オオカミ男のひとりごと

HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。
時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ750?。
第52回 RCB750W・S(ウルフガイ・スペシャル)発進!!

 
 ほとんどマジック。スマホのCMでおなじみのフレーズなのでここで思いっきりパクるつもりはないのだがオレの口をついて出た言葉はこれだった。一体、何をどうやったらこうなるのか? あまりの衝撃についついつぶやいてしまった言葉がほとんどマジック。 
 オレの中では我マシンにこそこのフレーズがぴったりくる。オクムラはオレのマシンの足にどんな魔法をかけたのか。まったくもって注文通り・・・過ぎる。オレが依頼したリクエストはあくまでも理想。可能な限りそれに近づけてくれればいいと思っていたのだがオレの手元に戻ってきた足回りは望んだ性能がそのまま詰め込まれたものだった。
 オレのマシンにお飾りのブランドは似合わない。というよりも必要ない。求めるのは必要十分なバランスの取れたリアルスペック。程よいエンジンパワーにそれを受け止めるハイグリップなタイヤ。その間に位置しマシンの挙動をコントロールする足。役者は揃った。
 で、オレのマシンがどんな感じになったかというと・・・同じ道をビフォアー・アフターで走ってみるとよくわかる。コーナー手前で細かく跳ねていた路面の段差を感じない。荒れた路面で車体を起こすまでアクセルをオープンにできなかった場所でその手前、バンクしたままの状態で開けていける。路面を見ていなければアスファルトを舗装し直したように錯覚してしまう感じだ。同じ場所で必ずといっていいほど鳴っていたフレームとシングルシートがカタカタとこすれ合う音も全くしなくなった。完全に路面のギャップを足のバネが吸収してしまっている。
 もう一回、言おう。何をどうやったらこうなるのか? ほとんどマジック。一応、オクムラからは交換したパーツなどの作業に関する詳細を料金明細と一緒にもらっていたので目を通したのだが、まぁとにかくフロントもリアも内部パーツは全とっかえのフルチューン。おそらくはオイルを含めてスプリング、ダンパーなどそれぞれ何種類も用意された中から選んだ部品の組み合わせによってこちらが要求した性能に合致するものをチョイスしたということだろう。これは実戦によって蓄積した膨大なデータを持っていないとできない芸当でありまさに職人の領域。スバラシイ。走り慣れたいつもの峠道をしばらく走り回ってみたがやはり以前と比べて安心感が違う。コントロールの幅が広がるということはそういう事なのだろうな。少しでも大きなマージンをとるという事は公道を走るうえでは重要なことだ。



見た目はノーマル。しかし中身は・・・そういうのってなんか良くねぇ?オクムラマジックにより走りのクオリティは格段にアップした。

 
 走る性能においてはこれでほぼ完成したといっていい。あとはビジュアルな面であるのだが・・・そう、タンクの加工である。これについてはこのマシンを手に入れた当時から考えていたのだがなぜ今までオレが二の足を踏んでいたのかと言えばズバリ、このタンクがあまりにも高額だったからに他ならない。
 最初の問い合わせの時、今装着しているタンクを外して加工してもらう予定だったのだがその依頼に対するショップ(ホワイトハウス)の回答は現存のタンクを加工はできない。変更するなら一から制作したものを購入してもらう事になると。ただし今使っているタンクの状態が良ければ下取る事はできるという事だった。
 それでもちょっとした中古の中間排気量のバイクであるなら購入することができるくらいの金額である。そりゃなかなか決断できるものではない。だが今回、オレはその決断をした。足回りをオクムラに依頼したのと同時に半ばヤケ気味な感じでホワイトハウスにタンクの発注を行った。
 先方からは3か月時間をくれとの事だった。はい、待ちましょう。ただし今、装着しているタンクを下取ってもらう事で話がまとまっているので何があってもタンクを破損させることはできない。まぁそれがなくても転倒させたりできないマシンなんだがね。
 そんな状況の中でオクムラに依頼していた足回りの方が半月ほどで仕上がってきた。その出来栄えは前述した通り。それ故にうれしくなってついついハイペースで走らせてしまう事が多くなってしまった。もちろんこの足がもたらしてくれる安定感はゆるぎないもので走っていてコケる気などまるでしないのだが世の中、何が起きるかわからない。逆にこういう時こそ要注意であるとも言える。
 そんなことを考えながら過ごしてひと月半ほど経った頃、予定よりも随分と早くにタンクが完成したと連絡があった。今ついているタンクを送ってくれという依頼とともに。もちろんそれは下取ってもらう事になっていたのでその意味合いもあるのだがいくらか年数がたっている車両なのでそれに合わせた塗装を行うため色合わせをするためでもあるのだという。さすがに高額なだけあってやることが徹底している。
 そしてタンクを外して待つ事、約一週間。完成したタンクがオレのもとに届いた。丁寧に梱包された箱を手に取ると改めてアルミタンクの軽さに驚かされる。その辺でぶつけたりしないように慎重に箱から取り出し装着してみる。ふっふっふっ・・・表情筋に力が入らない。たかがクイックチャージ風のキャップがタンクサイドに付いただけなのだがイメージはがらりと変わった。目の前にはまんまRCBの車体がいる。


