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■文:佐藤洋美 ■写真提供:TSR、EWC

藤井正和総監督率いるTSRホンダフランスが、栄光のル・マン24時間で優勝した。2016年初挑戦のル・マンで3位表彰台に上がり、昨年は5位。3度目の挑戦で悲願達成となった。日の丸が揚がり、君が代が流れた。「今回の優勝は通過点にしか過ぎない。鈴鹿8耐でEWCチャンピオンを獲得したい」と藤井総監督は誓った。

『2017/2018FIM EWC世界耐久選手権シリーズ』第2戦となる2018年のル・マン24時間がフランスのブガッティサーキットで開催されました。昨年は日本からトリックスターとTSRホンダの2チームが参戦、またライダーではヤートヤマハから野左根航汰が参戦しました。しかし今大会、トリックスターは参戦を見合わせ、TSRホンダはホンダフランスとコラボレーションし、TSRホンダフランスとして参戦。ヤートヤマハには野左根に代わって、藤田拓哉が参戦しました。藤田は予選後に腹痛によりレース参戦はキャンセル、第4ライダーが代わって出場しましたが、決勝は転倒リタイアとなってしまいます。
 
 TSRは、アラン・テシュとフレディ・フォレのフランス人にジョシュ・フック(オーストラリア)の3人で挑みました。予選初日は各ライダーの合計タイムで順位が決まり、暫定総合2番手につけます。最終予選セッションには出走するだけとしてタイムアタックはせず、周回数も抑え、決勝だけを見据えた作戦を取りました。
 最終グリッドは6番手となりましたが、24時間耐久では予選グリッドは、大きな問題ではありません。決勝への確認やタイヤ選択など、やらなければならないことをこなしたTSRは、堂々とグリッドに着くのです。

 

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すべてのライダーが24時間後のゴールを夢見る。

 スタートライダーのフレディが好スタートを決め、3~4番手を走行、強豪ライバルがひしめく中、トップグループで周回を重ねました。6時間経過の段階で全チームを周回遅れにする速さを見せたのは、昨年のEWCチャンピオンであり、昨年のル・マン24時間、開幕戦ボルドール24時間の勝者であるGMT94(フランス)。ここでも王者の貫録を示していたのですが、18時間経過を目前にマシンが大破し脱落。2番手にいたTSRホンダフランスがトップに浮上、そのまま悲願の優勝へと突き進みました。
 
 スクリーンの破損からカウルの交換や、ライダー起用のタイミングや周回数の変更など、すべてが思い通りに進んだわけではありませんでした。アランは、昨年のボルドール24時間での大怪我から復帰してレースに挑みましたが、その後、全日本ロードレース選手権最終戦へのスポット参戦のために鈴鹿を訪れ、そこでクラッシュ。また怪我を負ってしまい、辛いリハビリを経て、ここル・マンが復帰レースでした。過酷な戦いである24時間の終盤、体力の消耗が激しく周回数や順番を変えるなどの対応が必要になりました。ライダーたちがお互いを思いやり、助け合い、それをスタッフが支え、困難を乗り越えたのです。

TSRホンダフランスは3名のライダーで戦う。スタートライダーのフレディ・フォレ(左から2人目)とアラン・テシュ(左端)はベテランのフランス人ライダー。ジョシュ・フック(右端)は24歳のオーストラリア人だ。

好スタートを切ったフレディは3~4番手をキープして周回を重ねて行く。

 TSRホンダフランスのスタッフには、日本人とフランス人、そしてスペイン人もいて多国籍ですが、表彰台の真ん中には、堂々と日の丸が上り、君が代が流れたのです。
 日本チームが勝利したのは初めてで、タイヤを供給するブリヂストンタイヤにとっても初の優勝となり、日本の力を示す戦いでもありました。
 ル・マンもボルドールも24時間耐久はフランスのお家芸であり、フランス国歌が流れるのが常で、観客総立ちの合唱が、圧倒するように響くのですが、今回は、日本人スタッフが、声の限りに君が代を歌いました。完走出来ただけでも、涙が出そうになる24時間の戦いで、表彰台に上がることはこの上ない名誉なことです。ル・マンで勝つには、異次元というか、奇跡というか、とてつもない力と、大きな運を味方につけなければ成しえないことという気がします。だから、どでかいことをTSRホンダフランスはやってのけたのだなと思うのです。

昨年のアランは怪我に泣かされた。祖国で開かれるル・マンが彼の復帰戦だった。 24時間の長丁場では何があるか分からない。圧倒的な速さをみせていたGMT94が18時間を前にリタイア。

 TSRは、2016年初挑戦のル・マン24時間耐久で3位表彰台に上がり、昨年は5位。そして3度目の挑戦となった今季、遂に勝利を手にしました。そして、目指すは、EWCチャンピオンです。24時間耐久は、8時間と16時間の経過順位でボーナスポイントが加算されます。TSRホンダフランスは、その通過ポイントを加算、優勝したことで、現在、世界ランキングトップとなりました。ここから、5月のスロバキア8時間と6月のオッシャースレーベン8時間を戦い、7月の最終戦鈴鹿8時間耐久へと挑みます。

 

鈴鹿8時間でもお馴染みのジョシュにとっても、もちろん初めてのル・マンの勝利だ。 24時間後に勝利したのは、TSRホンダフランスだった。

 藤井正和総監督はこう語りました。
「スピードの向こう側に別の世界があり、それを掴めたような気がする。パーァーと目の前が開けて、世界チャンピオンに挑むという人生を賭けた夢が叶う醍醐味を味わえたような気持ちでいる。24時間には高い山があり、深い谷があり、これは8時間では味わうことが出来ない戦いだ。それに挑戦し、国境を越えた仲間と勝つことが出来た。勝てるということを証明出来た。成し遂げることが出来た。それを、フランスに伝えることが出来たことは、日本の誇りだと思う。表彰台の中央に日の丸が上がり、君が代を聞いた時は思わず涙がこぼれるくらい震えた。我々は今年のEWCでチャンピオンになる!ということが目的であり、今回の優勝は通過点に過ぎない。鈴鹿8耐でチャンピオンを獲得したい」
 日本チームがEWCチャンピオンになれば、初の偉業となります。それに向かってTSRホンダフランスは挑み続けるのです。

 

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《2017/2018FIM世界耐久選手権(EWC)シリーズ》

第3戦 5月12日「スロバキアリンク8時間耐久レース」( スロバキア・土曜決勝)
第4戦 6月9日「 オッシャースレーベン8時間耐久レース」( ドイツ・土曜決勝)
第5戦 7月29日最終戦「鈴鹿8時間耐久レース」 鈴鹿サーキット(日本)