JSB1000から目が離せないぞ!

●文-佐藤洋美 ●写真-赤松 孝

6年連続、8度目のチャンピオンを狙うヤマハの中須賀克行。ホンダは新型CBR1000RRと高橋 巧、スズキは10年振りのフルモデルチェンジGSX-R1000を投入。カワサキはスーパーバイク世界選手権でチャンピオンを獲得したZX-10Rに渡辺一馬を起用。さらに、モリワキの復帰が大きな話題となっている。もちろんヨシムラ、チームカガヤマも虎視眈々と狙っている。今シーズンのJSB1000は熱くなりそうだ。

 2017年モータースポーツシーズン到来です。世界各地から、レースの話題が届き始めました。レースのルーツはイギリスのマン島だと言われています。規制の少ない島にバイク好きが集まり競争が始まり、ツーリングの途中で、「誰が1番速いか決めよう」と始まったのがツーリストトロフィー(TT)、だからロードレース世界選手権(WGP)にはTTの名が残るラウンドがあるのです。1949年にWGPが開催され、日本では1961年に日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)が設立され、翌年からレースが始まりました。1967年からシリーズ戦となり世界を席巻する日本の4メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)の最新マシンが激突する戦いは、多くのレースファンの心を捕らえ続けて来ました。

 昨今、日本最大のバイクイベントである鈴鹿8時間耐久レース(鈴鹿8耐)の盛り上がりと共に全日本ロード最高峰クラスのJSB1000(JSB)の戦いに注目が高まっています。このJSB1000を紹介しましょう。市販マシンのリッタースーパースポーツバイクを使ったレースは、トップスピードは300㎞を超えることもあるモンスターマシン、そのマシンを操り、1000分の1秒に賭ける男たちの戦いは常に緊張感に満ちています。今季は実力派ライダーに加え、若手ライダーも続々とステップアップし、ヨシムラ、モリワキも2台体制を敷き、例年にない華やかな顔ぶれが揃いました。

 まず、ヤマハワークスライダーの中須賀克行(なかすが かつゆき 福岡出身・35)が6年連続、8度目のチャンピオンという大記録に挑みます。2015年ヤマハのファクトリー宣言と共に、サーキット最速を謳った新型「YZF―R1」(タイヤはブリヂストン)を得て、その速さは際立ち、絶対的王座に輝き続けています。ヤマハのMotoGPマシン開発テストも担当、鈴鹿8耐では2連覇と無敵、世界にも彼の速さは知れ渡っています。


 今は亡き父親と二人三脚でレースに挑んでチャンスを掴んだ苦労人でもあり、表彰台では天を仰ぎ父親に勝利の報告を欠かしません。全日本では「打倒、中須賀」と叫ばれて久しいのですが、今年は、彼を脅かすライダーが、現れるかも知れないと噂されているのです。


 まず、野左根航汰(のざね こうた 千葉・21)が中須賀のチームメイトとしてファクトリー入りしました。彼のルーツはWGPで活躍した故阿部典史が世界に通用するライダーを育てたいと立ち上げた「チームノリック」。そこからワークス入りした若手注目株№1。中須賀と同じマシンを駆るのですから、力次第では中須賀の前を走る可能性が最も高いと言えるのかも知れません。

「いずれはモトGPライダー」と夢を追い掛けており、ヤマハサイドも後押ししようと、今季は世界耐久選手権に野左根を送り出し鍛錬の場を与えています。野左根は「夢を叶えるためには、近くなればなるほど、その大きさを思い知らされる中須賀さんに追いつき、追い越すこと。簡単ではないけど……。そこを超えなければ世界はない」と気合十分。


 対するホンダはHRC(ホンダ・レーシング)契約ライダーの高橋巧(たかはし たくみ 埼玉・27)、所属はホンダのサポートを受けるサテライトチーム。鈴鹿8耐では3度も勝利を挙げる日本のトップライダー。ですが、JSBでは無冠。子供の頃からアメリカにダート修行に出かけるなどレース一筋に歩んで来た高橋の才能は誰もが認めるものです。


 今年はホンダも新型CBR1000RR(タイヤはブリヂストン)を投入となり、いよいよ高橋の時代到来かとファンの期待を集めています。高橋も「もう、負けて悔しい思いをするのは嫌だ。今季はマシン開発テストも自分の意見を聞いてもらい進めています。新型マシンで戦うことを誰よりも待って、楽しみにしていたのは自分自身」と語ります。


