Japanese Moto-GP rider

■文:佐藤洋美 ■写真:赤松 孝

 3月18日(日)、カタールGPから戦いが始まる。今シーズン、最高峰クラスのMotoGPには中上貴晶が参戦する。このクラスでは4年振りの日本人ライダーである。先日のオフィシャルテストでは総合10番手というタイムで好調ぶりをアピール。Moto2には昨シーズンに引き続き長島哲太、そしてMoto3には鈴木竜生、鳥羽海渡、佐々木歩夢が継続参戦、新たに昨年のルーキーズカップの王者、真崎一輝がチャレンジする。世界を戦う彼らに注目したい。

 2017年ロードレース世界選手権“MotoGP”はスペインのマルク・マルケス(当時24歳・ホンダ)が6度目の世界タイトルを決めて、赤い紙吹雪が吹き乱れる中で、赤いサイコロの6の目を掲げるパフォーマンスで最大級の喜びを表しました。
 
 MotoGPは元の世界ロードレース選手権(WGP)で、第1回は1949年に始まっていて、F1(4輪)の1950年よりも古い歴史があるのです。現在はMotoGP(1000㏄)、Moto2(600㏄)Moto3(250㏄)の3クラスが開催されており、2018年シーズンは19戦で争われシリーズチャンピオンが決定します。欧州での人気は高く、サッカー選手の憧れがMotoGPライダーだと言うのは良く聞く話なのです。決勝日には10万人を超える観客が詰めかけ、ライブ中継されるTV放送の視聴率は40%を超える人気スポーツイベントです。
 
 今シーズン、最高峰クラスであるMotoGPには日本人ライダーとして青山博一以来、4年ぶりに中上貴晶(25歳・ホンダ)が挑戦します。Moto2には、昨年に引き続き長島哲太(25歳・カレックス)が参戦。Moto3に鈴木竜生(20歳・ホンダ)、鳥羽海渡(17歳・ホンダ)、佐々木歩夢(17歳・ホンダ)が継続参戦、新たに昨年のルーキーズカップの王者、真崎一輝(17歳・KTM)の参戦が決まりました。
 
 MotoGPを代表するライダーは、イタリアのバレンティーノ・ロッシ(39歳・ヤマハ)。彼は世界のアスリートの高所得ランキングの上位に着け、年収は50億とも60億とも噂される生きるレジェンド。9回も世界チャンピオンに輝く最強ライダーとして人気を誇っています。その人気に迫るのがマルク・マルケス(25歳)。そして、伏兵としてイタリアのアンドレア・ドビツィオーゾ(31歳・ドゥカティ)が台頭しています。他にも世界中から選び抜かれたライダーたちが勝利に挑んでいます。
 
 MotoGPにはホンダ、ヤマハ、スズキが技術の粋を集めたマシンを送り込み、2年目にはドゥカティ、その後、アプリリア、KTMも参戦、その争いは熾烈さを極めています。タイヤはミシュランのワンメーク。最高速が360km/hを超えるモンスターマシンは日進月歩の技術革新が行われています。
 Moto2のエンジンはホンダのワンメークで、シャーシはKALEX、TECH3など。Moto3はホンダ、KTM、MAHINDRA、PEUGEOTが凌ぎを削っています。
 
 日本では、この戦いをライブで見る機会は、秋に栃木県・ツインリンクもてぎで行われるGPだけ(10月21日開催)。昨年は、MotoGPには青山博一(36歳・ホンダ)、野左根航汰(22歳。ヤマハ)が代役参戦。中須賀克行(36歳・ヤマハ)、Moto2に水野涼(19歳・ホンダ)、榎戸育寛(19歳・ホンダ)の全日本ライダーがワイルドカード参戦しました。

若き日本人が、世界に挑む。マルケスとドビツィオーゾのようなチャンピオン争いができるライダー達よ、出でよ!

 その第15戦 日本GPでの彼らの戦いぶりを振り返ってみましょう。
 長雨の影響でレースウィーク中、晴れていたのは木曜日のみで、ずっと、ずっと、ずっと、雨が降り続いていました。それでも、3日間で8万9501人もの熱心なファンが詰めかけたのです。決勝は、路面温度15℃(夏には60℃を超える)で、多くのライダーが「タイヤのグリップ感を得られない」と苦しみました。
 
 MotoGPは、ランキングトップのマルケスと2位のドビツィオーゾが一騎打ちを繰り広げ、歴史に残る雨の激闘となりました。ハイライトはラスト2ラップ。3コーナーでマルケスがドビツィオーゾのインに飛び込み、130Rでドビツィオーゾが前に、V字コーナーでマルケス、そして最終ラップ、マルケスがS字でリアが振られ、90度コーナーでドビツィオーゾがマルケスを交わす。この90度コーナーはもてぎの最大のパッシングポイントで、勝負あったと思ったのですが、マルケスはビクトリーコーナーの進入で、ドビツィオーゾのインに飛びこむ離れ業を見せます。ですが、イン側から立ち上がったドビツィオーゾがトップでチェッカー、マルケスは僅差の2位となったのです。最終ラップの攻防に誰もの目が釘付け、叫び続ける迫力で、心臓バクバクの熱戦を終えて、表彰台の前で抱き合う2人の姿に、また、感動の波が広がりました。
 
