICMAでは、新しいワイヤレス・エアバッグ・システムを提供するブランドが躍進しました。

 それはフランスの「In&motion(イン・アンド・モーション)」社です。MotoGPから認定を受けているエアバッグ・システムは3社あり、In&motionはアルパインスターズ、ダイネーゼと並ぶ、独自のワイヤレス・エアバッグ・システムを有するフランスの会社です。In&motionは創業して5年あまりの若い会社ですが、同じくフランスの「IXON(イクソン)」社とともにMotoGPに参戦し、システム開発を進めてきました。

 前回のEICMAでは、IXON社のブースでIn&motionと共同開発したエアバッグ・システムが展示されましたが、正式なローンチはその少し後ということで詳細は教えてくれませんでした。しかし今年In&motion社は自社ブースを展開。同時に提携ブランドを一気に拡大しました。それがフランスの「Furygun(フーリガン)」、アメリカの「Klim(クリム)」、ドイツの「Held(ヘルド)」、そして日本のHYOD(ヒョードウ)です。またトライアンフ社も純正エアバッグとして契約しました。

驚いたのは日本のHYODも2019年からIn&motion社のエアバッグ・システムを使用すること。またトライアンフはメーカー純正のエアバッグ・システムとしてIn&motion社と提携。ドゥカティ、BMWに続くエアバッグ・システムをラインナップするメーカーとなりました。

 トップブランド3社のワイヤレス・エアバッグ・システムは各社独自のシステムで稼働していて車体側にセンサーなどは必要としません。

 これは僕の推測というか希望ですが、通信メーカーが導入する車体コネクテッドシステムを介して車体のIMU情報、HUDユニットのカメラ情報を一括管理し、エアバッグなどさまざまな新規ガジェットを管理および稼働することも可能と考えます。そうなると、二輪の世界も大きく変わりますね。

ダイネーゼのブースでも、さまざまなタイプのエアバッグを展示していました。
アルパインスターズは、エアバッグ対応のすべてのジャケットを試着可能とし、ボンベでは無く、ホースでエアバッグに空気を送り、簡易的にエアバッグを体感さていました。

■Cera Carbon Racing

 オランダの「Cera Carbon Racing/セラ・カーボン・レーシング」は、セラミックとカーボンを合わせた独自素材を使ったフロントフォークを発表していました。レーシングシーンではカーボンアウターチューブのフロントフォークも珍しい存在では無くなってきましたが、カーボンインナーチューブはもちろん、セラミックをミックスした新素材を使うフロントフォークは初めて見ました。

アウターチューブはカーボン繊維が見えているものの、インナーチューブは繊維が見えず、ツルッとしたセラミック調の質感となったCera Carbon Racing製のフロントフォーク。

 インナーチューブとアウターチューブは同一素材ながら、素材の配合を変え、アウターチューブの剛性はオーダーにより変更可能。またオーリンズ製カートリッジダンパーのセットアップを基本としていますが、希望に応じ他メーカーのダンパーもセット可能。アウター&インナーの直径もオーダー可能。要するに、特性や剛性、インナーチューブ径などフルオーダーが可能だと言うことです。

一般的なフォークとCera Carbon Racing製フォークの各部位の重さを比較した展示。

 すでに実戦投入されていて、オランダの国内レースで使用されているほか、2018年のPPIHC/パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムに挑戦した、スペインのBOTT Powerが自社製作のフレームにBuellエンジンをセットアップしたオリジナルマシンに、このCera Carbon Racing製フォークを使用しています。こういった新しい素材や技術は、ワクワクします。

オランダの国内レースに参加するマシン。日本で言うところの地方選のようなレースに参戦しているそうです。
BOTT Power社のPPIHC参戦マシン。

■Design by Europe

 欧州はいま、ライフスタイル系小排気量バイクが人気です。“ライフスタイル系小排気量”という表現は、コレが正しいかどうか分からないのですが、これから紹介したい欧州でトレンドとなりつつ、さらにその波がアメリカや日本にやってきそうな世界を紹介するのに、ビシッと決まる言葉が無くて……。

これまで小排気量で勝負してきた「Mash」は今回、650ccの新型単気筒エンジンを搭載した、フラットトラックスタイルのニューモデルを発表しました。

 それは欧州でデザインされた新興欧州メーカーのバイクたちで、製造はアジア各国。その工場はかつて日本メーカーの提携工場であり、そのノウハウを活かしオリジナルのエンジンを生産し、車体のセットアップも行っているのです。そしてSRやTWなど、日本では“ストリート系”や“トラッカー系”などと称されたカスタムバイクのようなスタイルと、低価格が特徴です。日本には未導入ですがフランスの「Mash」がその筆頭で、EICMAでは数年前から「BRIXTON」も積極的にプロモーションを掛けていました。

BRIXTONはイタリアのブランド。250ccまでの空冷エンジンを搭載した、レトロスタイルのマシンを得意としてきました。しかし今回、オリジナルの500ccエンジンを搭載したコンセプトモデルを発表しました。

 パリ在住の友人に聞いたのですが、パリはいま“ライフスタイル系小排気量”で溢れているそうです。

 理由はさまざま。テロが頻発するパリでは、公共交通機関を利用したくないという心理が働いているとか、日本並みの通勤ラッシュのパリで通勤のストレスを減らしより効率よく働きたい人が増えているとか、でもそうなるといままではスクーターという選択肢だったが、流行の移り変わりが早いガジェット的なスクーターと言うプロダクトが、そういったライフスタイルを望むユーザーに馴染まない、とかとか……。

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BRIXTONの250ccモデル。価格は約€3700です。
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こちらはフランスの「ARCHIVE MOTORCYCLE」。同コンセプトの50/125/250の各モデルをラインナップしています。この写真は250ccモデル。

■気になるアイテムたち

 ここでは会場で見つけた気になったアイテムを紹介します。

 まずはREV’IT(レブイット)の「Expedition H2O」ブーツ。このEICMAが初お披露目だった最新ブーツのようです。REV’IT自身は、オフロードにもオンロードにも使える、快適でプロテクション性能の高いブーツという位置づけ。もちろんアドベンチャーバイクを使ったオフロードでの使用も強く意識しているそうです。

 特徴はオフロードブーツなどに用いられるバックルではなく、トレッキングシューズなどに採用されている、ダイアルをカリカリ回して、それに連動するワイヤーによってフィット感を調整するBoaフィットシステムを採用していること。見た目も格好いいし、機能性も高そう。値段は€600を切るとのこと。日本に入るの?と聞いたら、それは君たちの国の代理店で聞いてくれ、とのことでした。

開発時に素材やプロテクションエリアを検討したサンプル品や部材を展示するなど、クラフトマンシップを感じさせる展示が目立ちました。

 もうひとつはVibram(ビブラム)。ブーツのラバーソールのブランドというイメージしか持っていませんでした。モタードライダーなどは、ブーツのソールにVibram製スライダーをセットしてましたね。

 でも会場のVibramブースには、オフロードバイク用のフレームパッドやタンクパッドが展示されていました。知らなかった。調べると、フレームパッドは日本でも手に入るんですね。さまざまなオフロードレースを戦う多くの二輪車メーカーが、Vibram製フレームパッドを使用しているようです。タンクカバーも、なかなかイイ雰囲気です。

こういったパーツで、スタイルアップと一緒に、マシンの操作性がアップすると嬉しいですね。

 


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