The One Moto Show

 
 アメリカ・ポートランドで「The One Moto Show(ザ・ワンモト・ショー)」が開催されました。開催は今年で9回目。毎年2月上旬に開催されることから、近年は世界のカスタムバイクシーズンの幕開けを告げるキックオフイベント的な立ち位置となっています。もちろんバイクファンが開催を待ち望み、毎回イベントとしての完成度を高め、期待を越える内容が続いた結果なのです。ここでは、そんなショーをリポートします。

■レポート・撮影:河野正士 ■The One Moto Show 

「The One Moto Show(ザ・ワンモト・ショー)」は昨年、ポートランドの中心部から、北部の古い工場地帯にある工場跡地へと会場を移転。130000平方フィートの広い敷地に200台近いカスタムバイクやビンテージバイクが並びました。今年はそのスペースをさらに広げるとともに展示車両も大幅に増加。また昨年まで入場料無料で開催されていましたが、今年からはメイン会場は有料イベントに変更(1日チケット@10ドル/週末通しチケット@20ドル)されました。その理由を主催者であるSee See Motorcycle(シーシー・モーターサイクル)のボス、Thor Drake(トアー・ドレイク)に聞くと「昨年、15000人を越える来場者を集めた。9年前にこのイベントを始めたときは、自分たちの仲間と、その仲間たちが集まる極々小さなパーティだった。しかしより多くの観客を集めるようになり、その期待度が高まるとともに、イベントとしての完成度を高め、安全性を確保する必要があった。そのために協力企業からのスポンサー費とは別に、入場料を徴収することに決めた。いままで入場無料のイベントだったから手を抜いていたわけではないが、有料イベントとしたことで、The One Moto Showのイベントとしての満足度をさらに高めなければならないと感じている」と話してくれました。昨年、僕は初めてこのイベントにやってきましたが、入場料無料でこの規模のイベントを開催していることにおおいに驚きました。

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↑ハーレーダビッドソンのVツインエンジンが小さく見えるくらい馬鹿でかいボディのカスタムマシンとモトクロッサー、それにカスタムスクーターが一緒に並べられています。この雑多で自由な雰囲気が「The One Moto Show」なのです。
↑割れた窓と剥がれた壁に覆われた古い工場跡地。一見、イベントスペースとしては不向きな場所も、そこにカスタムバイクや、それが好きな人たちが集まればこんな雰囲気に。会場内には各所にジェットヒーターが設置されていて、建物内は想像以上に暖かいです。
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↑Jon MacDowellが製作した1941年式インディアン・スカウト741ベースのカスタムマシン。eBayで手に入れたマシンを、エンジンはスペシャリストにリビルドを依頼するも、フレームやフロントサスペンションは自身でデザイン&製作されています。オイルタンクやガソリンフィルターが入るミニボトルは手吹きガラスの職人が製作したもの。それをベースにボトル上下のキャップをアルミで製作しています

 またスケジュールも若干変更されました。一昨年からタイムスケジュールに加わったダートトラックレース「The One Pro(ザ・ワンプロ)」は、日曜日の午前中から土曜日の夕方へと開催日時を移動。レースが開催されるのは、メイン会場から車で40分ほど離れた街、SALEM(セーラム)の街にあるSALEM INDOOR SPEEDWAY(セーラム・インドアスピードウェイ)であること。また近年ではアメリカはもとより欧州でもフラットトラックレースの人気が高まっていることから、メイン会場とレース会場のいずれかに、極端に観客が偏らないようにオーガナイズを試みたもの。そしてそのトライは好結果をもたらしたようです。昨年、大いに混雑した土曜日の夜は、そこにレースを開催することで、メイン会場は盛り上がりを維持したまま混雑を解消。最終日となる日曜日の午前中も多くの来場者を維持しました。こういった観客の流れは、来場者には関係がないものの、ブースを構えるスポンサーや出展ブランドには最重要の項目であり、そこへの配慮と、それによって得られた好結果によって、イベントの価値はさらに高まります。そういった観点からも、The One Moto Showの進化が伺えました。

