Honda フォルツァ試乗

 
ホンダのFORZAといえば、2000年に初期型が発売されてからずっと、つり上がったアーモンドアイがトレードマークだったが、この5代目はそれを継続しなかった。前から見ると、角型のつり目と大きな鳥が羽を広げたようなLEDポジションランプが印象的で、一発でFORZAと分かる個性的な顔つきだ。全体の造形はラウンドした形状の面を多く使った丸い感じだったが、それも一新して、エッジのきいた精悍なルックスになった。そのスタイルからも今までとは違う、という主張が伝わってくる。

■試乗&文:濱矢文夫 ■撮影:松川 忍
■協力:ホンダモーターサイクルジャパン 

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ライダーの身長は170cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。

 原点を再考するように初代と同じ「ニュースタイリッシュスポーツ」をコンセプトに開発。安心、快適、利便性を世界基準で見直したと開発責任者は説明した。最初は国内専用モデルとして登場したが、2013年に発売した先代のFORZA siから欧州を中心に海外でも売られるようになった。ご存知のように、90年代後半からのビッグスクーターブームがあって、カテゴリーとして確立しながら、その市場を支えたユーザー層の好みを考慮した作りになっていた。ブームが去ったことで、ビッグスクーターとしてのあり方を再構築。それに海外市場からの声も加えたそうだ。

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アップライトなポジションも見直されている。

 その結果、何がどう変わったのか。まず、跨ってシートに腰をおろしてみると、ポジションの違いがはっきり分かる。これまでは座る位置に対してハンドルは高めで、足は膝の曲がりが小さく前に伸ばす感じだった。新しいFORZAはシートが高くなった(715mm→780mm)こともあり、より膝が曲がり椅子に座っているようになった。胸の高さに近かったハンドルグリップを掴んだ手はおへそくらいの高さに。変わっても上半身も下半身も窮屈な感じはまったくない。少しクルーザー的だった以前のものより、個人的にこっちの方が好みだ。
 
 まず自然な姿勢で腕も足も疲れにくい。そしてフットボードをしっかり踏み込め車体をバランスさせやすいのと、ハンドル操作において体の動きが小さく腕の中だけで操作している感覚で運転しやすいからだ。グローバル市場のスクーターではこれがスタンダード。その半面失ったものがある。それは足着き性。平均より足が短い身長170cmの私の場合、両足だと足の指が曲げられるところまでなんとか。片足をフットボードに載せれば力が込められる母子球付近まで届くので気にはならないけれど、もっと小柄な人やビギナーなら感想は変わってくるかもしれない。完成車比較で約5%、11kgも軽くなったという事実は、走りだけでなく、足を着いて車体を支えることや押し引きにも効いているので、気になる人はお店で跨がらせてもらうといいだろう。

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ドライバビリティと扱いやすさの向上で動きが上質に。

 スマートエントリーだから、キーを差し込まず、メインスイッチダイヤルを回してスタートボタンを押しエンジン始動、発進。動き出しは穏やか。いきなりグンと飛び出すようなことはない。歩くより遅い速度で走ってみると、その状態を楽に維持しやすい。これなら渋滞時にノロノロと動くのも楽にできるだろう。欧州などにある石畳で、そこが濡れていても安全に発進、加速ができるように、ホンダのスクーターとしては初めてHSTC(ホンダ・セレクタブル・トルクコントロールシステム)が採用されたことも大きなトピックだが、その恩恵を感じることは少ないかな、と思うほどトラクションさせやすい。こう書くとドライバビリティが悪いと勘違いされそうだが、そうではない。スロットル操作に対し忠実に反応するキビキビ感はある。出力特性を曲線グラフに表したイメージを見ても、トルクの高まりはなだらかなカーブを描き登っていく。
 
 スロットルを大きく開けると、スルスルっと速度が伸びる。“押し出す”というより“滑るよう”という表現がしっくりくる。実際にはちゃんとエンジン回転数が上がって、速度も出ているのにそう感じた理由は、エンジン、駆動系、排気音など出てくる音が静かなこと。エンジンや駆動系はフリクションロスを低減させ滑らかにしたというのも頷ける。それと、高速域でもサスペンションに無駄な動きが少ないからだ。クルマ雑誌的な表現をすれば欧州車のような締め上げられた足をしている。前後のショックユニットの動きはバネが硬いのではなく、ダンピングをしっかり効かせたもの。

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しっかりとしたサスペンションとシャシーでスポーティーな走り。

