Gremseck101

 
3年前にレポート(http://psp-traumland.info/?p=99912)した、ドイツ・シュツットガルト近くの街、レオンベルグで開催されるカスタムバイクと1/8マイル・スプリントレース(0-200mドラッグレースの意)のイベント「Glemseck101 グレムセック・ワンオーワン」。今年も参加してきました。じつは2016年は不参加。しかし行けばよかったと後悔したので昨年に単独参加(すみません、レポートしてません……)。で、今年も行っちゃえってことで合計3回の参加となりました。今年は天候に恵まれず、最終日の午後に雨が降りレースは中止になりましたが、それでも約4万人が参加したそうです。ここではその様子を紹介します。

■取材・文:河野正士 ■協力:Glemseck101 

 3年前のレポートでは“欧州最大を謳うイベント”と紹介しましたが、その後いろんなイベントを見て回り、グレムセックはその規模だけではなく、イベントの個性はもちろんイベントを造り上げるスタッフやスポンサー企業の努力、そこに集まるバイカーたちの心意気などなど、どれを取っても唯我独尊であり、欧州最大級であることは間違いありません。

↑会場は1960年代までF1やWGPの西ドイツGPが開催されていた公道サーキット、ソリチュードの一部を使用しています。その中心に「ホテル・グレムセック」があり、そこはドイツのバイク乗りがバイクシーズンの毎週末、ツーリング先として目指すメッカのような場所。そこで2日間、公道を封鎖してイベントが開催されるのです。キャンプサイトも併設され、夜はもう、お祭り騒ぎです。

 唯我独尊であること。それは、はるばる日本から出かけて行く大いなる原動力になります。グレムセックの最大の個性とは、やはりスプリントレースです。いまでは欧州のあちこちで開催されているカスタム系イベントに、色んなカタチのレースが組み込まれていますが、そのきっかけを造ったのもグレムセックと言っても良いでしょう。

 日本で説明するときには“ドラッグレース”という言葉を使いますが、その言葉とカテゴリーが持つイメージとグレムセックのスプリントレースは、違うと思います。もちろんレギュレーションによって、ドラッグレーサー然としたスタイルのマシンが持ち込めなくなっていますが、そうじゃなくても、参加するビルダーやライダーたちは自らのキャラクターを理解し、または造り込み、マシンの速さだけを追求することもない。だから見ていても飽きないのです。
 それを証明するかのように、ザックリ2000人くらい座れるグランドスタンドは、ビール片手に観戦する人でずっと満席。雨でスケジュールが遅延したときも、再開のアナウンスが流れるとあっという間に満席になったほどです。誰が勝ったかはもちろんですが、どんなバイクとライダーが、どんなパフォーマンスをするかに一喜一憂し、大きな拍手と歓声が生まれるのです。