↑今回は、ちょっと古い国産モデルをベースにした個性的なカスタムバイクが多数出展されていました。OHCのCB750はボバー・スタイルになってるし、KZ1000Customのカフェも一般的なカフェスタイルとはちょっと違うスタイルだし、CB450Blackbomberのカフェも珍しい。こんなRD250が出てくるあたりアメリカでの2スト人気を物語っています。
↑上は1985年式のホンダ Spree。日本でのモデル名は、たしかイブ・スマイル(だと思います……)自転車用パーツを駆使してイイ感じにカスタムされています。下は2008年式のホンダ Ruckus、日本でのモデル名はズーマーですね。この車両、アメリカではとても人気があります。意外にも、欧米では日本の小型車の人気も高いのです。

 今年は訳があって参加することが出来なかったのですが、SALEM INDOOR SPEEDWAYでのダートトラックレース「The One Pro」は、相変わらず強烈だったらしいです(なんで見に来ないんだよーと言う、現地にいた友人から事情聴取)。昨年参加したときは、プレスパスを得たことでオーバルトラックの中で撮影することができたこともあり、その迫力ある走りと轟音を間近に感じ、完全に魅了されてしまいました。450ccモトクロッサーベースのフラットトラックマシンを全開で走らせるプロレーサーたちの姿は圧巻。市販車ベースのマシンで争われるフーリガン・クラスはさらに人気を集めています。彼らがコースを走れば、その排気音が屋根で共鳴し、さらに爆音となって降り注ぐため、コース内で撮影していた自分はその爆音で三半規管が揺さぶられ、まっすぐ立っていられないほどでした。今年も、なんとかして観戦すればよかったと、いまさら後悔しています。

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↑これは個人的にかなり唸った1台。じつはこのマシン、EVバイクなのです。製作したのはオリジナルのキャスティングパーツなどを展開するドイツのWannabe-Choppers EVバイクは味気なくてカスタムシーンには馴染まないという先入観を払拭したくてこの車両を造ったとビルダーのリッキーが話してくれました。ハブinモーターをリアに使用。シート下にリチウムバッテリーを仕込み、その下のジョッキーシフトのようなレバーがON/OFFスイッチ。フレームのパイプ以外、外装類やフレームラグ(フレームの繋ぎ目)など、そのほとんどが砂型から起こしたキャスティングパーツと言うから驚き。デイリーユースを考慮して製作した訳ではないから乗り心地は良くないしバッテリー容量も少ないらしいですが、それでも軽量&スリムで、このスタイルから想像できないほど軽快に走り、ワインディングも楽しめるそうです。エンジンはモックアップで、異なるデザインを搭載することもできるとのこと。
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↑そしてこちらもEVバイク。製作したのは、サンフランシスコをベースにEVオフロードバイクを製造販売するALTA MOTORS。アメリカのEVモーターサイクルのトップブランドですね。そのオフロードEVバイクのバッテリー&モーター、そしてメインフレームをそのまま使用。そのアルミ製メインフレームにリアアームを追加し、前後ホイールやフロントサスペンションを変更して製作したランドレーサーです。言ってみればファクトリーカスタムなのですが、終業後エンジニアたちがコツコツと造りあげたプライベートカスタムのようなマシン。ホンダCB350用のカウルが装着されているなど、最新のコンポーネンツを持ちながら、ビンテージスタイルを造り上げているのが興味深い。上の、Wannabe-Choppersのマシンとのコントラストも非常に面白いですね。

 スポンサー陣にも変化がありました。昨年メインスポンサーとなったハーレーダビッドソンは、そのままメインスポンサーを継続。しかしそれ以前に2年ほどメインスポンサーを務め、昨年はサブスポンサーだったBMWはリストから姿を消しました。かわってヤマハがスポンサーリストに加わり、大きなスペースを確保。一般エントリーされたヤマハベースのカスタムバイクとともに、欧州で成功を収めたカスタムプロジェクト/Yard Built(ヤードビルト)のマシンたち、そして新型ネオレトロモデルであるXSRシリーズとSCR950を展示しました。ヤマハUSAの担当者に話を聞いたところ、米国市場がネオレトロ系に大きく舵を切ったわけではないが、XSRシリーズやSCRシリーズなどヤマハの新型車と親和性が高いニューウェーブカスタムシーンと融合を図り、注意深くその動向を見守りたい、と現状を話してくれました。

