西村 章

今年のフランスGPは、例年になく三日間を通じてスッキリとした好天に恵まれるレースウィークだった。いつもなら週末のどこかで必ず雨が降り、どんよりとした曇天と5月中旬とは思えないような肌寒さのなかで推移していくのだが、今年は早朝や日没後こそやや冷えるものの、爽快な青空の下ですべてのセッションが行われた。

 そのかわり、というわけではないが、転倒が多発した。三日間の3クラス合計で述べ転倒数は109。三桁に到達するのは昨年のミザノ以来。そのミザノも例外的なケースであったことを考えれば、今回の転倒数は近年でも突出した部類といって良さそうだ。幸いにも深刻な事態に至った例こそなかったが、日本人選手も何名かが転倒劇の犠牲になった。

 その詳細は後述するとして、MotoGPクラスの決勝レースはマルク・マルケス(Repsol Honda Team)が優勝。第3戦オースティンから三連勝で、しかもなかなか勝てなかったル・マンでの勝利だから、意義は大きい。今年のホンダRC213Vのまとまりの良さに加え、三連覇を狙うマルケスの勢いと機智が見事に噛み合った、隙のない優勝劇となった。

 2位に入ったダニロ・ペトルッチ(Alma Pramac Racing/Ducati)も、今年のドゥカティの高い戦闘力を存分に引き出した成果と言えそうだし、3位のバレンティーノ・ロッシ(Movistar Yamaha MotoGP)は、得意コースのルマンで表彰台を獲得して、苦戦が続いたヤマハファクトリーの巻き返しを図るべく、なんとか命脈を保って活を入れた、というところだろうか。ロッシ自身はレース後に、今回の表彰台はコース特性に助けられた側面が否めないことを認めているが、気になるのは昨年当地で優勝を飾ったチームメイトのマーヴェリック・ヴィニャーレスが、その得意なはずのコースで、あまりいいところなく7位でレースを終えたことだ。


勝利数でケーシー・ストーナーに並んだ。(マルク・マルケス) 来季の去就に注目が集まる。(ダニロ・ペトルッチ) 開幕戦以来の表彰台。(バレンティーノ・ロッシ)

 ヴィニャーレスはレース後に「7位のような位置ではなく、トップでレースを終えたかった」と、ストレスの溜まるレース展開であったことを隠そうとしなかった。
「全力でがんばったけど、序盤から悲惨で全然加速できなかった。まるで中古タイヤで走り始めたような状態でフィーリングが全然なく、皆にどんどん抜かれてしまった。今回はいいレースをしたかったのに、前戦のヘレスよりも悪かった。なんだか、レースごとにどんどん悪くなっていくよ……」
 と、まったくいいところナシだった様子。流れが変わるのは、えてしてほんの小さなきっかけだったりするのだろうが、次戦のムジェロで果たして何かを見つけることができるだろうか。

 陣営のポテンシャルを測る指標として、今回のレースで表彰台を獲得した選手のチームメイトのリザルト、という面で見てみると、上記のとおりロッシ(3位)のチームメイト・ヴィニャーレスが7位であったのに対して、優勝したマルケスのチームメイト、ダニ・ペドロサは5位。
「悪くないリザルトだったと思う。グリッド(4列目10番手)から5つ上で終えることができたのは良かったと思う。(前回のハイサイド転倒の影響により体調がまだ完璧ではなく)レースを完走するのが最重要事項だったので、次のレースに向けていい自信になった。自分のペースは少し離れていたけど、この週末では良くなってきたし、すべてを思いどおりにできたわけじゃないとはいえ、チームがとてもがんばってくれた」
 と、ポジティブな結果であった様子。

 また、2位に入ったペトルッチのチームメイト、ジャック・ミラーは4位。第2戦アルゼンチンと並び今シーズンベストタイのリザルトだが、追い下がっていったアルゼンチンよりも、追い上げ続けてレースを終えた今回の方が、内容的には良かったといえるだろう。
「あと2~3周あれば3位を奪えていたかもしれない。もっと周回数があれば、と生まれて初めて思ったよ!」
 と笑顔で語る表情が、彼の手応えを何よりも雄弁に物語っている。

ランキングは2位なのですが……。(マーヴェリック・ヴィニャーレス) この人の来季の去就にも注目。(ダニ・ペドロサ) 開幕以来ずっとトップテン。(ジャック・ミラー)
2019/2010の契約更改を発表。(アレイシ・エスパルガロ) りんちゃんも二年契約更改。(アレックス・リンス) ドビ更新は既定路線。もうひとりは……??(アンドレア・ドヴィツィオーゾ&ホルヘ・ロレンソ)。

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 さて、冒頭で軽く触れた日本人選手たちの転倒にざっと触れておこう。

 走行初日の金曜は、午前のMoto3クラスFP1で佐々木歩夢(Petronas Sprinta Racing)がセッション終盤に3コーナーでハイサイド転倒。メディカルチェックを受けた結果、骨折はないと判明したものの、右踵などを痛めた様子で、午後は鎮痛剤を服用して走行。土曜はさらに注射で患部の痛みを抑えて、予選に臨んだ。しかし、感覚が麻痺してシフトミスも生じやすくなるため、日曜の決勝は飲み薬の痛み止めのみで対応。8列目24番グリッドのスタートから、ポイント圏内まであと一歩の16位でフィニッシュした。
「集中していればそんなに痛まなかったし、足が理由で遅くなったりはしませんでした。スタートして1周回ってきたときにトップグループが6秒くらい先だったんですが、セカンドグループは4秒差程度なので一所懸命追いつこうと思って走りました。ペースもトップグループと同じくらいのタイムで走れました」(佐々木)

