全米PROモトクロスに挑むふたりの若武者

アメリカはもちろん世界のトップライダーが参戦する『2018 AMAプロモトクロス』が5月19日、カリフォルニアで開幕した。全米中を移動しながら8月までほぼ毎週続くシリーズ全12戦に、今年は2人の全日本チャンピオンがフル参戦している。日本で頂点を極めた彼らにも、世界の舞台は容赦ない。圧倒的ハイレベルの渦中で揉まれながら、苦い思い、痛い思いを噛みしめて格闘する、シーズン序盤の両ライダーにフォーカスした。

■文・写真:高橋絵里

ベストリザルト更新中!「1戦1戦、次に繋がるレースを」──
富田俊樹



パワーで押しまくる選手が多い中、ロスのないクレバーな走りが富田選手の持ち味だ。

 最高峰カテゴリーの450MXクラスでゼッケン718番、CRF450Rに乗るのがホンダファクトリー『Team Honda HRC』の富田俊樹選手だ。石川県出身の27歳、日本では2013年と2015年のIA2チャンピオンに輝き、アメリカ挑戦は3年目を迎える。しかしながら今年は1月にカリフォルニアで練習中、前を走るマシンからの飛び石が膝蓋骨(しつがいこつ。いわゆる膝のお皿)に直撃して骨折、急遽帰国し手術、リハビリとトレーニングの日々を送るという試練で始まった。
「落ち込んでも仕方がない、常に“今できること”に取り組みました」
再び渡米したのは5月に入ってからで、走り込み不足への不安は否めない。
「膝はまだ万全とは言えない、どうしてもかばっているかな」と言いながらも開幕戦ハングタウンからの出場を決意した。




トップグループに離されまいとダッシュする右から3台目、718番の富田選手が見える。

 開幕レースの富田選手は、予選を24番タイムで通過すると(決勝進出40台)、決勝第2レースでは鮮やかなスタートダッシュでいきなりオープニングラップを6番手で戻ってきた。この日は総合19位。
「トップライダー達の中で走ったのは良い経験になったが、周りとのスピード差からどうしても余裕のない走りになってしまう。まずは自分のタイムを詰めていくことが課題」と分析しながらも「次に繋がる走りができました」とポジティブだ。翌週の第2戦グレンヘレンでは、第2レース序盤に転倒車との接触により順位を大きく後退、オープニングラップを29番手通過というアクシデントにも、その後の30分を冷静に追い上げて総合14位、自身のAMAベストリザルトを更新した。
「前回よりも良い感覚で走れました。膝のほうも大丈夫です」と手応えを実感しつつも「大ジャンプでは力が入ったし、路面が荒れてきて良いラインが探しきれなかった。もっと攻める走りをしたいし、最後までケガをしないで行きたい」




Team HRCピットで、長年のコンピで息もぴったり合った伊藤昌弘メカニック(左)と。
●富田俊樹選手 公式webサイト 

これがAMAの洗礼!「まずはポイント獲得を目標に」──
渡辺祐介



本人も「大きくてビックリ!」第2戦グレンヘレンの名物ビッグジャンプを飛び越える渡辺選手。

 250MXクラスでゼッケン101番をつける渡辺祐介選手は、福島県出身の22歳。昨年の全日本モトクロスIA2チャンピオンを獲得し、幼い頃からの夢だったAMA参戦を実現した。3歳でモトクロスを始めた当初からヤマハ系ライダーで、今年もヤマハサポートチーム『3D Racing』からエントリーしYZ250Fに乗る。
 これまでオフシーズンにカリフォルニア合宿経験はあっても、AMA1年目の渡辺選手にはすべてが初めて尽くしの試練の連続だ。
「コースの荒れ方が凄い、日本とは全然違う!」
「着地の衝撃が半端ない!」
広大で険しいレイアウト、日本にはない土質にもジャンプの大きさにもルーキーらしい驚きを隠さない。とはいえいつまでも驚いているわけにもいかず、まずは朝の予選タイムアタックで40番タイムまでに入ることから懸命に取り組み、決勝に進出。
開幕デビューレースはスタートの出遅れが響き、後方グループの中でもがきながらも、後半に粘って追い上げた。
「コースに対応できないまま終わってしまった感じ。午後は自分なりに考えながら走りましたが……」
結果は30位/26位で総合31位。続く第2戦では25位/22位、総合24位と奮闘して、ポイント獲得(20位以内)へ向け一歩前進した。
「みんな速いしコースも凄いし、荒れる路面に対応していかないと。わかっていたつもりだが予想外に厳しい」
今後の課題は尽きないが、渡辺選手のモットーは「最後まで攻め続けるライディング」だ。スタートで後方になっても、容赦なくパスされても、アクセルは絶対に戻さず食らいつく。
「もっと思いきり攻めたい。まずはポイントゲットが目標です」





●ヤマハ発動機 渡辺祐介選手AMA MX参戦スペシャルサイト

アメリカンドリームを賭けて
世界トップの走りが激突するAMAプロモトクロス


 モトクロス大国アメリカでは、1月から5月のスーパークロスが終わるとわずかなインターバルの後にプロモトクロスが開幕する。スタジアム開催のスーパークロスと異なり、アウトドアの雄大なコースはまさに圧巻。そしてディフェンディングを目指す昨年のチャンピオンと、新タイトル獲得を狙うトップライダー達による、まさに命がけのバトルが繰り広げられる。予選から敗者復活、決勝2レースを1日の中で消化するためスケジュールが非常にタイトで、ライダーは朝イチからタイムを出していく速攻力と、変化する路面への対応力が問われる。アメリカンライダーばかりでなくドイツやフランス、ニュージランド、そして日本からも参戦して世界屈指のハイレベルな大会だ。キッズレースを勝ち抜き、ジュニアレースで頭角を現し、アマチュアレースでトップを極めたエリートだけがプロのスタートラインに並ぶことができる。



怪我から復帰、強いケン・ロクスンが帰ってきた。トマックとのクールなトップバトルにファン歓喜。 第3戦を終えて250MXはジェレミー・マーチンがポイントトップに浮上、絶好調の波に乗った感じ。


昨年の250MXチャンピオンでゼッケン1をつけるザック・オズボーン、開幕は好調だったが第3戦でまさかの負傷。 スーパークロスチャンピオンのジェイソン・アンダーソン、第2戦まで健闘するもその後の練習で負傷のニュース。

450MXでゼッケン1をつけるジョン・トマックの勢いが止まらない。第3戦まで連続トップフィニッシュでポイントリードを広げている。

 ファクトリーライダーは高額所得の人気スターだ。人間離れしたスピードでファンを魅了し、会場に大歓声の渦を沸き起こす。レースの合間におこなわれるサイン会にも長蛇の列ができる。現在シリーズ3戦を終了して450MXではディフェンディングチャンピオンのトマック(アメリカ/カワサキ)が、250MXはマーチン(アメリカ/ホンダ)がランキングトップに立っているが、残り9戦ありタイトルの行方はまだまだとても楽しみだ。そして日本を代表する若武者2人がどのような成長を見せてくれるか、目が離せない。




●AMAプロモトロス公式サイト