寄る年波にはモトクロスで喝!2017 33rd Annual DUBYA ワールド・ベテランズ・モトクロス・チャンピオンシップス

11月最初の週末、カリフォルニア州のグレン・ヘレンはお父さんたちお爺ちゃんたちで大賑わいとなる。モトクロスの“中高年限定”世界大会、ワールドVETが開かれるのだ。世界中から押し寄せたエントラントは2日間で延べ1300台……ってこの人たち一体ナニモノ~? と思えば、モトクロスを生涯の趣味に楽しみまくっている、笑顔のナイスなお父さん、お爺ちゃんたちだった。

■写真・文:高橋絵里

 AMAナショナルの会場としても知られるグレン・ヘレンは、当然ながらアメリカっぽさ全開のダイナミックなロングコースで、その周囲は巨大キャンピングトレーラーがいくらでも並べる広大なパドックエリア。このパドックが一杯になってしまう盛況だ。
 日の出とともにウォームアップ走行が始まり、レースは夕方まで連続30ヒートを消化する。前の組のトップが最終ラップに入ると同時に次の組がエンジンをかけてスタンバイ、驚くべきは前の組がまだ全員ゴールしないうちに次の組がスタートしてしまう。しかもエントリーが多くてゲートに並びきれず、2列あるいは3列を作り30秒間隔での時間差スタートだ。えぇ~、ウソでしょ?と思うも、コースはとにかく長いし、順位やタイムはトランスポンダー自動集計で、何の問題もなくレースはじゃんじゃん進行していく。
 さすがはモトクロス大国、ここはアメリカ、これがアメリカ。

懐かしい顔に会った。90年代の全日本チャンピオン、アメリカのジェフ・マタセビッチ。48歳の現在は一族で経営する食品会社に勤務しながら、週2、3回はライドを楽しんでいる。レースには従兄のモリナも参戦して、互いにサポートし合いながら楽しんでいた。
マシンやパーツの開発、ライダー育成などで日本とも縁が深いダグ・デュバックは、ケガ上がりだと言っていたが+50プロクラスを制して歴代優勝記録を更新。さらに+40プロクラスでも2位に入るという信じられないスピードをキープし続ける54歳だ。
パドックで隣り同士になったライダーとはすぐに仲良くなる。聞けば初参加だというので色々教えてあげたり。エクアドルから友人と飛行機で来てレンタルバイクで走った。レースサポート付きのレンタルは本当に便利だし快適だ。毎年同じクラスで見るアイツ、聞いてみればやっぱり同じ61歳だった。この先もずっと、70歳クラスになっても一緒に走ろうな!
80年代ジャパンスーパークロスに来日した頃は速さに加えてヤンチャ&甘いルックスでも人気だったロン・ラシーン。数年前、130kg(推定)から発奮し100kg(推定)までダイエットして再びスピードを取り戻す。50歳になった今も熱いファンから声援と指笛の嵐だ。

 世界20カ国から、そして全米25州からのエントリーは延べ1300台に上り、世界万博かG20かというくらいに、パドックやスタートエリアでは華やかな国際親善が繰り広げられる。タヒチ(フランス語圏)とエクアドル(スペイン語圏)とフィリピン(タガログ語圏)と日本からのライダーが、つたない英語にジェスチャーでコミュニケーション。
「よう、今年もまた会ったな!」「相変わらずいかしたバイク乗ってるねぇ」「あのコーナー、オレはアウトから行くんでよろしく」「OK!」といったモトクロスの話はちゃんと通じているのがいい。それを聞いたアメリカやオーストラリアやカナダのライダーが早口のナイスなリアクションをくれて、みんな笑顔とサムアップ、これぞ実践スピードラーニング。
 そして走り終われば「速かったなぁ、全然追いつけなかったよ、参りました!」「あー楽しかった、また来年一緒に走ろうね」と互いの健闘を讃え合う。ワールドVETの共通言語はモトクロス語で、いける。