 乗る前にストリップ車を見たが、燃料タンクを囲む特殊なダブルクレードル型をしたフレームは、アンダーパイプが前のFORZA siよりもかなり太くなって、他の部分も合わせて見るからに剛性を上げている。試乗場所は、ツインリンクもてぎ内の移動路や、外の一般道に加えてアクティブトレーニングパークに特設されたコースも用意されていて思いっきり走りを試せた。半径の大きなカーブでの高速コーナーリングで外側に飛び出そうとする遠心力に抗うときでも、車体の剛性感が高く、沈み込むサスペンションも踏ん張る。そこからの素早い切り返しでも、揺すられることもなくタイヤがピタッと路面に張り付いて気持ちがいい。
 
 ブレーキのアタリはもうちょっとかな、と思うほど走行距離が伸びていない試乗車だから、サスペンションにもまだ動きの硬さがあるかもしれないと前置きして、道路の継ぎ目や段差などではしっかり手応えのあるハーシュネスがくる。私の体重ではリアよりフロントの方がはっきりしている。しかし、バンっという音とともに沈んだ前後のサスペンションはその衝撃を吸収しながら伸びもダンピングが効いているので一発で収まる。だから足の硬さは感じるものの不快になりにくい。ピッチングモーションは小さくフラットな乗り心地が続く。
 
 新型FORZAはコンパクトになった。ホイールベースは従来より35mmも短縮されたのは大きい。さらに、フロント14インチ、リア13インチからフロント15インチ、リア14インチと前後キャストホイールを1インチずつ大径なものを採用。フラットではない凸凹した路面でもスロットルを開けていけるよう走破性を上げている。タイヤ(PCXにも採用されているIRC SS-560)のサイズアップもありホイールベースが短くなっても高速域でスタビリティに不安を感じることはなかった。アクティブトレーニングパークには、パイロンを並べ、スラロームやクランクを含む、小さく回り込んだり、すばやく切り返す必要があったりするジムカーナのようなコースもあった。わざわざこれを用意したということは、回頭性や機敏な動き、コーナーリングの安定感に自信があるということ。走ってみると、開発陣の狙い通りブレーキからの倒し込みの軽さとダイレクト感があり、旋回中に路面をとらえているタイヤ接地感をつかみやすくクルッと小さく回れる。リーンアングルが深くなってもオンザレール的な安定感。

快適性と利便性も抜かりがなく、ビッグスクーター本来の道に戻り進化を継続。

 軽量化して、ホイールベースを短くしながらも、ラジエターとバッテリーを上下に配置するなどのレイアウトで、容量を前モデルと同じ11Lを確保した燃料タンク、ヘルメットが2個入る大きなラゲッジスペースを備えたことは素晴らしい。この日は猛暑日で、冷やす目的で風を体に当てたくなり、電動で素早く上下するウインドスクリーンを下げて走ったりもした。手元のスイッチで簡単に上げ下げできるのはありがたい。シートが上がり視線が高くなったことは混雑した街中での状況把握に一役買うだろう。新型FORZAは、走り、機能性、快適性などビッグスクーター本来の優位性を真面目に考えて正常進化させた。今後は、海外メーカーにある、スマートフォンとの連携などコミューターとしてさらなる利便性の向上もありか。
 
 ブームの終焉によりビッグスクーターは死んだのではなく、軌道を戻して便利で楽しい乗り物として進化をしている。乗ってからそう思った。
 
(試乗・文:濱矢文夫)
 

