WORLD DUCATI WEEKに見た、ドカティスタ8万人超の熱気、本気。

YAMAHA

GLOBE TROTTER 90 TH が世界一周へと出発したその日、7月4日もボローニャのドゥカティ本社には多くのドゥカティスタがそのスタートを見送ろうと集まった。その中には本社に併設されドゥカティの歴史が詰まったミュージアム(ムゼオ)を眺めようという人や、夏の休暇で「聖地巡礼」をする人もいただろう。しかし彼らの大多数は、7月1日から3日まで、ミザノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで開催された「ワールド・ドゥカティ・ウイーク2016」を訪れたからにほかならない。2年に一度行われるワールド・ドゥカティ・ウイーク。略してWDW。今回で9回目を迎えたドカティスタの祭典、その見聞録をお届けしたい。

●レポートー松井 勉
●取材協力ードゥカティジャパン 

 ウワ! こんな数のドゥカティ、生まれて初めて見た! 
 MotoGP、サンマリノグランプリの舞台にもなっているミザノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリのゲート前にはすでに溢れんばかりのドゥカティスタが集結している。2年に一度のWDW(ちなみに、ヴゥ−、デェー、ヴゥーと発音します)は凄い、というウワサは耳にしていたが、これほどまでとは。






 7月1日から3日の会期中に延べ8万1000人を越す来場者が訪れたという。ゲートからパーキングスペースに向かうライダーの多くは、近隣のホテルで荷を解いたのだろう、半袖、Tシャツ、短パン姿で会場入りしている。
 お堅い目をすれば「とんでもない」となるが、まるで真夏の鈴鹿のような気温、湿度の予報がこの3日間続くミザノ。むしろ、こうじゃないと身が持たない。過去にもイベントに参加した人ならそれが当たり前なのだ、とその後自分も歩き回ってそれを知る。そう、この姿で見られるコンテンツが山盛りなのだ。

 こうしてミザノに集まったライダー達は文字通り世界中からこの地を目指してきた。その内訳を見ると本国イタリアは言うにおよばず、ヨーロッパ各国、USA、カナダ、ブラジル、グアテマラ、プエルト・リコ、南アフリカ、UAE、バーレーン、カザフスタン、インド、中国、モンゴル、インドネシア、マレーシア、ベトナム、スリランカ、そして日本からも。北南米、アフリカ、ヨーロッパ、アジア、オセアニア等々、66カ国から来場者があった。

 トピックの一つとして中国から4名のドゥカティスタがムルティストラーダを走らせ、WDWの会場までやって来ている。実際に彼らに会ったが、その道は長かった様子。地続きってちょっと羨ましい。


 会場とコンテンツを紹介しよう。会場ゲートをくぐって左側には、この秋にお披露目されるドゥカティのニューモデル、SuperSportの内覧会場があった。この段階ではカメラ、写メ厳禁。白亜の密閉空間に一回に10名ほどが招きいれられ、5分間ほどみっちり見ることができた。お触り厳禁、見るだけよ、と思いきや、跨がってもいい、触ってもいい、どうだい、これは、美しいだろ、と。オープンだ、ドゥカティ! 10月のケルンショーで発表されたそのモデル、そのものだった。937㏄、テスタストレッタ11ディグリーエンジンは113馬力/9000rpm、96.7Nmを6500rpmで生み出す。ABS、DTCなどを装備するほか、Sモデルではクラッチ操作無しでシフト操作可能なドゥカティ・クイック・シフトを装備する。210 キロの装備重量と発表されていている。その姿はコチラ。最近のドゥカティモデルらしく、スポーツ、ツーリングなどパッケージオプションも用意されるほか、潤沢なオプションから好みの一台を作れるそうだ。
 スタイルはアグレッシブだが、シート高は810mm、ハンドルグリップも高めのアップライトなポジションとして、スポーツツーリングセグメントやデイリーユースにもアクセスする美しい一台だ。
 モデルのキャラクターとしては、モンスターとパニガーレの間を埋めるようなセグメントのスポーツツアラーで、水冷エンジンはハイパーモタードから、フレームはモンスターから、という素材に、パニガーレ風味を感じさせるフェアリングが。ヨーロッパを始め、バイクの消費地ではツーリングスポーツは好感度が高い。このバイクも間違い無く好セールスを記録するだろう。濃い味が好きな日本市場で、このモデルがどのような活躍をするのか。それは来年のモデルイヤーが教えてくれるハズだ。






 その反対側はスクランブラーエリア。LAND OF JOYをテーマに掲げるスクランブラー、そのイメージカラーはイエローだ。スクランブラーが世界を賑わせた60年代、70年代のポップカルチャー風味を入れ込みつつ、2016年の今をミックスしたファッショナブルなエリアに仕上げているのが印象だ。
 そのエリアはイエローのブランドカラーが目を射し、とどこか裏路地のような雰囲気を出す街角感にサブカルなムードが漂う。

 コンテナ、クレートを組み合わせたヒミツ基地にも思える空間にスクランブラーを使ったカスタムバイク、馬の代わりにスクランブラーを使った移動式遊園地のカルーセルがあった。それは稼働こそしていないが、見せ方そのものをカスタムメイドしている、新鮮!



