SUZUKI SV650X 試乗

 
 SV650X ABSは、御存知の通り、VツインネイキッドスポーツのSV650 ABSがベース。エンジンやスチールトラスフレームなど多くを共有している。丸いフロントカウルの顔つきは写真で見るよりは小顔だ。その丸いフロントカウルと燃料タンク下側に新設されたサイドカウルによるXだけに与えられたルックスは面白い。
 前斜め45度くらいのアングルから眺めると、サイドカウルとの繋がりはあまり感じずに、小さなフロントビキニカウルが独立して見える。ところが、視点が真横、サイドビューに近くなると、ハンドルマウントのビキニカウルのラインと、サイドカウルのラインが繋がって、ハーフのロケットカウルっぽく見えてくる。

■試乗&文:濱矢文夫 ■撮影:依田 麗
■協力:スズキ 

ライダーの身長は170cm。写真の上でクリックすると片足時→両足時、両足時→片足時の足着き性が見られます。
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 スズキ自身がこのオートバイの説明で、“ネオレトロ”という言葉を使っている。ネオレトロとクラシックスタイルは違うもの。昔のモデル風でなくても、懐古的なエッセンスを持った新しいスタイルがネオレトロ。ビキニカウルにある、長円が縦に並んだスリットは、1980年の鈴鹿8耐で優勝したヨシムラスズキGS1000Rのスリットを彷彿とさせて、昔を知っている人にとってはニクイ演出だ。シート表皮がタックロールになっているのもレトロ感を醸し出す部分。それらや、ステップ周りやトップブリッジなどのブラック化によって、SV650 ABSとは別のオートバイだと思わせることに成功している。
 
 外装以外で、もうひとつ大きく違うところがある。それはシートに跨ってハンドルグリップを掴むとすぐに分かる。アップされたパイプハンドルで背筋が立った楽ちんなポジションのSV650 ABSとは違い、掴む位置がこぶし1個半くらい下になる、セパレートハンドルだからだ。前傾姿勢はキツイという感想にはならないけれど、普通のSV650 ABSと比べると、大幅に低く身構える。最近はセパレートハンドルでも、グリップが高めに位置する車種が多い中、これは、正当派のセパレートハンドルといった感じ。ハンドルバーは適度に開いた状態で、身長170cmでやや腕が短めの自分でも肘に余裕があり遠くはない。何よりシート前側の形状から燃料タンクに続くラインが股ではさみやすく、ニーグリップの安定感がいいので、そこできゅっと車体をホールドすれば、腕に力を入れる必要はほとんどない。余談だがセパレートハンドルで腕が痛くなりやすい人は、ニーグリップを意識していない場合が多い。
 
 シート高はスペックでネイキッドのSV650 ABSより5mm高い数値だけれどクッションの形状は変わらないと思えた。これは異なるシート表皮の差だろう。細い車体と角を落としたシート前側形状で、足が素直に地面へ伸びる。届く足裏の面積は両車の違いが分からない。両足だとべったり接地とはいかないけれど、力が入れられる拇指球はしっかり届く。ハンドルを掴んだ姿勢にすると、より前かがみになることで、身体の重心が前にきて、もっと足の指に力が入る踏ん張り。SV650 ABSのどっしりとした感じとは違うけれど、実質、それによって足つきはマイナスにはなっていない。
 
 つや消し黒で雰囲気が違うステップは、アップハンドル版SVと同じ位置。前傾姿勢になって、足を載せる位置が前すぎると感じるのではないかと思っていたが、意外なほど違和感がなく、しっかり踏み込めて窮屈ではない。セパレートハンドルで、このワイルドなスタイルからすると、もっとバック+アップのステップでもいいかも、と個人的に思いもするが、長距離移動での快適性や、幅広い体格のライダーにマッチすることを思うと、納得がいくものだ。開放的なアップハンドルと違い、視線が低く、より車体によりそうカタチで走るコンパクトな乗車姿勢はスポーティーで、またがってもSV650 ABSと異なる雰囲気だ。

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 水冷Vツインエンジンはスペックなども含めSV650 ABSと同じもの。しかし、なんというか、姿が変わると、はっきりと伝わってくるVツインのビートと歯切れの良い排気音がより勇ましく思えてくるから面白い。645ccで大排気量車より比較的トルクが大きくなりすぎていないってところもプラスになって、街中などで使うことが多い低回転域では、良い意味でレスポンスが鋭すぎず、でもダルでもない。これによって、出だしからスムーズに加速するけれど、スロットル開閉でギクシャクしない。このイージーさはベースモデルから受け継いでいる良いところだ。幅広いライダーに薦められる。回転を上げていくと、6千回転くらいから力強さを増して、8千回転くらいから一段と気持ち良い加速。約1万回転でレブリミット。すーっと滑るように伸びやかな加速をするのとは違い、パタパタっと両足で地面を蹴飛ばして全力疾走するようなフィール。
 
 アップハンドルよりフロントタイヤに荷重がかかるので、誰でもコーナー侵入でダイレクトな動きを体感しやすいハンドリング。よりフロントタイヤの旋回力とグリップが分かりやすい。それでも機敏すぎるなんてことはまるでなく、深くリーンしていっても安定している。トルク変動によってグラッと倒れるようなこともない。太すぎない前後のタイヤを使ってヒラヒラっと軽快に走る動きはスリムなVツインエンジンと車体に合っている。ブレーキの効きも充分で不満はない。ビギナーでもコーナーリングを難しく感じさせず、実際に不安定な動きになりにくいだろう。フロントフォークが新たにプリロードアジャスターを装備したものになったので、もっとスパッっと倒れ込むようにするなど増えた前荷重に対する自分好みの設定に変更できるのもいいね。
 