 そして、今季からモリワキが本格参戦を開始します。それも清成龍一(きよなり りゅういち 埼玉・34)、高橋裕紀(たかはし ゆうき 埼玉・32)の2台体制。ライダー発掘には定評があり数々の伝説を残す森脇護氏が監督として陣頭指揮を執るというのですから、レースファンの心が躍らない訳がないのです。
 マシンはCBR1000RR(タイヤはピレリ)にオリジナルのスイングアームを装着しての戦い。まず、イギリススーパーバイク選手権で3度もタイトルを獲得、鈴鹿8耐では4度の勝利を挙げている清成を獲得したことが、オフシーズンの最大のニュースとなりました。
「中須賀を倒せるのは清成しかいない」と考えた関係者が清成獲得に動き多数のオフォーが舞い込むのですが、清成はモリワキを選んだのです。高橋もWGPモト2で活躍していた逸材、帰国してモリワキに所属し全日本JGP2クラスで2014年~15年とタイトルを得て、昨年JSBにスイッチ、ケガで結果は残っておらず、今季への思いを育みました。世界を知るふたりはダブルエースと呼ばれ、お互いを「最大のライバル」と語り切磋琢磨して速さを磨くことになります。





 スズキも10年ぶりのフルモデルチェンジの新型GSX-R1000 (ブリヂストン)を投入、その開発テストにも参加していたヨシムラは、エースライダーへと成長した津田拓也(つだ たくや 和歌山・32)が一気に勝負を賭けます。


「昨年までのマシンのポテンシャルを引きだそうとスタッフが知恵を絞って仕上げて来ました。皆が、このマシンを待ち望んでいました。中須賀さんと勝負できると信じています。まだ、まだ、調整が必要ですが、開幕を楽しみにしていてほしい」と前向き。
 津田はたこ焼きをイメージしたヘルメットを被り、暴れん坊将軍が大好きな庶民派の天才。スズキのMotoGPテストもこなし、常に進化を感じさせてくれるライダーです。


 そして、ヨシムラは無名ライダーの濱原颯道(はまはら そうどう 神奈川・22)を大抜擢したのです。


 昨年の鈴鹿8耐テストで「絶対にチャンスを掴む」とワンチャンスに賭けタイムアップ、野左根や浦本修充(うらもと なおみち チームカガヤマ)らとモタードでは互角の勝負をする逸材だということが知れると、一気に知名度を上げました。190cm、88Kgの体格、曾祖父は大相撲の元大関・汐の海と、破格のルーキーが名門ヨシムラでどんな成長を遂げるのかと注目を集めているのです。


 チームカガヤマも新型GSX-R1000(ダンロップ)を得て、チームオーナー、監督、ライダーの加賀山就臣(かがやま ゆきお 神奈川・42)に加え、昨年の全日本JGP2チャンピオンの浦本修充(東京・22)がステップアップし2台体制。加賀山は海外経験が長く、ライダーとしてのポテンシャルの高さは周知の事実。生死を彷徨う大怪我から不死鳥のように蘇ったことから、サイボーグと呼ばれ、その強靭な精神と肉体で尊敬を集める存在。
 浦本は、その加賀山が見込んだライダー、JSBで全日本を戦った経験もあり、鈴鹿8耐にも参戦しているだけに即戦力とみられています。加賀山は「俺も、まだ、まだ、負ける気はしないけど、浦本は、まず、俺を超えなきゃならない。今年は海外参戦のチャンスもあるから、しっかり育ってほしい」と自分の後を継げるライダーへとの想いを込めます。浦本はスペインのスーパーバイクへのスポット参戦も決まり「全ての経験を生かすことが出来るように全力で挑んで行く」と誓っています。野左根、濱原とは同年代で、ルーキーたちの対決も楽しみ。