 この会場に入る前、本社でムルティストラーダ1200Sを借りてここまで走ってきたのだが、その時ボローニャの本社で見かけたスクランブラーのカスタムモデルがここにいる。つまり、彼らも自走で会場入りして、会期中この場所で過ごすわけだ。そのライブ感もいい。お飾りではないのだ。
 この場所ではヘアサロンも開設された。オープンエア。しかも椅子の正面には鏡すらない。目の前には会場に足を運んだオーディエンスの視線。これはオモシロイ、とさっそく予約して髪を切ることにした。10ユーロ。日本で体験する1000円(税別)カットとはやっぱり質が違っていた。どうするんだい? 格好良く・・・・・、夏らしく、というか、アナタのような髪型に、で、ほんの10分。サイドをバリカンで、トップにサクサク鋏が躍る。あっという間にセリエAの選手風に、とまではベースの問題でとてもいかないが、クッキリした2ブロックが仕上がった。海外で散髪初体験がこれだとクセになります。



 パドックには巨大なテントの連なり、各国のドゥカティオーナーズクラブがホスピタリティーを展開。日本のホスピでは、日本酒によるハッピーアワーのほか、プリントタトゥーによる日本アピールが行われ、列が途切れなかった。冷たいお茶も気温35度オーバーの会場に清涼感を与えた。






 パドックには他にも出張ミュージアムが設置されていた。黒い巨大テントにはレーシングエンジンの歴史、レーシングモデルの展示ほか、90年を振り返るドゥカティの歴史を彩るプロダクトが展示された。
 実はドゥカティ、第二次大戦が終結する1945年以降にバイクの生産に手を付けている。それ以前は電気関係の製品を造るメーカーだった。工業都市でもあったボローニャは大戦でも空爆を受けた。復興の礎は、ホンダの創業ストーリーにちかい、原動機付き自転車から始まっている。
 自転車に50㏄エンジンを乗せたクッチョロと呼ばれるモデルも黒いテントの中に置かれていた。シリンダーヘッドのバルブ開閉を共にロッカーアームで制御するデスモドローミックのカットモデルなど、バイク、ハイメカの起源と今に続くレーシングスピリットをたっぷりと出張ミュージアムで堪能できたのである。








 WDWにはドゥカティの歴史を造り続けるレーシングライダー達もやってきた。ドゥカティコルセ、サテライトを含めMotoGP、SBKの現役ライダーに加え、カルロス・チェカ、ロリス・カピロッシなどレジェンド達を含めたライダーが惜しげもない走りを披露する。
 初日にはサーキット敷地内にあるフラットトラックコースで、スクランブラーを使った勝ち抜きダートトラックレースが行われた。スクランブラー・フラットトラックレースby TIMと名付けられたレースでは、その白熱のレースに観客は魅了された。アンドレア・ドヴィツィオーゾが勝利を飾る。
 ミザノサーキットの敷地内にあるこのコースは、TTスタイルのもので、ジャンプこそ無いが、左右のカーブやヘアピンまである複雑なルート。トーナメント方式で行われたレースは、掛け値なしに見応え充分。観客も燃え上がるレースだった。






 翌2日には、スターライダー達はドゥカティ流クルーザー、ディアベルでドラッグレースbyシェルに参加。ミザノのメインストレートで行われたこのドラッグレースは、どちらが速いのか、という単純明快だけに観客は大盛り上がりだ。大分前からグランドスタンドに人が多い、と思ったのは場所取りだったのだ。

 中でもひときわ歓声が高かったのはMotoGPマシンの開発ライダーとしてドゥカティコルセに帰ってきたケーシー・ストーナーが登場したときだ。このドラッグレース、勝利を収めたのはスコット・レディング。いずれのレースもライダー達は真剣そのもの。

 レース後、ピットレーンを逆走してスタート地点に戻るのだが、勝ったライダーと負けたライダーではピットレーンを走る時のテンションが大違い。勝てばウイリー、負ければしょげるライダーの性。逆に本気なのが伝播して嬉しい。

 普段は厳格なレーシングコースもこの日だけは観客サービスをプライオリティーを置いたルール運用。そう、楽しませた者、楽しんだ者勝ちなのだ。



 そして、MotoGPマシン、SBKマシンでのデモランでは、最終コーナーを立ち上がると、そのまま揃ってウイリーしながらメインストレートを通過する、というここでしか見られない風景にうっとり。プレミアムなコンテンツにため息が漏れるほどだった。





