MotoGPライダー ジョアン・ミルInterview 一旗揚げてやるぜ! の気概を感じさせた 好青年「ジョアン」ミル選手

今年からスズキワークスライダー(チーム・スズキ・エクスター)に抜擢された、期待のスパニッシュライダー、ジョアン・ミル選手。Moto2では僅か1年、そこからMotoGPにステップアップすると同時になんとワークス入りなのだから、ちょっとしたシンデレラストーリーだろう。セパンテスト直後、19年シーズンへの抱負を聞いた。

■インタビュー:ノア セレン 
■撮影:依田 麗 
●写真協力:SUZUKI

Q:MotoGPデビューおめでとうございます。衝撃的なMoto3チャンピオンを経て、Moto2は僅か1年、そしてそこからファクトリーMotoGPチームへの起用。お気持ちは?

A:Moto3ではいい結果を残すことができ、Moto2でも表彰台の獲得やトップ争いを繰り広げることができ、順調にステップアップしてきました。そしてついにMotoGP! しかもこうしてスズキワークスチームに在籍できるというのは、とても誇らしく思っています。

Q:特別スズキを希望していたのですか? 個人的にスズキファンであったりしますか?

A:特別スズキファンだったということじゃないんですけど(笑)、昨シーズンの中盤で色々なオファーを頂いた中でスズキは最初から波長が合って、ここで走りたいな、という気にさせてくれました。特にスタッフの雰囲気が良くて、僕を迎え入れようととてもフレンドリーかつ積極的に誘ってくれたのです。なので最初からスズキを希望していたというよりも、スズキの雰囲気を知って、いくつかのオファーの中からスズキが良いな、と思うようになったという経緯です。

Q:セパンテストを終えたばかりですが、Moto2からMotoGPへの乗り換えはうまくいっていますか? MotoGPマシンへの合わせ込みはスムーズですか?

A:Moto2とMotoGPではかなり違うマシンですが、乗るたびに慣れて少しずつ合わせ込めています。へレスやバレンシア、そして今回のセパン、毎回毎回自分たちが成長していることを実感しています。

Q:他メーカーはV4エンジンであるのに対しスズキ(及びヤマハ)はMoto2と同じ直4エンジンを搭載しています。Moto2からのステップアップにおいて、そういったエンジン形式の違いによって慣れやすい、慣れにくいということもあるのですか? また、MotoGPマシンでは重いとか怖いとか感じないものですか?


A:ないですね。V4と直接比較したわけではないですが、そもそもMoto2とMotoGPではエンジン形式を超えてあまりに違うマシンです。もちろんパワーの差はとんでもないですし、ブレーキもシャシーも違うしまるっきり違う乗り物と言って良いでしょう。何よりもパワーの差が凄くて、怖いということはないですが、時間の開いたテストなどで久しぶりに乗ると「うわっ!」てなります。昨日のセパンも初日にアクセルを開けた時「こんなに速かったっけ!」とまた驚きましたね(笑)。でもそれが最高なんです。楽しいですよ!

Q:そのセパンテストでスズキ勢は概ね好調のようでしたが、リンス選手がトップに近いタイムを出していたのに対し、ミル選手は慎重に走っているようにも映りました。どのような内容のテストだったのですか?

A:アレックスは最新の19年仕様を積極的にテストしていたのに対し、僕は初日・二日目は18年仕様に乗っていたのがタイムに現れていたと思います。テスト内容は細かな部品のテストを重ねるというのが多かったです。様々な部品に選択肢がありますので、細かな一つ一つの部品をつけて走って、交換して走って、精査していくわけです。そういう小さなコンポーネントの組み合わせを探って、開幕に向けて最高のマッチングを導き出すという作業ですね。なので一発のタイムを出すというよりは、全てワンオフパーツの集合体であるマシンを、最高のパッケージに仕上げるためのテストでした。最終日には19年仕様にも乗りました。フィーリングは良くてタイムもまずますでしたが、ちゃんと理解して速く走らせるためにはまだまだラップ数が必要でしょう。





昨年11月20・21日の2日間、スペイン・バレンシアで行われた合同テストで、ジョアン・ミルは初めてGSX-RRをライディング。

Q:MotoGPにステップアップして初年度から好成績を残すライダーもいれば、もう少し時間を要するライダーもいるようです。今のところの感触としてはいかがですか? 突き抜けていけそうですか? それともしばらくは石橋を叩いて渡る必要がありそうですか?