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↑スポンサーに名乗りを上げ、広い展示スペースを確保したヤマハ。スポンサーとしてThe One Moto Showに参加したのは今回が初めてです。ヤマハUSAはこれまで、欧州で成功を収めたカスタムプロジェクト/Yard Builtから距離を置いてきました。欧州と北米のマーケット動向は僕らが想像する以上に異なっていて、相容れなかったと言うのがその理由でした。しかしここ最近はマーケットバランスが変化。北米でネオクラシックモデルシリーズの販売がスタートし、そのプロモーションに欧州で成功を収めたYard Builtのプラットフォームを使用した、という感じでしょうか。ヤマハUSAが、今後どういった動きを見せるのかにも注目したいです。
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↑欧米のカスタムバイクショーでは、カスタムバイクだけにとどまらず、バイクカルチャー周りのアート作品やアートカルチャーとの融合が多く見られますが、ここThe One Moto Showでは、そのアート率が非常にたかいのが特徴です。どれも個性豊かで、ついつい見入っちゃう。本当に楽しいです。
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↑ヘルメットをキャンバスに見立て、ペイントを施したり新たな造形を付け加えてみたりと、そんな試みが「21Helmet 」というヘルメットアート・エキシビション。数年前に開催され、その作品はThe One Moto Showの主催者であるSee See Motorcycle&Cafe のカフェに展示されています。今回は、その新作が展示されていました。パーツやオリジナルアイテムを展開するブランド、Biltwell の「Lane Splitter」という新作フルフェイスヘルメットが題材になっていました。

 また今回は、日本のデニムブランド「IRON HEART/アイアンハート 」と愛知のカスタムファクトリー「Ken’s Factory/ケンズ・ファクトリー 」がコラボレーションし、アメリカで展開する新ウエアブランド「IRON HEART IGNITION/アイアンハート・イグニッション 」が、この会場にブースを展開しました。アメリカでのプロモーションの出発点として、あえてこのイベントを選び、準備を進めてやってきたのでした。The One Moto Showが、アメリカ進出を試みるインターナショナルなブランドにとっても重要な位置づけとなって居ることもじつに興味深いです。

↑IRON HEART/アイアンハートは、21オンスデニムを中心とした、極厚デニムパンツやカジュアルアイテムを展開しているブランド。欧州や北米のデニム通にも、その名前が通っています。またKen’s Factory(ケンズ・ファクトリー)は愛知を拠点とするカスタムファクトリーでありながら、米国ロングビーチにオフィスを持ち、米国のパーツ流通大手、Drag Specialties(ドラッグ・スペシャリティーズ)が一押しするビレットパーツブランドでもあるのです。今後の展開に注目です。
↑ポートランドが拠点のライディングバッグブランド、Velomacchi(ベロマッキ )は、ヤマハUSAやヨシムラUSAのほか、ドローンのトップブランド、djiとコラボした、バイクとドローンを融合したプロジェクトを進行中とのこと。YAMAHA XSR700をカスタムしつつ、その車体からdjiの小型ドローンを発着させ、バイク遊びとの融合を計るそうです。
↑こちらは女性のために、女性が造るライディングウエアブランド、ATWYLD(アット・ワイルド )。フェミニンでありながら、ライディングに適した機能と安全性を追求したアイテムを展開。女性向けのイベントも開催しています。

 来年、開催10回目のアニバーサリーを迎えるThe One Moto Show。その一大イベントを前に、今年は地盤を固めるかのように新しいことにチャレンジし、成功を収めたと言えるでしょう。先に出た主催者のThor Drakeは、来年の10周年記念イベントには、エントリー車両や出展ブランドをさらにセグメントすることで、より質の高い、そしてより楽しいイベントを目指すと語っていました。そんなことを聞けば、いまから来年が楽しみで仕方がありません。開催は2019年の2月上旬です。

↑主催者であり、See See Motorcycle&CafeのボスでもあるThor Drake(トアー・ドレイク)。いまや2件のSee See Motorcycle&Cafe(ポートランドとリノ)、それにKTMディーラーを運営しています。