イギリス出身のレジェンド カート・ニコル、レースでの活躍はもちろんのこと、KTMオンリーのレンタル&ピットサポートを運営して大人気、色々な国のお客さんたちと和気あいあいのピットだった。なんたってカート先生によるコ-ス攻略アドバイスの特典付きだ。 日本から遠征のチャンドラー佐藤60歳もワールドVETに魅せられた常連ライダーの1人。尊敬するアメリカンレジェンド、故ダニー・マグー・チャンドラーのコスプレ衣装で力走する姿に、人気・知名度共に年々上昇、「ミスター・マグー」と呼ばれ感激していた。 テキサス州ヒューストンから参戦を続けるゲイリー・アンダーソン77歳。「本当に楽しいですな。何歳まで走るのかって? 走れるうちはずっと、ね」静かな佇まいの中にもモトクロス大好き感満載、ジャンプもふんわり安定の熟練技。まさに継続はチカラなり。



ジョアキン・スノル55歳はスペイン バルセロナ在住の美容整形外科医。「子供の頃はプロライダーになるか父の跡を継いで医者になるか、将来の選択に悩んだものです」というわけで今は趣味のモトクロス、レンタルバイクでおおいにエンジョイしていた。 ピットで誇らしげに国旗を広げていたのはフィリピンから遠征のカルロ・ロドリゲス、これが2度目のワールドVET参加で+35歳ノービスクラスを走った。「グレン・ヘレンはフィリピンでもとても有名なコースだよ。アップダウンが信じられないくらいに急坂で最高!」 還暦を迎えたオーストラリアのスティーブ・メットカーフは、プロライダーで活躍しているブレット・メットカーフのお父さん。息子と孫たちの応援を受けながら初参加のワールドVETを満喫、ブレットはもちろんのこと、スティーブお爺ちゃんもやはり激ハヤかった。



世界的レジェンドによるサイン会もミュージアム棟でおこなわれ、ファンの長い列ができた。MSRジャージにサインしているのはオフロードの父、マルコム・スミス76歳、今年のエディソンダイ・モトクロスライフタイム・アチーブメントアワード(全米モトクロス史に貢献した人に贈られる功労賞)を受賞した。赤いビーニーは61歳になったチャック・サン、その隣にスウェーデンのラルス・ラルッソン、他にもデビッド・ベイリー、ドニー・ハンセンといった、往年のファンには卒倒ものの豪華な顔ぶれだ。
カナダから、メキシコから、家族旅行を兼ねての遠征も多い。「ワールドVETはオジサンだけのイベント?そんなのズルイわよ!」ということで近年はウーマンクラスも新設され、ママさんライダーたちも張りきっている。

 レースウィークの木曜日、悲しい知らせが届いた。33年前に第1回目のワールドVETを開催し、このイベントをベテランモトクロスの世界的イベントに成長させたレジェンド、トム・ホワイトが亡くなったのだ。昨年のこの大会では会場を飛びまわって元気に総合司会を務めていたが、今年に入り病と闘い、「自分にとってこれが最後のワールドVETになるだろう」と本人も述べていた。が、それも叶わなかった。68歳、早いトムの死にみなが祈りを捧げ、アクセルを開け、走ることで追悼した。
 ワールドVETの開催と継続は、トムの娘夫妻が経営するカスタムホイール会社のDUBYA(ダービャ)に引き継がれている。来年もまた11月の最初の週末、世界のベテランライダー達がグレン・ヘレンに集結する。対象年齢30歳以上、上は70歳、80歳まで、技量も車種も排気量も問わないこの壮大な草レースに、休日のモトクロスを愛するあなたもいつか挑戦してみてはいかがだろう。



ミュージアム近くの“栄光ストリート”入口に建てられた、故トム・ホワイトの軌跡を綴るモニュメント。コース山頂の星条旗は半旗に掲げられた。 2005年10月、本誌ミスター・バイクはロサンゼルス郊外にあるトム・ホワイトの自宅を訪ねていた。敷地面積4エーカーというから約4900坪の中に自宅があり、そして自慢のオフロード・バイクコレクションを飾るミュージアムがあった。この中には約60台の珠玉のマシンが収められていた。R.I.P.

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