 SV650X ABSはSV650 ABSの見た目をただネオレトロにしただけのように思う人もいるかもしれない。基本はほぼ同じなのだから、それは、大きな意味で間違いではないが、乗ってみると見た目からくる印象よりはっきりとした違いがある。特別な装備を持たず、高性能な前後サスペンションでもないけれど、バランスが良く気持いい走りを持ったSV650 ABSが下敷になっているのがミソ。SV650X ABSは、そこから乗り味と見た目の個性を強めたメーカーカスタマイズモデルである。
 
(試乗・文:濱矢文夫)
 

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丸いカタチが特徴的なビキニカウルは、ヘッドライトの下側はカバーしておらず、カウルというよりバイザー的である。SV650 ABSのメーターバイザーと同じようにマウントされ、ヘッドライトと一緒にハンドルを切った方向に動く。ヘッドライトはSV650 ABSと同じもので、H4バルブ(60/55W)を使ったマルチリフレクター。ヘッドライト下部には東京モーターショー2017で飾られていたものと同じように2つのLEDフォグランプ(4000カンデラ、6000ケルビンでやや青い光)がオプションで追加できる。 フロントカウルはフォークのインナーチューブまで回り込むようにカバーして新設のサイドカウルとの視覚的連続性を出している。ウインカーもLEDではなく通常のオレンジバルブ。左右のミラーはアップハンドルに慣れていると腕の近くに感じるが映す範囲は充分。車体色はガンメタリックに近いようなメタリックグレー。このオールトグレーメタリックNo.3のみの設定。オールドグレーメタリック系はスズキの人気色である。燃料タンク容量は14L。マイナーチェンジされたSV650 ABSと同様に“SUZUKI”ロゴが入る。フレームはスチールトラスのダイヤモンドタイプ。
楕円パイプを使ったスチール製スイングアームと組み合わせられるリアサスペンションは、モノショックを使ったボトムリンク式。前のステッププレートとペグ、そしてタンデム用のペグがブラックになっているのもSV650 ABSと違うところ。タイヤは前と同じくDUNLOP ROAD SMARTⅢで、サイズは160/60ZR17M/C(69W)。 90年代終わりに登場したSV650/Sから進化しながら受け継がれてきた水冷90°Vツインエンジン。アルミ鋳造シリンダーは放熱性と耐摩耗性にすぐれたSCEM(Suzuki Composite Electrochemical Material)メッキを採用してフリクションを低減。ピストンはスカート部にレジンコーティングを施している。スズキお得意のひとつのスロットルボディに2枚のバタフライバルブを備えたSDTV(Suzuki Dual Throttle Valve)燃料噴射装置を採用。発進時に回転数が落ち込んで乗りにくくならないようローRPMアシスト機能がある。 車名とフロントフェンダーに入った文字から分かる通り、ABSは標準。正立フロントフォークのインナーチューブ径はφ41mm。ダブルディスクブレーキのローター径はφ290mm。5本スポークの17インチアルミホイールに履いている純正タイヤはDUNLOPのツーリングラジアル、ROAD SMARTⅢ。サイズは120/70ZR17M/C(58W)。
SV650Xの大きな特徴となるトップブリッジ下にマウントされたセパレートハンドル。ベースとなったSV650 ABSの、アップハンドル用マウントも一緒に鋳込まれたトップブリッジとは違う形状だ。この角度からだと頬のように膨らんだカウルサイドの形状が分かると思う。フォークトップにはプリロードアジャスターが装備された。通常のSV650 ABSにはない。 LCDメーターは6段階の輝度調整が可能。周囲の明るさの変化や好みによって輝度を変更できる。表示できる情報は、速度、エンジン回転数、オド、デュアルトリップ、ギアポジションインジケーター、水温計、航続可能距離計、平均燃費計、瞬間燃費計、燃料計、時計。左上のプッシュボタン(SELボタン)によって、走行距離の表示のところがオド→トリップA→トリップB→輝度調整と切り替わる。右上のADJボタンを押すと瞬間燃費→平均燃費→航続可能距離→瞬間燃費と切り替わる。平均燃費計はトリップと連動なので、トリップをリセットすると、平均燃費計もリセットされる。 シボが入ったタックロールシート表皮によってレトロ感を醸し出している。タンデム部分はつや消しのグレー(シボ無し)に色分けし、シングルシート風に見せるカフェレーサーテイスト。SV650 ABSのシート高は785mmだが、このSV650X ABSは790mmと5mmだけ高い数値。前身であったグラディウス時代はアルミのグラブバーがあったが、SVはタンデムベルトで対応。
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●SV650X ABS(2BL-VP55B) 主要諸元
■全長×全幅×全高:2,140×730×1,090mm、ホイールベース:1,450mm、シート高:790mm、車両重量:197kg■エンジン種類:水冷4ストローク90度V型2気筒DOHC4バルブ、総排気量:645cm3、ボア×ストローク:81.0×62.6mm、圧縮比:11.2、最高出力:56kw(76.1PS)/8,500rpm、最大トルク:64N・m/8,100rpm、始動方式:セルフ式、燃料タンク容量:13L、変速機形式:常時嚙合式6段リターン、燃料消費率:低地燃費値 37.5km/L(60㎞/h、2名乗車)、WMTCモード値 26.6km/L(クラス3、1名乗車時)■フレーム形式:ダイヤモンド、キャスター:25°、トレール:106mm、ブレーキ(前×後):油圧式ダブルディスク × 油圧式シングルディスク、タイヤ(前×後):120/70ZR17M/C 58W × 160/60ZR17M/C 69W。
■メーカー希望小売価格:781,920円(消費税8%込み)。

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