 鳥羽海渡(Honda Team Asia)は午後のFP2終了間際に、前にいた選手のインにねじ込もうとして11コーナーで転倒。
「無理かな……とも思ったんですが、レースではああいう展開になることもあるだろうから、ダメなら限界がわかるし、行ければ今後の経験になるので、やってみたんですけど、転んじゃいました」
 鳥羽は予選が上手く噛み合わず、9列目25番手からのスタートになったが、レースでは良いペースでラップタイムを刻みながら順位を上げて17位で終えた。

 転倒こそ喫しなかったが、真崎一輝(RBA BOE Skull Rider)は6列目16番グリッドという中段からの決勝レーススタート直後に、タイトな切り返し区間の4コーナーでコースアウトし、危うく転倒しそうになったところをかろうじて膝と肘でセーブした。
「あれで最後尾まで落ちて、そこから上げて行こうと思ったんですが、同じところでまたフロントが切れて転びそうになり、その後もずっとフロントに症状が出てタイムを上げきれず攻めきれず、という状態でした」(真崎)

よくがんばりました。(佐々木歩夢) 予選がよければ……。(鳥羽海渡) じつはスーパーセーブ。(真崎一輝)

 結局、Moto3で今回転倒絡みのリスクがなかったのは鈴木竜生(SIC58 Squadra Corse)のみ。鈴木は5列目14番グリッドからスタートし、9位でレースを終えた。
「1周目に後ろのライダーとバトルになってしまい、フロントグループに逃げられたので、それでレースが決まってしまった感がありました。10台くらいの第2集団の前方でゴールできたので悪くなかったものの、最初からもっとアグレッシブに攻めていればトップグループについて行けたかもしれないから、それが今回の反省材料です」(鈴木)

 Moto2クラスの長島哲太(IDEMITSU Honda Team Asia)は、決勝レースでポイント圏内を争ってバトルを続けていた13周目の最終手前、13コーナーでフロントから転倒を喫した。
「自己ベスト付近のタイムでずっとラップできていました。ロウズとバルベラのグループに追いついたときに、彼らのタイムが1秒くらい遅かったので、すぐに抜いて前を追いかけなきゃと思い、ロウズを抜いて、抜き返されないようにレイトブレーキをしたらそのままフロントがいなくなってしまいました。悔しいけれども、自分のミスです。チームに申し訳ないことをしましたが、予選からは考えられないくらいペースを上げられたのはポジティブです。予選が良ければもっと上に行けそうなので、そこが相変わらずの課題です」(長島)

 そして最高峰のMotoGPクラスでは、中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)が金曜のFP2でハイサイドを転倒し、着地時に右足を強打。
「骨折はなかったのですが、くるぶしと、特に強く打った踵に痛みが出ています。走っているときはアドレナリンが出ているのでライディングに大きな問題ではないんですが……」
 といいながらも、土曜の走行は痛み止めを飲んで走行。7列目19番グリッドから決勝レースを迎えた。
「15周目くらいからフロントタイヤが厳しくなり、序盤にできていた強いブレーキングがレース中盤から後半はかなり難しくなってきました」
 それでもなんとかポイント圏内でゴールし、15位フィニッシュ。
「足は、痛み止めも使わずテーピングだけで走りました。内出血はしているけど、大丈夫です」

トップテンではもはや喜べない。(鈴木竜生) 転倒はバトルの結果。(長島哲太) 4戦連続ポイントスコア。(中上貴晶)

 というわけで、第5戦ル・マンの現場からは以上です。

 次はシーズン最大の山場のひとつ、イタリアGP。コース外でも様々な動きがありそうで、何かと慌ただしいレースウィークになりそうである。

次戦、イタリアGP(ムジェロ)は6月3日決勝です。

 




■2018年5月20日 
第5戦 フランスGP
ブガッティ・サーキット

順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #93 Marc MARQUEZ Repsol Honda Team HONDA


2 #9 Danilo PETRUCCI Alma Pramac Racing DUCATI


3 #46 Valentino ROSSI Movistar Yamaha MotoGP YAMAHA


4 #43 Jack MILLER Alma Pramac Racing DUCATI


5 #26 Dani PEDROSA Repsol Honda Team HONDA


6 #99 Jorge LORENZO Ducati Team DUCATI


7 #25 Maverick VIÑALES Movistar Yamaha MotoGP YAMAHA


8 #35 Cal CRUTCHLOW LCR Honda CASTROL HONDA


9 #41 Aleix ESPARGARO Aprilia Racing Team Gresini APRILIA


10 #42 Alex RINS Team SUZUKI ECSTAR SUZUKI


11 #44 Pol ESPARGARO Red Bull KTM Factory Racing KTM


12 #55 Hafizh Syahrin Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA


13 #21 Franco MORBIDELLI EG 0,0 Marc VDS HONDA


14 #38 Bradley SMITH Red Bull KTM Factory Racing KTM


15 #30 Takaaki NAKAGAM LCR Honda IDEMITSU HONDA


16 #12 Thomas LUTHI EG 0,0 Marc VDS HONDA


17 #17 Karel ABRAHAM Angel Nieto Team DUCATI


18 #10 Xavier SIMEON Reale Avintia Racing DUCATI


19 #45 Scott REDDING Aprilia Racing Team Gresini APRILIA


20 #53 Tito RABAT Reale Avintia Racing DUCATI


21 #5 Johann ZARCO Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA


22 #4 Andrea DOVIZIOSO Ducati Team DUCATI


23 #19 Alvaro BAUTISTA Angel Nieto Team DUCATI


24 #29 Andrea IANNONE Team SUZUKI ECSTAR SUZUKI



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