西村 章

 あれだけの雨の中で、まるでドライの水準を上回るような激戦を見ることができるとは思わなかった。
「今日のレースでは、チャンピオン争いのことは考えなかった」
 と、最終ラップ最終コーナーの攻防を制したアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ドゥカティ・チーム)はレース後に振り返ったが、それはおそらく固唾を呑んでレース展開を見守っていたツインリンクもてぎの5万2439人の観客をはじめ、テレビ放送やインターネットのライブ実況で観戦していた世界中のファンも同様だったのではないだろうか。
 バックストレートエンドの90度コーナーから最終ビクトリーコーナーまで続いた攻防にわずか0.249秒の差で敗れたものの、ランキング首位の座を守ったマルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム) もさばさばした表情で
「誰がチャンピオン争いに勝つかはわからないけど、今日は本当に素晴らしいファイトをできた」
 と振り返った。
 今シーズン随一の激戦になった第11戦オーストリアGPを、場所を変えてそのまま繰り返したような、こんな勝負展開だと、あまりにそのバトルが劇的すぎて3位の存在は消し飛んでしまう。ちなみに、オーストリアでの3位はダニ・ペドロサ。皆さん、憶えてました??
 今回の3位はダニロ・ペトルッチ(OCTO プラマック・レーシング/Ducati)。2周目から折り返し地点の12周目まではトップを走行したが、13周目以降はマルケスとドヴィツィオーゾに前を許して3位でゴール。
「正直、レースをリードしているときはやっと初勝利できるかもと思ったけど、いつもふたつの問題が発生するんだ」
 とペトルッチ。
「ドビとマルク。いつもこのふたりだよ」
 そう言って笑いを取った。
「ミザノやアッセン(ともに2位)と比べるとハッピーだね。あのふたつのレースでは、最終ラップで勝利を逃したから」
 と語るペトルッチは、雨のレースで前方を走るバイクから跳ね上がる水しぶきと視認性の悪さについて話す際に
「ウォームアップラップで既にフルウェットで、そのときはホルヘの後ろにいたんだけど、バイザーにミソスープを被ってるような状態だったね」
 と言って再び笑いを取った。このあたりのギャグセンスというか人を楽しませる巧さも、彼に人気がある理由の一端だろう。

長く語り継がれる激闘の名勝負でした。
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 今回は優勝を狙える可能性もある、と木曜から土曜まで話していたホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ・チーム)は、レース序盤にトップグループを走行していたものの、リアの加重に課題を抱えていたようで、4周目でガクッとタイムを落とし、最後は6位でチェッカー。チームメイトのドヴィツィオーゾとマルケスのチャンピオン争いについては
「マルクに勝つのは難しく、ここぞというときに絶好のタイミングで攻めてくる。アルゼンチンで転倒してポイントを失っていなければ、タイトルを決めていたかもしれない。でも、ドビにはがんばってほしいし、自分が彼のタイトル獲得に何かヘルプをできるならやるつもりだ。今日の彼の勝利は、祝福をしたい」
 と述べた。
 チャンピオン争い、という点では、マーヴェリック・ヴィニャーレス(モビスター・ヤマハ MotoGP)はランキング3位を維持しているものの、雨で苦戦が続く今年のヤマハの典型的なレース内容で、上位陣から大きく離されて9位でゴール。ドヴィツィオーゾとのポイント差は41に広がった。
「序盤からできるかぎりのことをしてベストを尽くしたけど、厳しいレースだった。バイクは限界で、あれ以上は攻められなかった」
 と、やや醒めた調子でレースを振り返った。残り3戦でタイトル争いに生き残る可能性については、自分たちの手で御すことはできない、と言う一方で、
「チャンピオンを取るために、今後の状況を活かしていきたい。まだ終わっていないのだからがんばるし、オーストラリアは好きなコースだから行けると思う」
 とも話した。
 とはいえ、次戦のフィリップアイランドと翌々戦のセパンは、ともに雨の可能性が高いコースでもある。雨で苦戦が続くこの状況で、なにか対応策はあるのか、と彼に訊ねてみたところ、
「雨のレースウィークになるなら、もうベッドで寝てるよ」
 と自嘲気味の苦笑を漏らした。
「でもまあオーストラリアに行ってみるまでわからないし、今後に向けて何か重要なヒントが見つかるかもしれない。今年はウェットコンディションでずっと苦戦していて、今日も全力で挑んだけどとても難しかった。僕は雨で遅くなるようなライダーじゃないし、普通ならとても速く走れている。とてもキツいけど、この状況を受け入れたうえで、努力していかないとね」



表彰台は狙えるようにも見えたが…… とにかくヤマハは雨がどいひー。
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 そして最後にもうひとつ。
 今回はスズキ勢が健闘した。今シーズン苦戦が続いたチーム・スズキ・エクスターのアンドレア・イアンノーネとアレックス・リンスは、フリープラクティス3回を終えて両選手が揃ってQ2へ進出。決勝レースも4位と5位、と今季ベストリザルトである。
 ちなみにスズキは、今回のレースウィークからエアロダイナミクスに配慮したニューフェアリングを投入している。ドゥカティやアプリリアのような、ややヨーロピアンデザインに近い印象もないではないが、チーム関係者によると「もちろん遠州浜松謹製」とのことである。



次のフィリップアイランドは果たして!?
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 というわけで今回はここまで。今週末は赤道を跨いで一気に南下し、フィリップアイランドのオーストラリアGP。それではフクロニンゲンによろしく。

中須賀12位、青山18位、野左根DNF。
日本人選手最高位はMoto3鈴木竜生の4位。

 



■2017年10月15日 
第15戦 日本GP
ツインリンクもてぎ

順位 No. ライダー チーム名 車両

1 #04 DUCATI


2 #93 Repsol Honda Team HONDA


3 #9 OCTO Pramac Yakhnich DUCATI


4 #29 SUZUKI


5 #42 SUZUKI


6 #99 DUCATI


7 #41 Aprilia


8 #5 YAMAHA


9 #25 YAMAHA


10 #76 Loris BAZ Avintia Racing DUCATI


11 #44 KTM


12 #21 Yamalube Yamaha Factory Racing YAMAHA


13 #22 Aprilia Racing Team Gresini Aprilia


14 #8 Avintia Racing DUCATI


15 #53 EG 0,0 Marc VDS HONDA


16 #45 OCTO Pramac Yakhnich DUCATI


17 #38 Red Bull KTM Factory Racing KTM


18 #7 Hiroshi AOYAMA EG 0,0 Marc VDS HONDA


RT #19 Pull & Bear Aspar Team DUCATI


RT #26 HONDA


RT #17 Pull & Bear Aspar Team DUCATI


RT #35 HONDA


RT #46 YAMAHA


RT #31 Kohta NOZANE Monster Yamaha Tech 3 YAMAHA


※西村さんの最新訳書『マルク・マルケス物語 -夢の彼方へ-』は、ロードレース世界選手権の最高峰・MotoGPクラス参戦初年度にいきなりチャンピオンを獲得、最年少記録を次々と更新していったマルク・マルケスの生い立ちから現在までを描いたコミックス(電子書籍)。各種インターネット、電子書籍販売店にて販売中(税込 990円)です!

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