 このレースで中須賀は12位となるのですが、MotoGPマシンの開発ライダーとしての参戦で、決勝直前まで、2台のタイプの違うマシンを乗り換えながらテストを続け、そして決勝に挑んだのです。レースウィークからセッティングを詰め、決勝にピークを持ってくる百戦錬磨のレギュラー陣とは違う戦いながらも力を示した中須賀に称賛の声が集まりました。
 青山はグリップに苦しみ18位。
 野左根は、急遽決まった参戦ながら、フリー走行から上位につける走りで、あのロッシから「速いね」と声をかけられる活躍で、一躍、時の人となりました。野左根は、WGPで活躍しノリックの愛称で絶大なる人気を誇った故阿部典史が見出したライダーで「世界で活躍するライダーを育てる」と結成した「チームノリック」の第一期生。ノリックファンの声援も受けて、最も印象に残る活躍をしました。
 野左根は「亡くなった父(健治さん。享年42歳)や阿部さんの願い(MotoGP出場)を叶えられて嬉しい」と挑みました。フリー走行4回目に転倒して右手骨折をおして臨みましたが、決勝でも転倒しリタイア。それでも「夢のような3日間だった」と語りました。野左根は世界耐久選手権にも参戦、全日本でも念願の勝利を飾り、飛躍したライダーとして注目を集めていましたが、この日本GP参戦で、更に上昇気流に乗ったように思います。

2台のMotoGPマシンをテストしながらの参戦となった中須賀克行。 ロッシからも速さを認められた野左根航汰。

 Moto2では、MotoGP参戦が決まった中上が見せました。「Moto2で最後の日本GP勝利」を目標として掲げて参戦。MotoGP昇格には力不足ではないかとの意見もあり、その力があることも示す戦いでもありました。
 予選では雨が上がり、濡れた所が残る難しいコンデションでしたが、攻めに攻めて逆転でポールポジションを獲得し観客からどよめくような歓声が上がり、大会のハイライトのひとつとして、ファンの胸に刻まれることになったのです。
 決勝はトップ独走し続けますが、終盤には力つきての6位。それでも、苦手とみられていた雨のレースでの健闘、逆転PPの存在感は大きく、中上ファンにとっては、忘れられない日本GPとなりました。
 
 長島は、速さを示すのですが、転倒が足を引っ張りました。アベレージタイムや決勝中のタイムはトップライダーと変わらないのに、予選順位の悪さから追い上げを強いられます。Moto2はキャリアを重ねたベテランが多く、長島は傷つきながら経験を積んでいる最中。決勝では転倒から怒涛の追い上げを見せての20位。
 水野は全日本最終戦を待たずに全日本J-GP2タイトルを決めて日本GPに挑みましたが、慣れないレインタイヤに翻弄され力を示せず22位。榎戸は14位に入る躍進でポイントゲットし爪痕を残しました。

中上貴晶は2018年シーズン、満を持してMotoGPに挑戦する。 引き続きMoto2に参戦する長島哲太。

 Moto3は鈴木が大きな注目を集めました。今季からイタリアのMotoGPライダーの故マルコ・シシモンチェリの意志を継いだ父パオロ氏が結成したチームに移籍。表彰台に迫る4位を獲得。
「監督はいつも、“お前は速い”と言ってくれるけど、自信がなかった。でも、それを、ここで少しは取り戻すことが出来たように思う」と更なる躍進を誓いました。
 佐々木は追い上げを見せていたのですが、無念の転倒リタイヤ。鳥羽は今季悩み続けているマシンセッティングが仕上がらずに力を発揮出来ずに21位に終わったのです。

台風の目になるか! 注目される鈴木竜生。 「2017年は学びのシーズンだった」と語る佐々木歩夢の今年に期待。 鳥羽海渡は昨年のランキング30位から、どれくらいの飛躍をするのか。

 ライダーたちは、日本の戦いを終え、オーストラリア、マレーシア、バレンシアと戦い続けました。
 中上はランキング7位でシーズンを終え、今季は念願のMotoGP参戦となり、着実なテストを重ね、準備を整えているようです(先日タイのチャーン・サーキットで行われたオフィシャルテストでは総合10番手タイムという大健闘をみせています)。長島はランク26位となり、今季は中上の後を継いでチームアジアに移籍、監督には青山博一が就任、新たな戦いに挑みます。Moto3の鈴木はランキング14位、佐々木は20位、鳥羽は30位からの飛躍を誓っています。真崎もMoto3デビューを心待ちにしています。
 
 中須賀はMotoGP開発テストをしながら全日本JSB1000参戦。野左根は世界耐久選手権フル参戦し、全日本にも参戦、MotoGPテストも継続。水野は全日本最高峰クラスJSB1000にステップアップが決まり、榎戸は全日本J-GP2でタイトルを目指します。
 誰もがWGP頂点の戦いをめざし戦い続けています。今季のMotoGPの戦いも、熾烈さを極めることになりそうです。3月18日の開幕戦カタールから、アルゼンチン、アメリカ、そして欧州へ。今シーズンからタイが新たに加わり、日本GPは10月21日栃木県ツインリンクもてぎで開催されます。
 最終戦バレンシアまでの19戦の戦いが、もうすぐ始まります。