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↑昨年からイベントのメインスポンサーはインディアン。会場中央に巨大なブースを出展し、ファクトリーレーサーFTR750やそのスタイルをモチーフにしたコンセプトマシンFTR1200Custom、また既存ラインナップやカスタムマシンを展示。さらにはアメリカからローランド・サンズを招聘し、FTR750やFTR1200Customでレースにも参戦。今年に入り、カスタムシーンにおけるインディアンの攻勢は昨年を大きく凌ぐ勢い。その理由が、先のインターモトで発表された市販バージョンのFTR1200のプロモーションだったのです。
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↑こちらはヤマハブース。ここ最近の欧州ヤマハはYard Builtで多数のカスタムバイクを発表しているものの、イベント会場でのパフォーマンスは控えめです。「悪魔」と書かれたXJR1300をライディング予定(降雨のため中止)だったのはYART YAMAHAのマービン・フリッツ。このレーシングスーツは鈴鹿8耐で着用したものだそうです。
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↑Glemseckではトライアンフも積極的にブースを展開。カスタムバイクによるスプリントレースの欧州選手権「Sultans of Sprint(ソルタンス・オブ・スプリント)」のファクトリークラスに参戦し、ファクトリー仕様のスーパーチャージャーを装着したスラクストンRが前戦から2連勝しました。
↑ロイヤルエンフィールドもカスタムシーンに積極的にアプローチしているブランド。昨年のEICMAで発表した650ccツインエンジンをハリス製フレームに搭載したスペシャルマシンはとにかくカッコイイです。
↑今年に入り、カスタムシーンに対して少しトーンダウンしてるんじゃない?と思っていたホンダでしたが、ここでガツンとやってきました。CB1000RをGlemseck101用にスペシャルカスタム。約6cmのロングスイングアームを装着したスペシャルマシンを、マイケル・ドゥーハンを招聘しライディングさせました。また新型モンキーも、ドイツのカスタムファクトリーであるキングストン・カスタムでカスタム。欧州でもモンキーは大人気なのです。
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↑ドイツ・カワサキは、毎年大きなブースを出展。カスタムバイクも製作し、積極的にカスタムシーンに絡んでいる印象です。6月に開催された「Wheels and Waves」( http://psp-traumland.info/?p=148966 )ではZ900RSを駆る、各国から集められた女性ライダー6人がロンドンから南フランスのイベント会場を目指す旅を通してZ900RSのプロモーションを展開。今回は、ベルリンの女性バイカーグループThe CURVES(カーブス)自身がカスタムしたW800とZ650を展示しました。
↑イギリスのヘルメットブランドHEDON(ヘドン)もブースを展開。同じくイギリスのカスタムファクトリーSinroja Motorcycles(シンロジャ・モーターサイクル)がオランダの時計ブランドTW Steelとコラボレーションして製作したBMW R nineTカスタムに合わせてカスタムペイントしたヘルメットでレースにもエントリーした。
↑ネオクラシックな、SHOEIの新型フルフェイスヘルメット「EX-ZERO」は欧州でも話題となっています。また「Sultans of Sprint」に参戦するドイツのカスタムファクトリーであるシュラクトウェルクやクラウトモータースのライダーたちは、すでに「EX-ZERO」を被り、レースに参戦していました。
↑なんとブリヂストンもブースを出展。聞けば今回はタイヤメーカーで唯一の出展であり、ブリヂストンとしては初めてのカスタム・イベントへの出展だそうです。しかもカワサキZRX1100をベースにしたカスタムバイクも製作。シートはブリヂストンタイヤをアレンジしたもの。座り心地、抜群だそうです。
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↑BMWブースは大量のカスタムバイクを展示。海外ビルダーも招待し、レースに参加していました。なかでも気になったのはVTRカスタムが製作した、1986年にルマン24時間レースを戦ったK100レーサーをモチーフにカスタムした「K100RS」と、板金など金属加工のスペシャリストとしてられるアメリカのカスタムビルダーのSOSA METALの「R nineT」です。
↑ハーレーやモトグッツィもブースを出展。モトグッツィは、ドイツのデザインカンパニーGANET DESIGN(ガネット・デザイン)がデザインしたV9ベースのカスタムマシンを展示。レースにも参戦しました。

 あと特筆すべきはレース運営スタッフおよびイベントスタッフ、さらにはレース・エントラントが、みなエンターテイナーであることです。運営スタッフはレースやイベントを捌く所作や立ち姿も格好良く、時には威厳を、時には愛嬌をもってスケジュールを進めていきます。
 レースに参加するライダーやビルダー、サポートスタッフも同じ。レースしに来てるんだから勝てば良い、なんて考えているチームはひとつもなく、グレムセックを待ち望み、ライバルたちとのレースを楽しんでいる。もちろん、みな勝利を目指し、勝者には敬意を表しますが、それがすべてではない、ということが貫かれているのです。
 彼らはレースは勝負を決める場であることと同じく、“SHOW”である、という意識なんですね。だから来場者を楽しませようとするんです。