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歴代フォルツァ揃い踏み。右から2000年3月発売の初代、2004年4月の2代目、2007年12月の3代目、2013年7月の4代目、そして左端が新型5代目フォルツァ。
12本スポークデザインの軽量アルミホイールを採用。フロントは15インチ。履いているタイヤはIRC SS-560Fの120/70-15M/C 56P。ちなみに旧型のFORZA Siは120/70-14M/C 55Pだった。フロントブレーキはシングルディスクで、ローター直径は256mm。キャリパーはNISSINの2ポッドでABSは標準装備。正立のフロントフォークは従来通りアンダーブラケットまでの長さ。キャスターアングルは26°5′、トレールは89mm。 リアホイールは14インチ。タイヤサイズは140/70-14M/C 62P。リアショックは2本で、取り付けは前モデルと同じでやや前傾している。ユニットスイングのユニットはオレオリンクを介してフレームと接続。これによりエンジンの振動も伝わりにくくなっている。無段変速のミッションケースは、中間軸の保持を従来のニードルベアリングからボールベアリングに変更してスラスト方向の遊びを規制することで静かで滑らかに走行できるようにしたという。見て分かるようにオイルフィルターはアクセスしやすい位置だ。 リアブレーキもシングルディスク。ローター直径は240mm。センタースタンドは標準装備で、それほど力は必要なく軽くかけることができた。リアのエアバルブは狭いスペースだから入れやすいよう横を向いている。フロントは普通に真っ直ぐ伸びたタイプ。テールに向けて跳ね上がったマフラーは薄肉化により従来から約15%の軽量化。
LEDヘッドランプ。ロービームでは左右に分かれたつり目ランプ部分が点灯して、ハイビームにするとその間にあるランプが点灯してVの字に繋がったように見える。ヘッドランプの上にはLEDシグネイチャー(ポジション)ランプがあり、上側に鳥が翼を広げたように見え個性を演出している。中央の溝は、ウインドシールド内側のライダー正面の空間が不快な負圧にならないようにする空気取り入れ口。 電動で上下するウインドシールドの可動範囲は斜め方向に140mm。高さを任意の場所にできる無段階調節。驚いたのは、動きが素早いこと。クルマのパワーウインドウより若干速い動き。
X字デザインのテールランプとウインカーはLED。長くて強固なアルミのアシストグリップを装備。ボディカラーは3色あり、艶消し黒のこれはマットガンパウダーブラックメタリック。黒はもうひとつ、艶のあるアステロイドブラックメタリック。イメージカラーとしてカタログで大きく使われているのが白青のパールホライゾンホワイト。 トランクスペースはヘルメットが2個入る大きさ(サイズや形状によっては入らない)。2段になっていて前方には入れたものを保護するカーペットがあり。前方の壁に小さいクッションもある。樹脂製の仕切板は設置位置が2箇所あり、小さめのものが中で転がらないようにしたい時に便利。 シートカラーは2トーン。シート高は780mm。後席に乗る人の快適性を考慮して、アルミタンデムステップに足を置いても膝の曲がりがゆるやかになるようになった。
スマートエントリーを採用。ダイヤルを上から1回プッシュして起動。少し回したポジションでシートと給油口を右のスイッチで開けられる。そこからさらに回して、ブレーキレバーを握りスタータースイッチを押してエンジン始動。同じ樹脂ながら場所によって素材感を変えているのは最近流行の手法。 フロントは左側だけにグローブボックスがある。中はかなり深く、500mlのペットボトルを入れてもご覧のように頭が少ししか見えない。ETC用の設置スペースも確保されている。そして、最近は標準化しつつあるアクセサリーソケット(2A以下)が備わる。ハンドルロックをかけると施錠可能。 『INFO A』のボタンはメーター中央にある液晶画面のトリップなどを表示する一段目の項目用。『INFO B』は上から二段目の表示項目用。上下の矢印が付いたボタンはウインドシールドの上げ下げ。この写真では見えないがTの文字が印刷された部分の前に、HSTC(Hondaセレクタブルトルクコントロール)の切り替えスイッチがある。
アナログ2眼メーターの中央上部に液晶、下部がインジケーターランプ。時計、燃料計、水温計、ツイントリップ、平均燃費、経過時間、トータル、残走行距離、瞬間燃費計、外気温計。グローバルモデルらしいところは電圧計もあるところ。HSTCをオフにすると矢印で丸く囲まれたTマークが消え、右斜め下の斜線入りTマークが点灯。

ハンドル中央のカバーは手で簡単に取り外せ、中のボルト穴を使ってナビやスマホホルダーなどアクセサリー機器を取り付けられるよう配慮されている。 オプションのグリップヒーターを取り付けると、設定温度の強弱数字をメーター内に表示できる。世界で売られるグローバルモデルらしく、日本専用とも言えるETCのインジケーターは備わっていない。
給油口の蓋を開けたところ。燃料タンクの容量は11Lと従来モデルと同じ。 シリンダーが寝かされた水冷OHC4バルブ単気筒248ccエンジンは、ピストンのスカート部に二硫化モリブデン+PTFE樹脂コーティングを施し、ローラーロッカーアームを採用するなど低フリクション化された。ピストンの側圧力を緩和するオフセットシリンダーも採用している。 フレームは必要な剛性を得るために太いアンダーパイプを使っているのが分かるだろう。燃料タンクとシリンダーヘッドの間にラジエターとバッテリーを上下に配置してコンパクト化に貢献。
●フォルツァ(2BK-MF13) 主要諸元
■全長×全幅×全高:2140×750×1355mm、ホイールベース:1510mm、シート高:780mm■エンジン:MF13E 水冷4ストローク単気筒OHC4バルブ、ボア×ストローク:68.0×68.5mm、最高出力:17.0kW〔23ps〕/7,500rpm、最大トルク:24N・m〔2.4kg-m〕/6,250rpm 、燃料消費率:国土交通省届出値、定地燃費41.0km(60㎞/h)(2名乗車時)、WMTCモード値33.3km(クラス2-2)(1名乗車時)■タイヤ(前×後):120/70-15M/C 56P × 140/70-14M/C 62P、車両重量:184㎏、燃料タンク容量:11L
メーカー希望小売価格(消費税8%込み):646,920円(消費税抜き本体価格599,000円)

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