やはりこのビジュアルなくしてRCBとは呼べんでしょ!?その出来栄えは文句なし。サイコーです。

もちろんこれはダミーのキャップでしかない。中身はこんな感じ。タバコ一つも入りません。只今、使い道を考え中。

 
 さてさてひとまずコイツをどこまで走らせようか。我ながら相も変わらず子供じみていると思ってしまうのだが無性に見せびらかせたいのですよ。となるとどこへ行きますかね。荷物を積むことなく行けるバイク好きが多く集まるような所。実はちょっと前に淡路島バイクフェスタに行かないかと三重の磯村氏に誘われていた。ただタンクの仕上がりが3か月かかると言われていたのでちょっと行けそうにないかもと半ばあきらめていたところでもあったのだが思いのほか早い仕上がりだったためこれは行けそうである。磯村氏のKZ1000ベースのグースレプリカも久しぶりにお目にかかりたいし一緒に走るのもまた一興。でわ、行きましょうか。
 当日の早朝、狼家からマシンを引っ張り出す。ひとまずは晴れているが昼くらいから天気は下り坂という予報になっていた。オレが戻ってくるまでなんとか持ちこたえてもらいたいものだ。高速に乗り淡路島を目指す。完成したマシンは実に快調である。途中、立ち寄ったPAでは何人かに話しかけられた。興味津々なのはやはりオレと同世代のバイク好きな人たちだ。激レアなマシンだけにやはり注目度も高い。まぁ同じPAにランチア・ストラトスが入ってきてからは人々の視線はそっちにくぎ付けになりましたがね。


オレのマシンに集中していた人々の視線はこのマシンの登場とともにその向きを変えた。メチャクチャにカッコイイです。オレ、この車大好き!!

 
 明石大橋を渡り磯村氏と待ち合わせた淡路PAにCBを滑り込ませる。イベント会場がこの先の出口から目と鼻の先という事もあってこのPAにはイベント参加予定のバイク乗りだらけである。その視線が一斉にこちらに注がれる。自覚はないがきっとオレはヘルメットの中でこれ以上ないくらいのドヤ顔をしていたのだろうな。この子供じみた自己顕示欲をなんとかしたいものだ。
 少しの時間差をおいて磯村氏がやってきた。彼のグースZもレアなマシンだけにメチャメチャに注目度は高い。しかも一緒に走ってきた友人のマシンがトーカッタレプリカなものだからなおさらである。やはりマッド・マックスという映画の認知度とその人気はバイク乗りの間ではかなり高い。


KZ1000ベースのグースレプリカ。後方の車両はトーカッタバージョン。両車ともその車体には映画でグース役だったスティーブ・ビズレー直筆のサインが。

 
 しばしPAで過ごしたのちにイベント会場へ行くと何千台ものバイクが集まっていた。西日本最大級という触れ込みはダテではないようだ。もともとはZ関係のイベントだったという事もあってまぁZが多い。その中でもグースとトーカッタのレプリカは異彩を放っている。これだけバイクが集まっている中でも磯村氏らの他にグースが一台、トーカッタが一台いただけだった。
 そしてオレのCBはというと完全なるオンリーワン状態。今までオレ自身は一度、この手のイベントで見かけたことがあったのでこの日も一台くらいはいるかなとも思ったのだが予想に反してこのイベントで見かける事はなかった。RCBレプリカが本当に希少な車体である事を改めて実感する。それを証明するように参加者は一度足を止めてオレのマシンを眺めていく。あれ? 今まで自分のバイクライフの中で気にしたことなどなかったのになんだろうこの奇妙な感覚は。優越感? まぁそれもいくらかは含まれるのだろうがそれだけではない。自慢の愛機が注目されるのは無条件に嬉しいものだ。ましてややれる事を全てやり完成した姿なのだからなおさらである。
 しかしそんな気分に浸っているのにも限界が近づいていた。天気予報通りに空模様が怪しくなってきた。とりあえずせっかく来たのだからと一通り会場を見て回ることにした。メイン会場では関西圏のバイク屋の出店が多い。展示車両は8割がたZである。それにしてもレストア済のフルノーマルZの価格が400万って・・・ないわぁ。
 会場では馴染みの顔を何人も見かけた。こういうイベントで会うと思っていなかったのでちょっと意外な感じである。さて人の多さに少々、息苦しさを感じたオレは天気の方も心配だったので昼を過ぎた辺りで帰る事にした。その帰り道、給油で立ち寄ったPAで今日、同じイベント会場にいた星野氏に遭遇。マシンは例によっていつものバケモノニンジャである。PAを出る際に星野氏は先に行ってくれという。まぁマシン的に見ても歯の立つ相手ではないので私、飛ばしませんからと断って先行してPAを出たのだけれども・・・いよいよ空模様がヤバい感じになってきていた。
 飛ばさないとは言ったもののあまりのんびり走ってる場合でもない気がする。まぁそこそこのペースでひたすらにパッシングレーンを走る。ミラーを見ると星野氏は余裕な感じでピタリと背後についている。そりゃそうだ。オレのマシンは全開にしたところでリミッターがかかってはいそれまでよとなってしまう。
 この際、後ろは気にしない事にしよう。と、思っていたら倉敷に入ったあたりで小雨がぱらつき始めた。やりたくないが仕方がない。全開である。その甲斐あってなんとか雨が本降りになる前に狼家に帰り着いたが少々、濡れちまった。何を過保護な事をと思うだろう。オレ自身も思いっきり思う。そう思いながらさらにたっぷり一時間ほどかけて軽く水拭きプラス、プレクサスコーティング処理を行った。
 コイツは我が家にあって最小積載量&最少乗車人数の最も不便な車両でありながら完全なるVIPなのである。さてこの日は多くのバイク乗りたちにこんな車両もあるのだとその存在をアピールすることはできた。次に行くのはやはり仲間の集まる場所であるな。しかし荷物が積めんのよねぇ。面倒だがあの手でいくとしよう。年末年始にあの場所で。


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