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↑彼がグレムセックの主催者の一人、ヨルグ・リッツェンバーガー。彼らの仲間が集まる小さなミーティング的なイベントを、彼自身が世界中のバイク系イベントを見て回り、スプリントレースを加えるなど個性的なイベントへと進化させたのです。自治体や警察とも協議を重ね、毎年イベントをグレードアップさせています。
↑イベントのもう一人の立役者、フラッグガールのエヴァです。不安定なストローブロックの上で小さなカラダをジャンプさせ、スタートフラッグを振りまくります。その所作はとにかく格好いい。クラス毎に衣装やメイクを変えるなど、彼女もエンターテイナーなんです。
↑スタッフたちも皆フレンドリー。レース運営も見事なものです。ピンクのウサギの着ぐるみを着てカートを押すのはバイクイベントのボランティア集団、ピンク・ラビットです。会場中央ではヘルメットやジャケットの預かりスペースを運営し、また定期的に会場を回り、ゴミ拾いなどを行っています。こういったグループが出現するあたり、欧州バイクカルチャーの意識の高さを感じます。
↑レース会場には消防隊員も常駐していて、マシンから出火したときはもちろん、コース上にオイルやガソリンが出たときも速やかに対応します。昼間は気温も高く、そのなかで消防服を着たまま待機しているだけでも大変そう。

 顕著なのが、グレムセックのカテゴリーに加えられた、今年で開催2年目を迎えたカスタムバイクによるスプリントレースの欧州選手権「Sultans of Sprint(ソルタンス・オブ・スプリント)」です。参加車両が並べられたSultans of Sprintテントは色鮮やかに彩られ、そこでルーレットを使って対戦相手を決め、テントからレーストラックまでは仮装したクルーがライダーとマシンを先導し、バーンナウトにもひと工夫するチームもあります。
 レースはガチンコだけど、負けたチームは勝ち残ったチームをサポートし、勝ち進めんだチームはそんな仲間でどんどん大きくなっていく。そして勝者を徹底的に祝福するのです。

↑これがSultans of Sprintテント。出場する全マシンが並べられ、常にDJが音楽を掛けていて賑やか。決勝レースの朝に、対戦相手を決めるルーレットを開催。主催者と参加者の努力によって、そのルーレットすらもしっかりと盛り上げ、観客を喜ばせます。
↑これはレーストラックに入場するときの様子。単純に入場するのではなく、チーム毎に仮装したり音楽を掛けたりするなど、チームの個性を全面的に押し出します。
↑スタート前のバーンナウト。タイヤを温め、スタート時のタイヤのグリップを高めるための重要な要素なのですが、ここでも各チームが工夫を凝らした演出を行います。

 それだけじゃありません。決勝が終わった夜はテントで盛大なパーティが開かれるのですが、そこでは「パーティ・モンスター」と呼ばれるダンスコンテストが行われ、参加する全チームが、代わる代わるステージ上でダンスを披露。その盛り上がり方でチャンピオンシップにポイントが加算されるのです。踊りが上手いヤツも下手なヤツも居るけど、関係なく踊りまくることで、パーティそのものが大いに盛り上がるのです。
 そしてその場にはメーカーも国籍も関係なく多くの人たちが集まり、酒を酌み交わし、親睦を深め、情報を交換していく。そうやって、ムーブメントが動いていく。その現場が、ここにあるのです。

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↑これが「パーティ・モンスター」の様子。レース参戦したチームは強制的に参加。ステージに上がり、踊りまくって会場を盛り上げます。これによってSultans of Sprintテントが一体化し、その後の馬鹿騒ぎに続くのです。

 レースというコンテンツを加えることが欧州カスタム・イベントの定番となりつつあるのも、バイクを展示する“カスタム・ショー”よりも、明確にパッションがぶつかり合い、それによって生まれる化学反応が大きいからなのかもしれません。
 
 もちろん僕も、たっぷりビールを飲みながら、この片隅に居られることを楽しみ、誇りに思うのでした。
 
 それでは会場の様子を写真で一気にお見せします(写真の上でクリックしてください)。



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