A:うーん、わからないですね。コースによって違うでしょうし、レースによってコンディションも変わります。自分の能力の限界を探って、それを超えずに伸ばすようにチャレンジを続けるだけですね。

……お若いのにずいぶん冷静ですね

A:そう、会議室ではね(笑)。クレバーなふりして、ヘルメットをかぶったらそんな冷静さはどこへやら! 夢中で走っちゃいます(笑)。一刻も早くペースをつかんで、表彰台に登りたいですね!

Q:MotoGPにステップアップが決まってから、何か特別新しいトレーニングを取り入れたりしましたか?

A:MotoGPマシンはMoto2と重量はあまり変わらないと思いますが、パワーがあって加減速も強烈ですのでかなり力が必要です。よってMoto2時代に比べて、心肺を鍛えるようなトレーニングよりも筋力アップを目指したウェイトトレーニングなどに重点を置いています。モトクロスなど、バイクに乗るトレーニングもたくさんあります。この新しいトレーニングメニューの結果には満足しています。一日60ラップ前後のテストを3日間こなしても身体的に参ってしまうということはなかったですからね。ま、今はヘトヘトですが!(取材日はセパンテストの直後、しかもほぼ寝ていない状態)


Q:一番好きなサーキットは?

A:フィリップアイランド。デビューを果たしたのも、最初のタイトルを決めたのもフィリップアイランドでした。美しいサーキットで、風は強めですが、好きですね。

Q:今シーズンの目標は?

A:まずはルーキーオブザイヤー。そして毎戦毎戦進歩をし続ける事です。ラウンドごとにバイクも自分も向上し続ける事が大切です。

……最終的に、総合6位あたりを狙いたいです、よね!?

A:そうなったら最高ですけどね!!

Q:セパンではドゥカティ勢が速かったようですが、その印象は?

A:確かに速かったけれど、タイムシートを見るとアレは一発のタイムだけです。予選は速いでしょうしポールポジションを獲得する可能性も高いですが、レースペースで考えればそうでもないと思います。レースは長いですからね。





インタビューの前日まで(2月6〜8日)マレーシア・セパンで行われた合同テストにて。

Q:最初にスズキに誘われた時に、そのファーストインプレッションが良かったと言いましたが、こうしてテストを重ねてチームの一員としてシーズンがスタートした今、うまくチームに溶け込み、効率的に仕事ができていますか?

A:そうですね。ファーストインプレッションの好感触はそのままに、とても良いチームワークができていると思います。全てがスムーズに進んでいますし、これはマシンを熟成させるためにも、レースで好成績を収めるためにも非常に重要なことです。その点はとても満足しています。あとは結果がついてくるのを待つだけです。

Q:レースの時はこのパンツを履くとか、ブーツは左足から履くとか、守っているジンクスはありますか?

A:ありますね。青色が良くて、いつもパンツは青です。しかも毎戦新品を履いてゲンを担いでいます。靴下もレース専用のがあって、必ず右から履きます。別にジンクスを信じているというわけでもないんですが、そういう風にやってきてここまでこれたんだから、変えることもないでしょう。ずっとやってきましたから、ジンクスというよりは青いパンツをはいて、靴下やツナギを右から着て行くというのがルーティンになっていますね。レースに向けて集中していくための行程というわけです。

……ではそのジンクス(?)が今年も結果に導いでくれますように! 頑張ってください! 今日はありがとうございました。

後記:
おでこのニキビも眩しい若者のミル選手。でもMotoGPまで上り詰めただけのことはあり、非常に冷静でロジカルな部分も感じさせてくれた。一方でせっかくもらったチャンス、華々しくデビューしてやるぜ! 的な気概も言葉も端々に感じさせてくれ、その若さというか、静かなアグレッシブさも魅力に感じた。英語も達者でジョークも言い、楽しいインタビューが終わった頃にはすっかりファンに。ちなみにスペイン語ではJを発音しないことも多いが、ミル選手の場合は「ホアン」ではなく「ジョアン」が正しい発音だそうです。ナイスガイなルーキーに期待!(ノア セレン)


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