オオカミ男のひとりごと

HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。
時折、かかってこい! と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250?、エイプ750?。
第64回 海外編第11章 Train Train

 
電車はラムジー駅からゆっくりとスタートした。そう、ゆっくりと。そしてそのままゆっくりと進んでいく。ゆっくり、ゆっくりと。それにしても・・・実に遅い!
何なんだこの電車は!? 全然、加速する気配がない。
その遅さはテーマパークの遊覧鉄道並みである。まさかこの速度のままダグラスへ向かうのか? そんな事を考えていたら最初の駅が見えてきた。
これは駅と呼んでいいものなのか? スゲェ、小せぇ。日本の寒い地方によくある屋根付きのバス停といったレベルのものだ。ラムジーの駅もたいがいではあったがあれがかなりまともに思えてしまう。電車は相も変わらずにゆっくりと各駅に停まりながら進んでいく。
それでも気が付けば車内は満席になっていた。しかも犬まで乗ってるし。言っておくがチワワやプードルといった小型犬ではない。ちょっと大きなダルメシアンだ。おまけにコイツがなぜかオレに妙に懐きやがる。まぁオレにとって犬は親戚筋のようなものなので迷惑というわけではない。だが他の客は大丈夫なのか? オレの席の後ろにある車掌室を見ると車掌はスマホ片手にゲームをしている。あまりにも自由過ぎる。さすがはマン島と言うべきか。
もともと縛りの度合いというのは問題の大きさに比例してキツくなる。日本であったならクレームの嵐が吹き荒れるようなこの車内の状況もこの島の人たちにとっては取るに足らない事なのだろう。窓の外に目をやると広大な牧草地が延々と広がっている。

 
その牧場には日本ではお目にかかれない珍しい羊が放牧されている。角が4本のマンクス・ロフタン・シープだ。前日に見たキチガイじみた街中の暴走劇とは対照的なのんびりとした長閑な光景である。速度は超スローだし。
おかげで猛烈に眠くなってきた。
乗客の妙なざわめきにふと我に返った。時計を見ると一時間近く経っている。オレはすっかり寝てしまっていた。連日の寝不足に加えて子守歌を聞かされているような環境だ。
そりゃ寝るわな。
窓の外を見てみると下の方に水車が見えた。日本のものと比べると随分とデカイ。

 
前方を見ると民家が立ち並んでいる。山の牧草地を抜けやっと街中に入ったようだ。
雨は上がり晴れ間も見えている。その後、2つほどの駅を通過して電車は終点のダグラスに着いた。30キロ足らずの距離を一時間半もかけて。
マン島の首都ダグラス。
電車が着いた駅は街の中心部となる海側にある。ここから西側の小高い丘を登ったところにTTレースのメイン会場がある。
駅を降りて最初に目にとまったのは馬だ。そしてこの馬、競走馬とかと比べるとひとまわりデカイ。しかもなんかカッコイイ。馬の後ろには鉄道車両があり馬はそれに繋がれている。
いわゆる馬車鉄道というやつである。レールは街のメインストリートの道路上に設置されている。さすがにこれは街の交通手段というよりも観光用のアトラクションといった趣が強い。それでも街の風景としては実に絵になっている。このあたりはなんか妙にイギリスっぽい。でもユニオンジャックは見当たらない。

 
駅から少し歩いた所にTTレースグッズの専門店を見つけた。この手の店はメイン会場も含めてすでに何軒か入って買い物もしている。それでもつい入ってしまう。いや、この店に限って言えば店の佇まい、看板などこれまたカッコイイのですよ。入ってみたくなるほどに。

 
店内は人がすれ違うのも難儀するほど賑わっていた。店舗スペースが狭いわけではない。
客も多いが店内の品物の量がメチャメチャ多いのだ。どうやらここはレース関連グッズの元締めのような店らしい。他で置いていない品もかなりあって気が付けば一時間近くオレはあれこれと物色していた。もちろんちょいちょいとお買い上げもいたしましたよ。
店を出たオレはレース会場の方へ向けて歩いた。何だかんだでもう夕方に近い時間だ。
レース会場へ行くのではなくそのまま夕食の買い出しでもして帰るつもりだった。急勾配の坂をのぼり切り会場前の交差点のところまできた。その交差点の角にある教会の入り口に目をやると看板が立っておりCAFEと書かれている。
ちょうどいい。一休みしたいと思っていたところである。建物は間違いなく教会なので半信半疑ではあったが入ってみると中は確かに喫茶店のようになっていた。そしてオレはこの教会で信じられないほどの素晴らしいモノを目撃する事となる。


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