 カワサキは、昨年ニューモデルNinja ZX-10RR(ブリヂストン)を発表。その力はスーパーバイク世界選手権でチャンピオンを獲得していることで証明済み。最高速では常にトップに立ち、ライバルを戦々恐々とさせています。そのカワサキが、今季はラインナップを一新、エースライダーに渡辺一馬(わたなべ かずま 栃木・26)を起用、昨年は世界耐久にフル参戦し海外のサーキットで実力を養いました。
中学2年生で全日本デビューした渡辺は「ここに来るまで、たくさんのチームでお世話になり、たくさんの人に支えてもらいました。その人たちへの恩返しが出来るような走りがしたい」と勝負の時を迎えます。
 もう1人は松崎克哉(まつざき かつや 福岡・21)、昨年全日本デビューしたばかりの新人。彼がカワサキライダーの座を射止めたことも大きなニュースとなりました。本人は「自分でも驚いていますが、このチャンスを生かしたい」と決意。カワサキファンお馴染みの柳川明(やながわ あきら 鹿児島・45)はアドバイザーとしてチームを支え、後半戦2戦へのスポット参戦の予定です。




「新型マシンが出揃い、ライダーも増えて、面白いレースになると思うし、自分もバトルを楽しみたい」
と中須賀は語ります。その言葉には王者としての自信と覚悟が見えます。まるで「かかって来い」と言っているように聞こえました。ライバルを蹴散らし勝利することで、己の力を示そうと牙を剥く中須賀の強さはバージョンアップしているはず。
 ですが、ホンダのエースとして負けられない高橋の意地、念願の新型マシンを得て士気上がる津田、やっと勝てる環境を手に入れた渡辺、誰もが認める実力者の清成、高橋裕紀の底力。そして、チャンスを掴んだルーキーたちの躍進は、その牙城を突き崩すパワーを秘めていることも事実。新たな戦いの火ぶたが、切って落とされようとしています。

 全日本ロードは最高峰JSB1000 、ST600、J-GP2 、J-GP3の4クラスがあり、それぞれのクラスで戦いが繰り広げられます。多くのライダーを突き動かしているのは世界への思いです。戦う誰もが日本に留まるつもりはなく、もっと、大きな世界へと羽ばたきたいと願っています。ですが、その夢を掴むことが出来るのは選ばれし者だけ。世界を語るなら、まずは1番にならないと始まりません。トップ争いのその先にある未来に向けてアクセルを開け、しのぎを削る真剣勝負の世界は、だから、いつも刺激に満ち見る者を引き込むのです。

 開幕戦は4月16日に茨城県筑波サーキットでJSB1000を除いた3クラスで開催。JSB1000は4月24日に三重県鈴鹿サーキットで開催される2&4で戦いが始まります。この大会は200㎞のセミ耐久として行われ、スプリントレースとは違い給油のためのピット作業があり、マシンの耐久性やチームワークといった見所も加わります。今季は、昨年は熊本地震の影響で開催を中止していた大分県オートポリスもカレンダーに復帰しました。開催カレンダーをチェックして、ぜひ、現場に駆けつけ、お気に入りのライダーやチームを見つけて、熱い声援を送って下さい。気がつけば、もう、レースの魅力から離れられなくなっているはずです。

●2017年全日本選手権シリーズおよび主要競技会の開催日程
全日本ロードレース選手権シリーズ
開催日 会場 開催クラス
第1戦 4月8日(土)~ 4月9日(日) 筑波サーキット(茨城) J-GP2(2レース),ST600,J-GP3
第2戦 2&4 4月22日(土)~ 4月23日(日) 鈴鹿サーキット(三重) JSB1000 のみ(200km 耐久)
第3戦 5月13日(土)~ 5月14日(日) スポーツランド SUGO(宮城) 全クラス(JSB1000 は 120mile 耐久)
第4戦 6月10日(土)~ 6月11日(日) ツインリンクもてぎ(栃木) 全クラス
第5戦 6月24日(土)~ 6月25日(日) オートポリス(大分) 全クラス
第6戦 2&4 8月19日(土)~ 8月20日(日) ツインリンクもてぎ(栃木) JSB1000 のみ
第7戦 2&4 9月9日(土)~ 9月10日(日) オートポリス(大分) JSB1000 のみ
第8戦 9月30日(土)~10月1日(日) 岡山国際サーキット(岡山) 全クラス
第9戦 MFJGP 11月4日(土)~11月 5日(日) 鈴鹿サーキット(三重) 全クラス(JSB1000 は 2 レース)
※全クラス=JSB1000, J-GP2, ST600, J-GP3