 また、サーキット試乗、FIA GTの同乗試乗やグループ企業であるアウディ、ランボルギーニの助手席試乗など、2輪、4輪が入り交じってサーキットを走り回るコンテンツも人気だった。予約制だからこうしたコンテンツは早めの行動が必要だろう。






 このWDW、前回の2014年から大きく飛躍したのはミザノを使った開催面積の拡大だ。ドゥカティはいくつかの飛躍をした。まずスクランブラーブランドを打ち出し、2016年にはドゥカティブランドとしては初となる本格アドベンチャーバイク、ムルティストラーダ1200エンデューロをリリース。この二つのプロモーションもWDWの中で行われていた。
 1日に行われたフラットトラックレースのコースでは、スクランブラーsixty2を使ったフラットトラックスクールがそれ。金曜日にプロのライダー達が走ったそのトラックで、45分のトレーニングを受けるプログラムだ。これには参加をしたが、最後の15分はそれこそ全開でトラックを走るコトができた。「進入でもっと寝かすんだ。スライドを巧く使って減速と向きを変える。もっと行けるハズだぞ。」なんて笑顔の檄も飛ぶ。楽しい汗をかいた。
 ダート路を全開で走るのにスクランブラーのsixty2は最高。800のスクランブラーもパワフルだが、高回転まで回しきれる感が400㏄ツインには詰まっている。インストラクターを務めてくれたライダーは「シーズンオフにマサ・オーモリ(大森雅俊選手の事だと思う)と一緒にスペインでトレーニングもしたんだ。」と話していた。その彼が駆るsixty2は惚れ惚れするような走りを見せる。これ、日本でできたら最高だな、と感じるアクティビティーだ。







 そしてドゥカティの公式ライダートレーニングプログラム、ドゥカティ・ライディング・エクスペリエンス()も行われた。このDREとは、ドゥカティがバックアップするオフィシャル・ライディングスクール、というもの。すでにオンロードプログラムはサーキット、公道でのライディングスキルを上げるためのものなど段階に合わせて多くのカリキュラムが用意されている。サーキット版のカリキュラムを見ても、初めてのサーキット的なモノから、ワールドタイトルを持つライダー直伝のコースまで様々。敷地内のミニサーキットで、基礎編を。バイクはドゥカティのモンスターを使用して行われた。

 また、ムルティストラーダ1200エンデューロを使ったDREエンデューロも行われた。

 その中で、2016年から始まったDREエンデューロを体験した。45分のカリキュラムは、最初の15分が座学。アドベンチャーバイクをどのように乗りこなすのか。オフロードとはどういう場所なのか。そこを走るのにライディングポジションは、というライディング講座が手短かつ濃密に行われる。主任を務めるのはベッペ・グアリーニ。彼はパリ〜ダカールラリーを始めアフリカで行われたアドベンチャーラリーにプライベートで参加し、60回もの完走を果たしたというプライベーターとしてのレジェンドだ。


 実際にライディングギアを身につけ、コースへ。コースはグラストラックの中に設けられた美しいもので「ここを走れるの!」とちょっとドキドキする。

 周回できるコースとは別に、細身の丸太で造った波状路、タイヤの幅程度の板を敷いた一本橋、左右への体重移動を学ぶスラロームなど、基本科目コースが並ぶ。うまいな、と思ったのは、周回コース。ペースを上げれば上げるほど難しい。グラストラックに描かれた複合カーブが絶妙。基本コースも、一本橋はそれこそ幅10センチ程度の板だ。薄い板だが、その上を渡りきるには板に乗る前の方向付けが命。勢いでもバランスだけでも渡りきれない別の要素が潜んでいる。おもしろい。

 車両はムルティストラーダ1200エンデューロ。発売間もないバイクを占有でき、学べる。僕のように30年超オフロード経験を持つ人間でも発見がちゃんとある。素晴らしいカリキュラムだ。

 このDREエンデューロ、イタリアのフィレンツェ近郊に本校があり、ソチラで本格体験したリポートもお届けしますので、本編はソチラでも是非。








 この時期のミザノは、夜の8時過ぎまで残照があり、ようやく日が暮れるとすでに夜の9時。プログラムはまだまだ続き、ナイトパーティーに突入した。初日は波のでるプールでビーチパーティー。みんな水着に着替え、プールで遊びまくる。流れるのは90年代ポップス。DJがおおいに盛り上げる。
 そして、2日目。夜にはBBQパーティーが予定されていた。その会場は隣接するサッカー場だ。ところが、予定されていたコンテンツをこなしつつ、さらりとユーロカップサッカーのイタリア×ドイツ戦のパブリックビューイングを組み込むなど、会場から人を帰さない工夫がすごい。試合は12時近くまで盛り上がることに。2年に一度のWDWの夏はこうして消える事のないパッションで紡がれるのか、と思った次第です。びっくりだ、ドゥカティ、そしてドゥカティスタ!


[その1へ。]