オオカミ男のひとりごと

HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。
時折、かかってこい! と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250?、エイプ750?。
第63回 海外編第10章 Ramsey

 
島生活3日目の朝を迎えた。前日とまったく同じ理由で寝不足だ。今日はジョギングはしない。というよりできない。夜中に本降りとなった雨は止むどころか嵐になっていた。
外の景色は日本における台風の様相とほとんど同じだ。つまり暴風雨。
天気が変わりやすいのは四方海に囲まれた島では特に珍しいわけでもなく別にマン島に限った話ではないが変わり過ぎだろう。
一応、前日に延期となったレースが行われるかどうかは午前10時に最終決定される。
かなり無理っぽい状況ではあるが。それでももしレース決行となった場合に備えて観戦場所を決めて移動しておかないとならない。なんせ天気はヒジョウ~に変わりやすい土地柄のようですので。
出発の前に朝食をとる。メニューは先日、買い置きしておいたレトルトのカレーっぽいものである。見た目はコンビニのお弁当コーナーにあるようなカレーでパッケージにもCURRYと書かれている。それでも食ってみると味はカレーと呼ぶには決定的な何かが不足している。つまりカレーっぽいものだ。まぁ食に関してはこれだけ次から次へと自分の想像とかけ離れた味のものがでてくると逆にだんだん面白くなってきた。次は何を食べてみようかと違った意味で楽しみである。

 
朝食後、車で観戦ポイントへ移動する。依然として雨は叩きつけるように降り続いている。
オレは決めていたバラフ・ブリッジで降ろしてもらった。ひとまずはここで待機してレースが開催されるか否かの連絡を待つ。その決定が下るまでまだ1時間近くもあるのだがそれまでの間、特にする事がない。おまけにとっても寒い。雨だし。
屋根のあるバス停で雨宿りしてはいるがこのまま1時間はツラ過ぎる。
目の前にはスーパーがあるが時間をつぶせるような環境ではない。道を挟んだ反対側にやたらと人が出入りしている建物があった。なんだろうと思い近くまで行って初めてそれがパブだとわかった。
パブと言えば日本ではちょっと小洒落た飲み屋というイメージだがこっちでは軽食喫茶兼、レストラン兼、飲み屋といった感じである。
あたりを見回しても他に腰を落ち着けて待機できるような場所はない。
オレはパブの店内に入りテーブル席についた。しかし……勝手がさっぱりわからない。
やたらとキョロキョロしてみたりメニューを裏返したりと変な挙動をオレは繰り返していた。すると隣で食事していた髭面のおじさんがレジを指さして何やらオレに語りかけてくる。どうやらまずはレジへ行って注文をして来いと教えてくれているようだ。(きっとそうに違いない。)イギリス人はほかの人種に対して冷たいと聞いていたが随分と親切である。
そのあたりに関してはこの島では一括りにしない方がいいのかもしれない。
レジへ行って紅茶を注文した。コーヒーもあったがやはりイギリスは紅茶だろう。
レジから戻る最中にほかの客を見てみると朝からそれかよ!? と突っ込みたくなるような量の食事をしている。トレーの上にはソーセージと目玉焼き、豆料理、そして大量のポテト。
一瞬、美味しそうにみえてしまったが、もうオレは騙されない。ほんの少しだけ沸き上がった欲求を無視して再び席に着く。店内のテレビではちょうど天気予報が流れていた。
映し出された衛星画像ではマン島上空の雲が渦を巻いている。もう確信に近い。こりゃダメだな。
出てきた紅茶を一口啜った。体が冷えているせいもあるが普通にウマい。さてこの日、何をして過ごそうか。そんなことを考えているときレース中止決定の連絡がはいった。
もともとレースの予定がなかった日だ。特にがっかりはしない。島を観光すればいい。
問題はどこへ行くかだ。バラフ・ブリッジ周辺はただの住宅街で特に目を引くものはない。
前日、予習したことを踏まえてオレはラムジーの街へ行くことにした。
ラムジーは北と南でダグラスとは反対に位置する、島で二番目に大きな町である。
レース期間中はお祭りムードでこの日、ラムジースプリントというドラッグレースも行われる予定だ。ピックアップしてもらったオレは街の中心部であるパーラメントスクエアで降ろしてもらった。

 
この日はさすがにこの悪天候でレース中止という事もあってか人もまばらである。街中の道の左右には隙間なく店が立ち並んでいる。その多くは土産物を扱っている店だ。
どの店も例外なくマン島TTのグッズを取り扱っている。バイク屋や車のディーラーもあったがまだ時間が早いせいで開いていない。日本で見慣れているスズキやホンダの看板が立っている。何軒か店に入りちょこまかと土産を購入した。雨さえ降っていなければもう少しゆっくりと見て回りたいところなのだがあまりにも寒すぎる。雨は小雨になっていたがこの調子ではドラッグレースの開催もかなり怪しい。さてどうしたものか。少し早いがオレはもう一つの目的とともにダグラスの街へ戻る事にした。もう一つの目的、それは……電車に乗る。マン島では島のすべての街に鉄道があるわけではない。主な移動手段はやはり車かバイクだ。公共の乗り物としてはバスが中心で電車はこのラムジーからダグラスまでの区間のみである。まずは駅を見つける事からだ。用意しておいた地図を見ながら見当をつけた方角へ歩く。大きな街の駅などすぐに分かるはずとオレはタカをくくっていた。だがなかなか駅らしい建物は見えてこない。看板もないし線路らしきものも見当たらない。道を行ったり来たりする事、十数分。民家の隣に電車のような車両を見つけた。その少し離れた所に平屋の少し大きめの建屋が。

 
もしかしてあれか!? 近くまで行くと壁に小さく“RAMSEY STATION”と看板が張り付いている。わかりずら過ぎる。
中に入り窓口へ行くと人の良さそうなオバちゃんが座っていた。オレはそのオバちゃんに
「Does that train go to Douglas?」と。
言ってすぐに気が付いた。なんてアホな事を聞いているんだオレは。この島ではここからダグラスまでしか電車は通っていない。行くに決まってるじゃねぇか。だが心優しいオバちゃんはそんな無慈悲なツッコミを入れてくる事もなく、出発まであと10分ほどである事など親切に教えてくれた。チケットを買い停まっている電車のもとへ。遠目には判らなかったがこの電車、実にレトロ。かと言ってオンボロってわけではない。とってもオシャレなのですよ。

 
二両編成で車体は日本のものよりもひとまわり小さい。中に入ると車内も座席も少し狭いがなんだか妙に風情がある。

 
地図に載っているルートではTTのレースで走っているマウンテンコースの外側を通るようになる。これは予想外に楽しいかも。時間になり電車はダグラスの街へ向けて走り始めた。


[][第63回][第63回]
[オオカミ男の一人ごとへ]
[へ]